おさがしの本は (光文社文庫 か 53-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334763220

作品紹介・あらすじ

和久山隆彦の職場は図書館のレファレンス・カウンター。利用者の依頼で本を探し出すのが仕事だ。だが、行政や利用者への不満から、無力感に苛まれる日々を送っていた。ある日、財政難による図書館廃止が噂され、和久山の心に仕事への情熱が再びわき上がってくる…。様々な本を探索するうちに、その豊かな世界に改めて気づいた青年が再生していく連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • この作品は、入職して七年の図書館員でレファレンス・カウンターに勤める、和久山隆彦が利用者らの「おさがしの本」を見つけ出す連作短編集です。

    作品内で「本」が重要な要素となるミステリーはビブリオ・ミステリーと呼ばれるそうです。それらの中にはこの作品のように図書館を舞台にした作品も少なくないそうです。

    第一話「図書館ではお静かに」は森林太郎をシンリンタロウと読む短大国文科の女子学生に、森鴎外の本名だとうんちくを語り、説教めいたことをしてしまいますが、最後には意外な事実が判明します。
    第二話は「赤い富士山」小学5年生の時に赤い富士山が表紙に描いてある本を置き忘れたから返してほしいと初老の男性が訪ねてきます。「赤い富士山」の絵の本とは何か?同僚の藤崎沙理と北斎の絵ではないかとか、太宰治の『富嶽百景』ではないかなどと推理していきますが、果たして真相は?
    第三話「図書館滅ぶべし」では新任の副館長が「図書館というのははたしてN市にほんとうに必要なのだろうか」と言い無理難題を隆彦らに出題します。
    そして第四話「ハヤカワの本」第五話「最後の仕事」へと、ストーリーは本探しをしながら図書館の存続問題となっていき、隆彦は図書館の存続のために演説をするという展開へと発展していきます。

    図書館の本探しは大変面白く、もっと続きが読みたいところでした。
    巻末の解説で、書評ライターの小池啓介さんが、ビブリオ・ミステリーで図書館を舞台にした作品を何冊か紹介されているので、そちらも是非読んでみたいと思っています。

    • やまさん
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      アメリカ映画「パリの恋人」1957 のポスターで久々にオードリー・ヘップバーンを...
      まことさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      アメリカ映画「パリの恋人」1957 のポスターで久々にオードリー・ヘップバーンを見ました。
      感激です。
      やま
      2019/12/01
    • まことさん
      やまさん♪こんにちは(*^^*)
      こちらこそ、ありがとうございます。
      オードーリー・ヘップバーンは『ローマの休日』『麗しのサブリナ』『暗...
      やまさん♪こんにちは(*^^*)
      こちらこそ、ありがとうございます。
      オードーリー・ヘップバーンは『ローマの休日』『麗しのサブリナ』『暗くなるまで待って』?(タイトルがちょっとあやふや)などを観たと思います。『パリの恋人』は観ていないです。素敵な女性ですよね!
      2019/12/01
  • 5章からなる連作短編集。
    なかなか面白かったです。

    主人公は図書館職員の和久山隆彦、レファレンスカウンターで利用者の依頼で本を探し出すお仕事。
    難しいヒントから一冊の本を探し出す。
    文学の知識が少ない私には、未知の作家や書籍が多く登場する。
    しかし専門知識がないと楽しめない内容ではなく、ぐいぐいと先へ進める。
    そして知らなかった書籍に興味を引かれる、お得な内容と言えるかもしれない。
    主人公の和久山を、いつの間にか応援していました。

    門井さんはミステリー作品が多いんですね。
    著者作品は「銀河鉄道の父」しか読んでいないので、本作が二冊目。
    この本には続編もあるそうです。

  • N市立図書館に勤務する和久山隆彦は、利用者の依頼で本を探し出すリファレンス・カウンター。彼の元へとくる利用者からの奇妙な依頼は、もちろん本に絡んだモノ。本好きなら引き込まれる要素たっぷりの連作短編集。
    それぞれが魅力的な短編なのだが、読み終えてみると和久山の成長物語と図書館存亡に纏わる一冊の長編の体をなしており、やはりそこはサービス精神旺盛な門井本。
    一筋縄ではいかない。楽しませてくれる。

  • 幼い頃からの本好きで、希望していた市立図書館のレファレンスカウンターに勤務するまでになった和久山。
    しかし現実の業務を日々こなすうち、利用者や行政への不満、そしていつしか融通のきかないお役所仕事に徹するようになってしまっていた自分にも嫌気がさしていた。

    そこに、異例のタイミングで副館長として赴任してきた潟田は、なんと就任の挨拶に『図書館不要論』を堂々と展開したのだ!
    やがて館長となった潟田は、何故かやたらと和久田にからんでくるのだが…


    門井慶喜さん、初読。
    『銀河鉄道の父』を読んでみたくて著者名を気にしていたら、図書館の棚にこのタイトルが。
    お、まさに『おさがしの本』かも?

    レファレンスカウンターに持ち込まれる難題を和久田が鮮やかに解き明かすミステリかと思い、実際最初の一編はそんな感じ。
    さてはこの女子大生がまた難問を持ち込むのかと思ったらそうではなく…
    最後は、和久田は「図書館の外」に飛び出して新しい活躍の場を得るという、予想外の展開。

    何より、はじめは和久田の悶々としている姿が、ただお仕事3年目のモヤモヤにハマって、自分は専門知識があるが…と見下している若造に見えてイラッとしたけれど、潟田の登場から俄然面白くなった。
    潟田という、大人の鉄壁の理屈をまとった読書家に挑むことで、和久田が逆に大人風の鎧を脱ぎ捨てて、いい意味で青臭さを取り戻していく。
    単純なお仕事小説でも、日常ミステリでもない、“初心にかえる成長物語”になっていた。

    もう何冊か読んでみたい。


    ところで、解説にあった“図書館の物語”にもまだ未読のものもあるけれど…
    私のブクログの本棚のなかでは、
    『図書室の秘密』ジョー・ウォルトン
    『図書館の魔女』高田大介
    『叡智の図書館と十の謎』多崎礼
    なんていかがでしょう?

