神津恭介、密室に挑む (光文社文庫 た 4-44 神津恭介傑作セレクション 1)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334765606

感想・レビュー・書評

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  • 神津恭介シリーズ6編の短編集。
    私は事件が起きるたびに、えっ?えっ?と翻弄された「影なき女」とあっ!と驚く「妖婦の宿」が好き。
    自分で推理するのは苦手なので、毎回予想を裏切られるペーペーなので、きっと慣れてる人にはわかりやすいであろう展開も楽しめました。

  • 神津恭介が活躍する短編集。
    全編密室ものです。

    【白雪姫】
    密室物ですがトリックよりもプロットの上手さが光っていると思う。
    雪国に向かう列車内で偶然居合わせた白雪姫のように美しい女性という出だしも幻想的でいい。ラストの風景も素敵だった。
    双子の登場によって当然入れ替えトリックが浮かびますが、それを逆手にとって二転三転する展開もおもしろいです。

    しかし、神津恭介はちょっとうっかりだったんじゃないでしょうか。
    人を疑う以上迂闊なことは言えないというのは分かりますが、、新たな事件発生を予期しながらもそれを誰にも伝えず、防げなかったのはひどい。
    寒くて疲れてたから彼を責められない、っていわれても。

    【月世界の女】
    竹取物語のように、自分は月に帰らねばならないという美しく聡明な女性の消失事件。聡明な女性ということですが、あんな意味不明な言動をする人に対して警戒心や不信感を抱くのは普通の反応ではないでしょうか。これが彼女の為になったのが疑問。
    神津に対してこの石木め!絶交だ!と理不尽にあたったかと思えば、言を弄して事件を解明させようと呼び出す松下くんのわがままっぷりがかわいい。
    消失トリックは状況を見れば自明。

    【鏡の部屋】
    消失トリックは単純ですが、かつて女魔術師が住んでいたといういわくつきの鏡の部屋での手品でおもしろいです。
    あの人がなぜ新聞社に電話したのかが分かりませんでした。

    【黄金の刃】
    四次元がどーたらこーたら言っているわりに単純なトリックだと思ったものの、この言動が最後にあのような形で思い出されるのが哀しい。
    最後の被害者はもうちょっとなんとかして救ってもらいたかった。

    【影なき女】
    次々と起こる事件がすべて密室殺人。その不自然さにもしっかり理由があり好感です。
    「影なき女」という不気味な存在が全体に不穏な空気を与えており楽しい。
    前半は神津が登場せず、別の探偵が活躍するのでどうなるのかと思っていましたが、こんな真相だったとは。
    内容の濃い短編でとてもおもしろかったです。

    【妖婦の宿】
    途中で読者への挑戦が挟まれる本格ミステリ。
    殺人予告ともとれる不気味な蝋人形の登場、限定された容疑者、見張られていた現場。なんとも楽しい状況です。
    事件が起きる前から神津がついていながらの惨事、そこからの華麗な推理とお決まりのパターンですが、ここからまさかまさかの展開になりました。
    真相への手掛かりはあからさまではあるものの、まさかね、ということが本当だったのでびっくり。
    ○○○○トリックがこんな形で使われるなんておもしろいです。

  • 密室もの、短編集です。
    じっくり一つの大事件を読んでゆくのと違ってこのような短編集で謎だけを追ってゆくのもまた、ミステリーファンの別な意味での楽しみなのでしょう(客観視)
    読んで思ったのは短編ミステリーはやっぱり苦手かも。
    お勧めいただいた「妖婦の宿」脳内にイイ男が二人登場した時点でもしや、と思わされるところもありましたが、真相は見抜けませんでした。

    ミステリーを「犯人を当てよう!」という意気込みなしで、ただ、まくし立てるようにストーリーを追ってゆくような読み方をしては蛇道でしょうか?

    • jyunko6822さん
      ご紹介いただいた、「妖婦の宿」一番最初に読みました。
      新しく編まれたきれいな装丁の文庫に昭和の名作が入っているとウキウキしますね。
      光文社文...
      ご紹介いただいた、「妖婦の宿」一番最初に読みました。
      新しく編まれたきれいな装丁の文庫に昭和の名作が入っているとウキウキしますね。
      光文社文庫ではこれからセレクションが次々に出るそうです。

      ご参考まで、今月の読書会の課題図書はレヴィンの「死の接吻」です。しかも二次会の課題図書まで決められていてキングの「ビッグドライバー」です。
      エネルギッシュな会員たちで追いつくのにやっとです。
      2013/05/13
    • kwosaさん
      jyunko6822さん

      神津恭介もの、これから新装で続々出るんですね。楽しみです。
      光文社文庫って結構、ミステリの復刊に力を入れていま...
      jyunko6822さん

