妃(きさき)は船を沈める (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 616
レビュー : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334764043

作品紹介・あらすじ

「妃」と呼ばれ、若い男たちに囲まれ暮らしていた魅惑的な女性・妃沙子には、不幸な事件がつきまとった。友人の夫が車ごと海に転落、取り巻きの一人は射殺された。妃沙子が所有する、三つの願いをかなえてくれる猿の手は、厄災をももたらすという。事件は祈りを捧げた報いなのだろうか。哀歌の調べに乗せ、臨床犯罪学者・火村英生が背後に渦巻く「欲望」をあぶり出す。

感想・レビュー・書評

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  • 『赤ん坊だって地震は容赦しないからな。この国は、残酷な揺り籠みたいなもんだ。』

    「地震」でここまで考えられるのが面白い。

    日テレのドラマもそこそこ良い。

  • 単行本を既読。事件の内容をまったく覚えていなかったが、7年も経てばそんなこともあるだろう。ただ、火村先生とアリスの猿の手のディスカッションについてはおぼろげながら記憶があって、火村先生のエキセントリックな考察が有栖川先生の解釈をもとにしているというのが興味深い。こんなにロジカルな解釈は無理だったが、わたしもゾンビではなくきれいな息子が帰ってきたのを想像した。なぜそうおもったのか、わからないのだけれど。ひさしぶりではあったが、初読時より数倍はおもしろく読んだ気がする。魅力的な謎が数えきれないほどあったから。

  • 中編集。
    2005年に「猿の左手」、2007年に「残酷な揺り籠」が中編として発表されたものを、間に「幕間」をいれて長編として発売されたもの。
    ウィリアム・W・ジャイコブズ「猿の手」に描かれた物語が事件の重要な鍵となっている。
    「猿の手」とは、ある家族が願い事を三つだけかなえてくれると言われている「猿の手」を手に入れたところから物語が始まる。
    願いはかなうけれど、必ずそれ相応の対価を支払うはめになる。
    等価交換といったところだろうか。
    家族は試しに家の支払代金として200ポンドを願ってみる。
    いきなり目の前に200ポンドが現れるわけもなく、そのときは何も起こらない。
    けれど、翌日に夫婦の元に息子が事故で亡くなったと連絡が入る。
    会社が見舞金として持参したのは200ポンドだった。
    ちょっとゾワッとするような展開がこの後も待っている。
    願い事が三つかなう猿の手。
    もしも手にすることが出来たら、いったい何を願うだろう。
    迷いに迷って結局何も願わないか、それともすぐに何かを願ってしまうのか。
    対価を支払わなければならなくても、それでもかなえたい願いがあれば別なのだろうが・・・。
    「猿の手」は、海に沈んだ車から発見された男が発見されたことから始まる物語だ。
    目撃者も多数いて、海にダイブする直前に車から逃げ出した人間はいたとは考えられない。
    商売が上手くいかずに借金の返済の目処もつかない男。
    事業は順調なのに夫の借金のために返済に追われる妻。
    そして、友人のために男に金を貸していた女。
    遊んでいたお金を友人のために用立てただけだと言う女・妃沙子。
    若い男の世話をやくのが好きだと平然と語る妃沙子と、養子である潤一の関係は一種異様な雰囲気がある。
    いったい誰が男に睡眠薬を飲ませ殺害したのか。
    運転も泳ぎも出来、動機もあるが確固たるアリバイのある妻。
    運転は出来るが水恐怖症で泳ぐことが出来ない潤一。
    泳ぐことは出来るが運転が出来ない妃沙子。
    火村は思いもかけない過去の事件から解決への糸口を掴む。
    そして2年が過ぎ、火村と妃沙子は事件絡みで再び出会うことになる。
    ワインに仕込まれた睡眠薬。
    密室で銃殺されていた男。
    そして、割られた窓。
    火村によって暴かれる真相は、歪んだ思い込みで凶行に走る者と必死に何かを守ろうとする者の哀しい対決をさらけ出していく。
    過去は変えることが出来ない。
    そして、変えられない過去の責任から逃れることも出来ない。
    火村シリーズが好きな人は楽しめる物語だと思う。

    余談だが、作中に登場する服役中の暴力団員の名前が梶井功安という。
    「梶井功安。江戸時代の医者みたいな名前やな」という台詞が出てきて、ちょっと笑ってしまった。
    偶然だが、ドラマで有栖を演じている窪田くんが以前緒方洪庵の若い頃を演じていたことを思い出したからだ。
    ドラマで登場している小町も、この物語で登場する。
    「コマチでも私はオーケーです」
    ドラマの小町はこの呼び名を嫌がっていたが、物語では逆にこの呼び方を喜んでいるような印象を持った。

