- Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334763343
作品紹介・あらすじ
野生獣たちは、躰の中から蝕まれていた。見えなくなる目、口から毛穴から噴き出す血…。山に投棄された大量の廃棄物によって汚染された水、そこから生まれた新種の寄生虫が、彼らの体内を喰い荒らしていたのだ。山の怒りを体現した野獣が、悪鬼のように荒れ狂う-。彼らに死を突きつける資格が人間にあるのか?人と自然の真の共生を問う著者渾身の傑作。第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞ダブル受賞作。
感想・レビュー・書評
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何度も読み返したい一作。
初めて読む作者だったが、どんどん引き込まれてしまった。
”父親”の目線でも、”男”の目線でも、”人間”という目線でも多様な視点で読むことができ、ページを繰る度に主人公に自分を投影していってしまった。
急展開や中だるみもなく、心地よいテンションがあり、気が付けば読み終わっていた。
あらすじや印象に残ったシーンを紹介するのは野暮なので、ぜひ一度手に取ってもらい、読んだ感想を教えてもらいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
非常に良かったので、購入して再読したい。
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南アルプス山麓に居を構える著者ならではの自然描写が、書中様々な場面で詳述される。
読者は、迫真の物語をしばし忘れ、主人公たちとともに八ヶ岳、南アルプス近辺を辿っているかのような寄稿文的臨場感を味わえる。
もちろん、この小説の主題はそんなところではない。
人と動物の棲み分け、人と自然の共生を問う意欲作であり、著者自身の生活体験から紡ぎだされた告発の書でもある。
その思いを、古参猟師に語らせる。
「・・・開発開発で山がどんどん切り崩され、必要もねえ大規模林道をあちこちにこしれえて、森はズタズタに切り裂かれる。人間の暮らしが作り出した有害なものをあちこちに埋めて、土や水は汚染される・・・」
山の怒りを体現する化身として巨グマ、巨イノシシが登場する。とりわけ、次々と繰り広げられる三本足の巨イノシシとの死闘の場面は、書を置く能わずの感。
その一方、人と犬の絆、人と人との絆は、心温まる描写となっている。
また、登場人物たちはそれぞれ家族や仲間を喪うことになるが、生者と死者の絆も描かれており、再三語られる言葉が印象に残る。
「死というものは忘れたり、克服したりするもんじゃない。共に生きていくものなのです」 -
下巻も読み終わりました!
山に棲む野生動物たちが人間の畑を荒らしてしまったり、不運にも人間と遭遇してしまって人が怪我をすると動物が殺処分されるという、現実でもたまに目にするニュース。
元はと言えば人間が山を切り拓いて、動物たちの住処を奪ってしまったことが原因だから、こういうニュースを見ると悲しくなってたんだけど。
人間も生きていかなきゃだしね。
難しい問題よね。
前に聞いたことある話で、自然との共存で一旦人間が手を出してしまったものはずっと手を出し続けなければいけないっていうの。
アメリカの国立公園の狼再導入の時に聞いたんだっけな??
ちょっとうろ覚え…。
そういうのを色々思い出すお話だった。
そして読んでる時、途中からずっと動物は乙事主さまで再生されてた。熊もね。
『もののけ姫』好きな人は好きじゃないかと。
色々な問題がギュギュギュッと盛り沢山のお話だったなー。
こちらのお話、読み切りだと思ったら続きもあるのね!
そちらも気になる。
K-9の方でもまだ読んでない巻があるから、徐々に読んでいきたいな。
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人間て自分勝手だ。
そしてイノシシって思ったより
怖いんだな。。。 -
131212
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哀切のクマ!装丁も好きです
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野生動物と人間は共存出来るのか?
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今年は去年に比べてかなりの本を読んでいる(去年は受験期)が、その中でもこの作品は上位に入る。
読み応えがあるのに、さらさらーと読めてしまうのはひとえに作者の実力だろう。
最近ラブコメが必ず含まれている本ばかり読んでいて、そんなときにこの作品に出会えて良かったと思う。
自然と人を取り扱う良作。