誰にも書ける一冊の本 (光文社文庫)

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  • 光文社
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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334766306

感想・レビュー・書評

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  • 人生を終わろうとしている父親が遺した分厚い原稿用紙。
    書かれていたのは父の人生のようでもあり、創作のようでもある小説だった。
    「私」はそこで見知らぬ父親と出会うことになる。
    考えてみれば、自分の両親の生まれた頃の話やこれまでの人生の話などほとんど聞いたことがない。
    聞く必要もなかったし、聞くようなタイミングもなかったとしか言いようがない。
    だが、父親にも母親にもそれぞれ様々な経験をしながら現在を生きている。
    まだまだ遠い先だろうが、年老いた両親とお茶でも飲みながらゆっくりとそんな話ができたらいいな・・・と思う。

    物語は現在の「私」の感情や取りまく状況を描く部分と、父親が書いた小説部分とで構成されている。
    淡々と進む物語は、そのまま淡い印象の物語だった。
    作り込まれた荻原さんの物語が好きなので、少し肩透かしをくったような・・・そんな思いがしてしまった。

  •  新聞の書籍広告でタイトルを見た時、本の書き方を指南した本なのかと思いました。
     紹介文には以下の文章が。


    「父が遺した原稿用紙の束。気が乗らぬまま読み進めるうちに、過去にまつわるいくつかの謎が浮かび上がる。果たしてこれは、父の人生に本当にあったことなのだろうか? 次第に引き込まれるうち」

      
     ミステリーの要素もあるのか?
     非常に気になりました。

      
     読んでみると、ハウツー書でもミステリーでもなく、れっきとした文学、純文学でした。

      
    「人は誰にも、一生に一冊の本が書けるという。それなりに文章を綴れる人間であれば、経験してきた人生の諸々のエピソードに、折々の所見や気持ちを添えれば、一編の随筆になり、それを創作的に書けばひとつの物語になる、という意味だ。ただし、他人に読ませる価値があるかどうかは別」

      
    ……という意味で、主人公の父上が自分の人生を振り返って綴った小説を、息子が読んでいくという小説。


     特に大きな事件が起こるというわけでもなく、淡々と進んでいきます。
     それでも、動乱と波乱の人生を生き抜いて次世代を残していった父親のあっぱれ立派な人生を描いています。
     この味わい、若すぎると分からないのではないでしょうか。
     実際に父親が大往生したとか、亡くなられたとか、九死に一生を得た、或いは、自分が大きくなった子を持つ老いた親になるとかという経験を経て、初めて分かる境地ではないでしょうか。

      
    「順繰り」という言葉が出てきます。この物語のキーワードです。
     父親の残した原稿を読み終えて、主人公は、新たな本を書く決心をします。
     これも、「順繰り」なんですね。
     本書を読み終えた私たちも、「一冊の本」を書いて「順繰り」しますか?
      http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140720/p1

  • 自分の親が生きてきた軌跡。息子である自分がこの目で確かめることは叶わないから、フィクションだって織り交ぜられているのかもしれない、なんて考えてしまうのは当然のことだろうなと思う。ただし、そんなちょっと斜に構えた自分(と読者)を裏切るラスト5ページに、ギュっと心を掴まれました。

  • 「飛鳥へ、そして まだ見ぬ子へ」な感じ。父が 子供に遺したメッセージという設定だけで 泣けてくる。親の人生を追体験して 子供は何を学ぶべきか、また 自分の人生から 子供に何を伝えるのか 考えさせられた。

    主人公の息子は 作家として成功する前の著者自身なのでは ないか。伝えたいメッセージは 「人生は短い、結果を考えず、やりたいことを やれ」だと思う

  • 終わり方がいい。読み終わって本を閉じて、目を瞑り、しみじみと想いを馳せる本だった。
    私も父親とはあまり話さなかった。なぜか小さい頃からむしろ避けていた。私が30過ぎの年に父が亡くなり遺品の整理をしていると、小説の原稿は出てこなかったものの父が10代の終わりから20代にかけての日記が出てきた。あの父にこんな時代があったのかと涙にくれた。平穏に見えて波乱万丈な人生。本当はひとりひとり全員が送っているのだろう。いま自分も終盤に差し掛かり、つまらない生き方をして来たと思っているが…

  • 自分、こういう、父から子へっていう話に弱いんだなってことに気付かされた。

    原稿の中の父と原稿を読む子の人生が重なり合うような重なり合わないような、付かず離れずな空気感からこの親子のいままでの関わり方を感じた。

    家族のことはよく知っているようで、本当は何も知らないのかもしれないと思った。

    短いながらも、心に染み込んでくるような味わいのある作品でした。

  • 会津若松→毛額志けぬし いたましい 便利さと豊かさは同義ではない アイヌ シャモ(和人)日高は景勝地けいしょうち 突撃隊や特攻隊員は「お母さん」と叫んで死んでいくという 親とは常に子へ、見返りのない片思いをするものだ。 恨み骨髄の上官への闇討ちが横行した 連絡船の切符係 元予科練の気骨の小兵こひょう、小関さん 秋田の地酒 癌の転移(大腸・末期) 血気盛んな白虎隊生き残り組 北海道の老人達は、酒に酔うとよく熊の話をする。ニシンの話も、北海道の年寄り達の定番だ。 「テーマ共作 小説 死様」最期のあり方を考えると、おのずと今の生き方もみえてくる。述懐じゅっかい ひとひらの雪 人生は、何を成したかではない、何を成そうとしたかだ ビックフィッシュ 荻原浩おぎわらひろし

  • 何だかんだで、父ちゃんいい人生だったんじゃないかな。
    と言ったら怒られるんだろうか。

    書いてもうっすい、しかも読む人がいない私の人生よりはなあ。

  • 面白かった。他の競作5作のラインナップが気になる。
    でも個人的には、とーちゃんの小説がフィクションだったのかノンフィクションだったのかは曖昧なままで良かったんじゃないかなー。あと、許嫁のエピも多少消化不良感。枚数足んなかったんじゃないか…
    あと、文庫版の本文の紙が厚すぎて読みにくいです。指いってーわ。

  • 疎遠の父が遺した原稿用紙の束。生き方を迷う主人公に、親として父として人生の先輩としてのメッセージがそこにはあった。
    「死様」をテーマにして競作された作品の一冊。「人生は、何をなしたかではない。何をなそうとしたかだ。」という言葉が胸にズシンと響いた。日々流されて生きるのではなく、何かを築く一生でありたい。

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著者プロフィール

1956年埼玉県生まれ。広告制作会社勤務を経て、コピーライターとして独立。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞、14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞、16年『海の見える理髪店』で直木賞を受賞。『砂の王国』『花のさくら通り』『ストロベリーライフ』『海馬の尻尾』『極小農園日記』など著作多数。

「2018年 『金魚姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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