  • 「猿の左手」「残酷な揺り籠」の間に幕間を挟んで、長編化した一作。そういう作りアリなんだ、とちょっとびっくりしました。
    どちらにも登場する、妃沙子と呼ばれる女性は、なかなか変わっていて、若い男を囲っている魔性の女、って感じですね。この人がどちらの話も軸になっていて、「猿の左手」でするりと法の網目から逃げ出してしまったのを、「残酷な揺り籠」で改めて対決して追い詰めるという設定が、なるほどな、と思ったのでした。
    「猿の左手」は"顔のない死体"というのがキーになっていて、元ネタはウィリアム・W・ジェイコブスの「猿の手」における作者本人と、北村薫さんによる議論をベースにしてあるとのこと。「猿の手」の話は知らなかったんですけど、この話に対する捻くれた解釈が、事件を解くきっかけになるという。その解釈が面白くて、『猿の手』は一回読まねばな…という気持ちになってます。
    事件の概要としては、妃沙子が個人的に金を貸していた友人の夫が、車ごと川に突っ込んで死んでしまうんですけど、それが自殺なのか他殺なのか、という。紆余曲折あって、他殺だとしたら犯人は沈んだ車から逃げ出したのでは、というところまで推理は及ぶんだけど、犯人の可能性のある、妃沙子が養子にしている若い男が怪しいんだけど、過去にトラウマがあって彼は泳ぐことができない、では一体どうやって…となる。簡単に言うと、本当の養子は以前、妃沙子に想いを寄せる別の男に襲撃されて殺されてしまったんだけれども、同時期に出入りしていたこの若い男(過去に本当の母親を殺してしまっていた)に、そのまま養子のふりをして入れ替わることを妃沙子が提案して、人が入れ替わっていたので、今回の事件の犯人である若い男は実は泳げたし、そのことによって犯行が可能とバレるという話。
    妃沙子の狂気がにじみ出る話なんですよねー。入れ替わり指示をしたのもそうだし、借金男を殺すように仕向けたのも妃沙子なんですが、殺人の指示については、本人はそんなつもりはなかった、猿の手に願っただけで、勝手に男が解釈したんだ、と言い逃れるの。迫真の演技で。あなたがそんなことをするとは思わなかったわ…!なんて白々しいんだけど、結局妃沙子の本心はわからないから、妃沙子は法の網目からするりと抜けだすんですよね。

    んで、「残酷な揺り籠」で再び相対する火村せんせと妃沙子。
    ある家の離れで人が殺されていると駆けつけてみれば、その家の主人は妃沙子の夫だった。前回の事件からしばらくして妃沙子は今までの生活(若いかわいそうな男に囲まれて暮らす)を諦めて、同世代ぐらいの人と結婚してるんですよね。それがもうすでに怖い笑。殺されたのは、その夫の元で働く、妃沙子が可愛がっていた男の一人で。もうそれだけで人間関係…!ってなるんですけど笑。
    動機はその殺された男が、昔の妃沙子に戻って欲しいと、妃沙子に夫殺害を持ちかけることだったのではないか、と推理する二人。妃沙子は新しい生活を気に入っていたんだけれども、他に止める手立ても思いつかず、男の計画に乗ったふりをして、逆に男を殺してしまう、という。今回は妃沙子自身が手を下しているわけだから、取り逃がすことはない、という雰囲気の中で終わるんですけど、実際には推理を妃沙子に聞かせるだけで、自首を促しているんですよね。読んでからだいぶ経っちゃったので若干おぼろげですが、パラパラと見返してると、どうも妃沙子って罪の意識がないというか。ある意味すごい無垢な感じなんですよね。だから自分がどれだけ悪いことをしたのかを自覚しろよ、という火村からの引導だったのかなあ、などと思ったりしたのでした。
    そしてここがコマチ刑事初登場回なんですね。お名前はかねがねって感じでしたけど、なんとなくイメージがつかめました。真面目だけど固すぎない、という感じですかね。火村せんせも割と気に入っている印象があります。

    妃沙子という女性はSHERLOCKにおけるアイリーン・アドラー的な雰囲気、あるなあ、と思って。探偵を翻弄する魔性の女。アイリーン・アドラーと決定的に違うのは、火村せんせは妃沙子に対して絶対に捕まえてやるという気持ちしか持ち合わせていないことですかね笑。

    解説はそうだったタイトルの重要性の話でした。でも読んですぐじゃないと記憶がやっぱり…。

  • ドラマCDを買ったので、原作を再読した。妃沙子のような女は大嫌いだと再認識。でも、結構いる、こういう女。

  • 中編ふたつだったんだ。
    タイトルが仰々しいので読むの躊躇してたけどさくっと読めた。

  • ウィリアム W ジェイコブズの作品「猿の手」の別の解釈を元にしている。自然に思い浮かぶ原作の物語のイメージの方が恐怖をあおっていいと思うけど、、
    私のイメージしていたものと、期待していた作品が違った。何かおどろおどろしいものを期待してしまった。

  • 短編集。
    「猿の左手」
    「幕間」
    「残酷な揺り籠」

  • シリーズを追って読んでいる本。

    猿の手の物語は知っていたが、2通り解釈できるのが面白い。ただ、他の作品を小説で知ってしまうのが少し悲しい。

  • 作家アリスシリーズ#17

    『猿の手』についてはアリスと同じ読み方をしていたので、火村先生の読み方にそういう読み方もありだなと思いました。
    今回のヒロイン、妃こと妃沙子さんはホームズに対するアイリーン・アドラーみたいな感じを期待したかったので、中途半端に終わってやや残念。

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プロフィール

1989年1月、『月光ゲーム』でデビュー。

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