- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334766450
感想・レビュー・書評
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『展覧会の客』を読んで、そーいえばデパートの古本即売会が消えていることに気が付いた……。
もう新古書店が古書販売の中心になっているのかなぁと読んでいて悲しくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
このての本は通勤電車のお供には最適です。
題名には、ミステリーと銘打ってありますが、必ずしも、ミステリー好きな人だけでなく、純文学系が好きな人でも楽しめると思います。それだけいろんなタイプの作品が収録されてます。
知らない作家で良かったのが、「終夜図書館」、読みにくいが、ライトノベルのウンチクも楽しめた。 -
(借.新宿区立図書館)
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■松本清張「二冊の同じ本」
今は亡き友人から譲ってもらった一冊の学術書。そこには懐かしい友の書き込みが施されている。しかしその書きこみはなぜか、数ページ続くかと思えば数十ページ飛ぶ、そしてまた始まるという変な具合だった。ある日私は古本即売会でそれと同じ学術書を手に入れた。するとなんとそこにはあの友人と同じ筆跡の書き込みが。しかも前の学術書で書き込みがなかったところだけを選んだかのように、つまり二冊併せて一冊分完全に網羅できるように書き込みがなされていた。これは一体どういういきさつでこうなったのか? 好奇心に駆られてその背景を探る私はついに恐るべき謀略へと辿りつく………。
――――天才の手になる一掌編。ただただ唸るしかない。
■戸坂康二「はんにん」
貸本屋で借りた一冊の探偵小説。その見開きに載せられた登場人物紹介の一覧のひとりに、これ見よがしに手書きで「はんにん」と書き込みがなされている。しかし読んでみたらわかるのだが、結局その登場人物は犯人ではないのだ。……それにしても誰が何のためにこんなイタズラを?
――――日常の謎。
■石坂英太郎「献本」
作家が親愛の情を込め、自筆署名して贈った献本。しかしそれは貰い手によってすげなく古本屋へと売り飛ばされる。そのとき殺意が目を覚まし暴走を始める……。
――――物語の途中で主人公がクルっと交代する。それが大変面白い。
■早見裕司「終夜図書館」
沖縄の人っ子一人いない草原のド真ん中にポツンと出現した公衆トイレみたいな不審な建造物、それが”終夜図書館”。スランプに苦しむジュニア小説家の私は、友人の作家の勧めで”ジュニア小説が全部揃っている”というその図書館を訪れるのだが……。
――――恐るべき傑作! 魂が揺さぶられる!
■野呂邦暢「若い砂漠」
主人公は父の家業を継いだ古本屋の若い店主。
その古本屋にしばしば現れるのが、一冊の詩集を手には取るが結局買わずに名残り惜しそうに店を出る初老の労働者。
主人公の店主がその詩集を読んで、そしてその労働者に思いを寄せて想像するのが、夢叶わず消えていったかつての若い詩人たち。
そこで主人公が思いだしたのが学生時代、才能はあるが生意気だった小説家志望のとある友人。
主人公は大阪への出張がてら、神戸在住のその旧友との再会をこころみる。
――――いつまでも輝きを失わない古い本に囲まれて主人公は、夢破れただ老いさらばえるだけの男たちの人生を静かに見守る。
■紀田順一郎「展覧会の客」
時は昭和40~50年頃。ところは東京神保町。
同業者たちに総スカンを食らおうとも、また犯罪に手を染めることがあろうとも、男は今日もひた走る。稀覯本をその手中に納めるために。
――――稀覯本収集に沸いた当時の熱気が伝わってくる(今では到底考えられない!)。 -
古書にまつわる推理小説、怪奇小説などが収録されている。
収録作品は以下の通り。(カッコ内は初出年)
(江戸川乱歩: 口絵)
松本清張: 二冊の同じ本(1971年)
短いながらも人間模様がよく描かれており、解決に論理の飛躍が無い良作。
城昌幸: 怪奇製造人(1925年)
ショートショート独特の落ち方。
甲賀三郎: 焦げた聖書(1931年)
やや偶然が重なりすぎている感があるか。
戸板康二: はんにん(1961年)
題名がミソ。子供たちが微笑ましい。
石沢英太郎: 献本(1979年)
誰もが知る作家の献本では起こらなかったでしょう。
梶山季之: 水無月十三么九(1974年)
雑誌記者としての視点が光る作品。ホラー要素含む。
出久根達郎: 神隠し(1985年)
思わず涙を流してしまいました。
早見裕司: 終夜図書館(2004年)
この本で唯一2000年代の作品。文体が特殊。
都筑道夫: 署名本が死につながる(1976年)
題名は5と似ているが、全く違う解決をする。
野呂邦暢: 若い砂漠(1978年)
作家としての矜持とその他の人格は切っても切れない関係。何事でも口先三寸は避けたいところ。
紀田順一郎: 展覧会の客(1990年)
予想通りの落ちと思わせてもう一回落ちる。
仁木悦子: 倉の中の実験(1972年)
世間で何があろうとも、家族の仲はよく保ちたいもの。芥川龍之介の玄鶴山房を思い出しました。
解説は神保博久。 -
古書(店)を扱ったミステリーのアンソロジー。「怪奇製造人」に思わずにやり。
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なかなか面白かったですねぇ…時にミステリーとは言い難い作品とか、小説ですらないような短文が収められていたりもしましたけれども、概ね楽しめましたね…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
松本清張…砂の器はイマイチな感じがありましたけれども、これに収録されていた短編は出来が良いように思いました。短編のが実力を発揮できるのかもしれませんねぇ…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
というわけで、このアンソロジーを読んだのをきっかけに松本清張の短編を読んでみたいと思います…さようなら。
これこそがアンソロジーを読む楽しみですね、知らない作家に出会えるという…。
ヽ(・ω・)/ズコー -
さまざまな古書をテーマにしたミステリアンソロジー。
お気に入りは戸板康二「はんにん」。実はなかなかにほっこりとした日常の謎ミステリだったのですが。ある意味この犯行ほど許されないものはそうそうありませんよ(笑)。幸いにして当たったことはないのだけれど……。
梶山季之「水無月十三公九」も凄絶な物語で、なかなかに好み。私の場合あくまでも読むのが好きなので、装丁にはそれほど深いこだわりがないのだけれど。それでも少し魅せられてしまうような気もしました。でも欲しいかどうかは……微妙。 -
古書をテーマにしたミステリー・アンソロジー。
本の書き込み・挟み込みや、古書店・古書展覧会を舞台としたミステリーを中心に、装丁がテーマの「水無月十三么九」、ジュニア小説への熱い思いが溢れる「終夜図書館」、ちょっとホラーチックな「倉の中の実験」などバラエティに富んだ12編が収録されています。
「水無月~」は『ビブリア古書堂の事件手帖』にもでてくる『せどり男爵数奇譚』からの一編です。読みながらそのことに気付いて、おっ!となりましたが、、、なかなか強烈な話でした…。
解説では各作品の出典についても詳しく書かれているので、読書案内としても楽しめます。
年代的に少し古く感じるかもしれませんが、本やミステリーが好きな方はぜひ読んでみて下さい。
図書館スタッフ(東生駒):ホーランドロップ
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帝塚山大学図書館OPAC
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