      神津恭介もの、これから新装で続々出るんですね。楽しみです。
      光文社文庫って結構、ミステリの復刊に力を入れていますよね。ありがたいことです。

      読書会のみなさんは精力的ですね。
      僕は『占星術殺人事件』をまだ読めていません。
      とっても面白いんですが、なかなか遅々として進みません。
      濃い酒を舐めるようにじわじわと楽しんでいます。
      2013/05/13
    • jyunko6822さん
      kwosaさん
      早速のコメントありがとうございます。
      “濃い酒を舐めるように”
      「占星術殺人事件」お楽しみください。
      また、いろいろ教えてく...
      kwosaさん
      早速のコメントありがとうございます。
      “濃い酒を舐めるように”
      「占星術殺人事件」お楽しみください。
      また、いろいろ教えてくださいね。
      2013/05/13
  • 密室をテーマにした事件を集めた短篇集。「白雪姫」「月世界の女」「鏡の部屋」「黄金の刃」「影なき女」「妖婦の宿」の六編を収録。

    なかでも「影なき女」と「妖婦の宿」が秀逸で、とくに「妖婦の宿」はたくみなミスリードと思い込みを利用したトリックが見事。

  • 神津恭介シリーズを読むのは「刺青殺人事件」に続いて2冊目。明智小五郎、金田一耕助と並ぶ日本三代名探偵、神津恭介の短編集。

    眉目秀麗の貴公子。実写化された際のキャストは、津川雅彦、近藤正臣、村上弘明、片岡愛之助とのこと。なるほどー、そういう系統ね。

    神津恭介およびワトソン松下研三の絡みが少なく、キャラクター薄めなので、先に1冊長編を読んだほうが楽しめる気がした。6編の中では「月世界の女」が好み。

  • 神津恭介シリーズ。短編集で過去に読んだものもあったが楽しめた。表題通り密室トリックがメインであるが、トリック自体は単純でも、それが解けたところで犯人がわかるわけではない、人ひねり入れてくるところが作者のうまさを感じられた

  • 短編集なので、読んだことのあるヤツも多かったけど。
    相変わらず気が狂う人が多いね。

  • 全体的に古い。あと要所要所で松下くんの負け惜しみがすごい。
    『妖婦の宿』だけはなるほどね、と思ったけど、あんなに煽るほどのことか?発表当時に読んでいたら圧倒されたかもしれない。
    眉目秀麗とか何ヵ国語も操るとか設定盛りすぎでちょっと恥ずかしくなった。やっぱり推理以外全然ダメな金田一の方が愛着が湧くなぁ。

  • 白雪姫★★★
    月世界の女★
    鏡の部屋★
    黄金の刃★
    影なき女★★
    妖婦の宿★★★

    本格ミステリに飢えていた時代には面白かったかもしれませんが、やはり今読むと、世界観や人物の考えかた、トリック等、古い感じはしてしまいます。

  •  かつて(いまでも)日本を代表する名探偵であった神津恭介を主人公とする短編集。タイトルのとおり、密室殺人事件が並んでいる。

     今読んでみると文体や人間の描き方、道具立てにさすがに書かれた時代を感じさせる。だけど全体としてすっきりと端正に感じられるのは、名探偵神津恭介のイメージでもあるし、小説内で描かれる謎解きのクリアーさのためだと思う。そういったあたりは全然負来るなっていないばかりか、逆に新鮮で驚く。

     6編の短編集の中に、ミステリの典型的なアイデアが見本市のように並んでいて面白い。特に最後の2編は、稚気が感じられるほど作者が楽しんで書いたんじゃないかなって思う。時々でてくる機械的トリックはノスタルジックな感じがしてしまうけれど、わかりやすく楽しいミステリをして、まだまだ現役だなって思う。

     それにしても神津恭介、眉目秀麗、頭脳明晰なんて紹介されているけど、やりすぎだ!と言いたくなるくらい、絵に描いたような名探偵ぶりでおもしろい。

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著者プロフィール

1920年9月25日、青森県生まれ。本名・誠一。京都帝国大学工学部冶金科卒業。48年、失業中に書いた「刺青殺人事件」が江戸川乱歩の推薦で出版され作家デビューし、「能面殺人事件」(49-50)で第3回探偵作家クラブ賞長編賞
を受賞する。79年に脳梗塞で倒れるが過酷なリハビリ生活を経て再起、「仮面よ、さらば」(88)や「神津恭介への挑戦」(91)などの長編を発表。作家生活の総決算として「最後の神津恭介」を構想していたが、執筆途中の1995年9月9日に入院先の病院で死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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