大絵画展: 長編推理小説 (光文社文庫 も 20-1)

著者 :
  • 光文社
3.23
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本棚登録 : 571
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334765491

作品紹介・あらすじ

ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 絵画美術系、贋作、コンゲーム(騙し合い、詐欺モノ)。自分にとっては好きな要素が複合された作品なので、楽しめた!の一言。
    ゴッホの「医師ガシェの肖像」の手に汗握るオークションから物語は始まる。
    そして計画の中核をなす男女二人は、ダメダメぶり故にマンマと詐欺に釣られてしまうが、窮地に追い込まれた彼らに思わぬ救いの神ならぬ悪魔の囁き。大風呂敷を広げたストーリーやいかに。
    作者の美術業界についての思い(だとワタシは受け取った)も熱く語られる。
    そしてタイトルの真の意味が明かされるのや、何重にもかけられた枠の全体を知るのは最後の最後だ。

  • 2023/3/19
    因果応報な感じで納まるところに納まるので読後感が良い。
    最後に大絵画展するのが実に小説的で素敵。
    途中「それ誰やっけ?」って何度かなったのは私の頭が残念だからだよね。
    前半の美術界の裏側みたいのはうんざりするんやけど。
    そういえば盗作野郎は何の報いも受けてないのでは?
    それはいかんぞ。アイツ嫌い。

  • 映画コンフィデンスマンが好きだ。長澤まさみはかわいいし、どんでんがえしのエンタメ性が気持ちいい。
    「大絵画展」の読み心地もそれに似ている。現金受領を伝えるのにコインロッカーにニコちゃんシールを貼るところとか、カーットがかかるところとか。楽しくて後味がよい。

  •  ロンドンのオークションでゴッホの「医師ガシェの肖像」が日本人によって競り落とされた。
     時は流れ、追いつめられた人間たちが、倉庫に眠るくだんの絵の奪取をもくろむ。

     絵画の値段のつき方とか、画廊の裏話とか、本当に魑魅魍魎の世界だなと思う。
     それが淡々と冷静に描かれている。
     物語は、それぞれの主観で描かれているのだけど、それを超えた、それを俯瞰している視線が常にある。
     
     この冷静さが、魅力なのかもしれない。
     
     で、追いつめられる人間が、まぁだからこそ追いつめられるのだけど、だめだめで感情移入できない。つか、ほかの登場人物もつかみどころがなくて、シンパシーがない。
     なので、どうも読後にすっきり感がないのである。
     すっきりというか、達成感というか…。

     まぁそれはあえてそうした、ってことなように思うのだけど。

  • タイトルと装丁に惹かれて読みましたが、美術的要素は深くなく(誰にでもわかりやすい…といえば、その通りですが)読み物としても、入りくんだ泥棒ストーリーというのみ。人物キャラや心情が浅くのめりこめないままでした。登場人物のやたらと多い、怪盗キッドか、キャッツアイか…ってところ。

  • 絵画にまつわるミステリー。

    もともと多額の借金のある男女が詐欺師に騙され、さらに多額の借金を背負う事になる。
    彼らは自分たちを騙した詐欺師の事務所で出会い、そこである男から絵画を盗み出す協力をしてほしいと話をもちかけられる。
    男が手に入れたいと思っている絵画はゴッホ作の「医師ガシェの肖像」。
    その絵画を手に入れるため、倉庫に眠っている他の絵画134点の絵画もごっそり盗み出すという。
    金に困っている男女はその計画に乗るが-。

    読んでいて、「ああ、そういう事もあったな~」と懐かしく思いました。
    ゴッホの「ひまわり」を大手の生命保険会社が信じられないような高値で買ったという話。
    そんな絵画が他にもいくつもあり、人の目にふれられる事なく、行き場をなくしてひっそり眠っている。
    バブル期にそんなバカなお金の使い方をした、それが回り回って後の世に低迷をもたらしていると考えると、絵に罪はないけど、良くないものに思えてしまいます。

    それと別に、絵画につけられる不思議なほどの高値を見ると、それが実態がないものだけにとても不思議だし、ワクワクもします。
    人の方は1000万単位の金で身を売ったり、身を隠すまで追いつめられるというのに-。
    絵画にまつわるミステリーというのはそれに関連した話を見るだけで興味深いものだと思いました。
    例えば、金持ちは鯉と薔薇の絵を好むだとか。
    なるほど・・・という感じです。
    絵画の顛末も何とも皮肉です。

    ただこの本は、題材は興味深く面白いですが、登場人物の心情というものがほとんど書かれてなくて、ただストーリーを知るだけという話だとは思いました。

  • 第14回 日本ミステリー文学大賞 新人賞 受賞作品

    初めて読む作家さん。
    ジャケ買いした作品だった。

    名前や設定の複雑さ、内容の詰め詰め感が
    少し読みづらく、少々混乱もしたけれど…

    途中から先が気になり
    後半は たたみかけるように
    一気に読んでしまった!
    読後感サイコー!な終わりかた

    最初は 私には重くて…ちょっと
    読んでいて心苦しい感じがしたけど
    最後まで読むと とてもスッキリ!

    内容と人物を かなり把握した今
    もう一度 読んだら
    もっと もっと面白くなるぞ!と感じた。
    正されるべき所は正す!
    うん。良かった!

    読みづらさがあった分 星控えめ。
    限りなく4に近い。2回目読んだら
    評価も変わりそう 笑

  •  面白かったけど、後日談が長い。所有権の話を何度も読まされるのにも辟易。
     嫌悪感を感じる男を助けようとする話も嫌だなって思っていたが、助けたかったのは違う人だったのね。

  • 先に『哄う北斎』を読んでしまったけど、これがシリーズ1作目っぽい。登場人物一覧を見たときにはゲゲっと慄いたが、この絵の由来に(史実的な)こだわりがなければ、全然問題なし。
    解説は大森望。

  • 2作目から読んでしまったので、戻り1作目へ。
    正直、この作者の文章は、私には分かりにくい時があり、また2作目同様、登場人物も日本と海外にまたがり多いので、今回も行きつ戻りつ読み進めた。

    素直におもしろかった。

    バブル期に日本が調子に乗って犯した美術品に対する冒涜行為。
    バブルが弾けた後の、恥ずかしい事実。
    絵画の真贋や所有権の難しさ。

    ゴッホの絵画をありがたがって並んで観たことがあるが、私はその絵画たちの何をどう評価していたのか。高額で取引され、価値が高いとされるから、『すごい絵』だと思っているだけなんじゃないか?
    恥ずかしながら気づいてしまった。
    もちろん純粋に好きな画家もいるが…。

    これからはそういう視点で絵画を観るのはやめようと思う。

    これで、2作目をフェルメール作品集を傍に読む準備が整った。再読でさらに楽しみたい。

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著者プロフィール

愛媛県生まれ。銀行勤務の後、学習塾を経営。デビュー作『神の手』が、電子書籍で異例の大ヒットを記録して話題となる。2011年、『大絵画展』(光文社)で、第14回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。

「2023年 『最後の記憶 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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