  • 某市入職7年、市立図書館の調査相談課に配属されて3年の和久山隆彦は如何にも融通の利かない仕事一辺倒の独身男性。彼を取り巻く本が主役みたいな5編のリレー小説だけどけっこう洒落てる。
    各編 甲乙付け難いけど「赤い富士山」が良かったかなぁ。さすがに門井慶喜さんの作品、ちりばめられた書物に纏わる蘊蓄が知的好奇心を擽る♪
    冴えない和久山さんが だんだんキリリと見えてくるのが楽しいね。

  • この作品は、図書館に興味のない人が読んだら、多分とてもつまらないのでは…?
    ドラマティックな感じがなくて、青年設定の主人公に、若さが感じられない。全体的に地味なのです。

    でも、図書館に関わったことがある人は、多分とっても楽しめるのだろうなぁ。
    本探しの細やかなエピソード一つ一つに説得力があって(多分そうなのだと思えて)読みながらにんまりしてしまう。
    物語として読むというよりも、図書館、書物、読書の知識本(オタク本とも言える?)のよう。

    この作者の『家康、江戸を建てる』を読んだ時と同じような満足感を抱きました。

  • 主人公の和久山隆彦は図書館のレファレンスカウンターで本探しの仕事をしている。仕事への熱はあまりなかったが、新しい副館長に図書館廃止派の人間が就任したことで、図書館の意義を見つめなおすことになる。

    本探しのパートはいわゆるビブリオもの。本を探すための専門的な知識はすごいと思うのだが、少し謎ありきな感じがした。また、同じジャンルの人気作と比べると少しエンタメ性に欠けていた。

    図書館存続のための隆彦の演説は、そこまで説得されるようなものではなかった。参考資料を聞かれるほどか?と思ってしまった。

  • 駄目だった。『図書館ではお静かに』を読み始めてすぐに、こんな職員に相談なんかしたくないと思ってしまった。言葉にも態度にも優しさを感じない。気分が悪い。もしかしたら、あえて、そういう設定の主人公なの?と読み進めてみたけど。他の登場人物の誰からも優しさを感じることが出来なかった。この作者さんと合わないのかな?

  • うーん。図書館と本への愛に溢れた本に関するミステリ、または池井戸潤みたいな図書館を守るため戦う男のビジネスロマン、みたいな感じか。
    図書館のことを調べて書いてはいるのよね。
    でも、司書は借りている人の情報をP17のようには漏らしません。
    1話目、NDLは探さないの?と大いに疑問。
    2話目も、図書館は蔵書点検してるからありえない。当時(データベースがなかった時代)であれば原簿があり、原簿にない本は図書館の本ではない。図書館の本なら受け入れ印がある。あと、本当に児童書が好きな人は、ミッフィーじゃなくてうさこちゃんって言う人が多いです。石井桃子さんを尊敬しているので。
    3話目も、すぐアンパンマンかバーバパパだと思った。理由は地位の高い教養あるオジサンが出した問題なんだから、本人に相応しくなさそうな本だろう。さらに喃語で発音できる本とくれば、どっちかだろうよ、と。(バーバパパの方が発音はしやすい。アンパンマンは、パンパンマンになりやすい。)もちろん作者はアンパンマンありきで書いたんだろうけど、そこに至るまでの推理がかったるい。ここは児童書担当の人に訊いた方がよい。
    あと最終話の紅茶の出がらしで財をなしたエピソードは『日本永代蔵』の「茶の十徳も一度に皆」ですね。
    この本が図書館を知らない人に面白いのか、よくわからない。
    こういう熱意と能力のある若い司書なんて、公立図書館には、ほとんどいません。なぜならどこも指定管理になり、館長以外は業者から雇われた非正規労働者だから。能力があっても活かされないし低賃金です。コロナで給与がガクッと減って、皆不安でいっぱいだろう。
    この本みたいに他の施設の方が大事だから図書館を潰せという議員は実際にはいないが、指定管理で安くあげようとした結果とんでもないことになっているところはある。この本でも郷土資料などは役所にあればいいと言う人物が出てくるが、保存すればいいのではなく、管理・分類して、利用できるようにするのが図書館の仕事なんだから、主人公もそこはちゃんと言わないと。
    あと、レファレンスサービスは、本を探し出すことだけではないからね。
    描かれている図書館像がちょっと古いなあと思わざるを得なかった。

  •  図書館のレファレンスカウンターの職員を主人公とした連作短編集。

     本の知識をはじめ様々な雑学を話の中に織り込んでの目的の本を探す過程が読んでいて楽しかったです。本来ならミステリーにすることのない本探しの過程を、見事ミステリーに昇華させた著者の門井さんの目の付け所がいいのだろうなあ、と思います。

     それだけでなく、連作の後半は主人公の勤める図書館の存続問題が持ち上がってきて図書館の存在意義とはなんなのか、という問題も問いかけられます。これに対する主人公の回答もよかったなあ、と思います。

     自分がよくいく図書館はこの本の図書館ほど大きいわけでもなく、レファレンスカウンターなんてしゃれたものもないのですが、こういう本を読むとすべての図書館員さんに感謝の気持ちがわいてきました。お金の問題とかいろいろあるけどやっぱり図書館は必要です!

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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