遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? (光文社文庫 よ 19-2)
- 光文社 (2014年2月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334766955
感想・レビュー・書評
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『偏見はあらゆる学問の敵だが、それらが人の感情に由来している以上(学問の存在そのものもまた人の好奇心という感情に由るため)、消し去ることはできず、付き合い、飼い慣らしてゆかねばならないものでもある。それに失敗すれば、すぐさま新たな偏見や無理解が際限なく生まれてしまう。
善悪や物語などを抜きに語りづらい犯罪において、そうした傾向はより顕著だ。ゆきすぎた理想主義との誹りを受けながら犯罪学者が研究対象を善悪から切り離して捉えるのも、そうした偏見を回避しようとするがゆえである。』
めちゃくちゃ面白い!圧倒的な世界観の構築能力。佐藤誠という稀有な犯罪者を見事に創り上げている。完璧に面白い。しかも、クビキリものなので、見事なミステリーに仕上がっている。伏線の回収が見事!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ノンフィクションのような、ドキュメンタリー犯罪小説。86件以上もの完全犯罪を自白した佐藤誠。そのうちの2件。どうして遺体を残し、首を切断したのか?
佐藤誠の経歴、人物像をコラム形式という特殊な方法で紹介し、秀逸な構成でサクサクと、読み進める。
真相については一部分に関しては、想像しやすいきらいがあるが、とてつもなく大掛かりなミスディレクションと、ひれくれた構造が大きな衝撃をあたえる。
さらに今までに体感したことのないサプライズを、最後の一行、巻末資料、さらにその後(ここで大爆笑)意表をついて読者にもたらす。
なんとも感慨深い気持ちになる(ある意味…)作品であり、本ミスファンでもこのような作品には出会えたことないのでは?というくらいおすすめできる一作。 -
ひねくれてるなぁ、というのが第一印象。で、ここまで嫌悪感を抱かないシリアルキラーも珍しい、というのが第二印象。
ともするとミステリーであることを忘れてしまいそうな構成ですが、最終章で常に問いかけはあったんだと思い知らされました。用意された材料で、もっと普通の小説も書けたように思えますが、この構成は見事だと思います(万人受けはしないとも思いますが)。
ていうか、「昨日の殺戮儀」読みたい! -
86件の殺人を自供した殺人鬼佐藤誠
佐藤誠の事件のなかであらゆる意味で例外の遠海事件
なぜ首を切断したのか
なぜ自ら通報したのか
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5A73が面白かったので、他のも読みたくて。
こちらもひとつの謎で引っ張っていく話で、タイトルのなぜ、が分かったときはうんうんそうだと納得の理由でよかったです。ラストのあれには、こいつ〜!と思っちゃった。 -
ゲームとミステリが好きなので「インサート・コイン(ズ)」を読み、その続編の気持ちで「ナウ・ローディング」を読んだら、この事件を語るシーンが割と重要っぽくあり、イラッときたので遡って読んでみた動機。
普通なタイトルに、本格好きにはやや食傷気味のテーマをはらんだサブタイトルにやや偏見を持ちつつ読み始めた。
淡々と冷静に何十件もの殺人を殺人があった事すら気付かせないほど徹底した手口で繰り返す、佐藤誠が首切り屍体を残した理由を、社会派小説を装った「ド本格」で巧みに織り込んだ傑作。
殺すならば、完璧が礼儀。 -
久し振りに再読。実はなぜ首を切断したかと同じアイディアを私も持っていたが、それを補強する小説を書く力量がなかった。
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伏線回収、謎の引っ張りと真相開示、
ラストのそうきたかー感、そして広告に至るまで
全てにおいて計算尽くされた仕掛けが完璧に決まった傑作だった。
驚きとやられたーという一本取られた感が
ミステリーの醍醐味だとすれば、
こんなミステリーもあるんだという目が覚めた快作。
最終盤のあ、あれはあの人だったねという気付き
(計算された気づかせ方)からのあれ?○○が違う・・、
そうきたか!で終わるラストがホント秀逸だった。 -
あまり期待せずに読んだのだが、当たりの作品だった。物語は徹底したドキュメンタリー形式で展開し、最後の最後まで面白い仕掛けに翻弄される。そして、読み進むうちに創作であるはずの物語が次第に現実味を帯びて来る。
86件の殺人を自供した元有能な書店員の佐藤誠。佐藤誠が関わった遠海市の2件の異常な殺人事件の真相は…
もちろん、ミステリーとしての仕掛けも見事であり、中盤からの意表を突いた展開に驚いた。本作が詠坂雄二の第2作ということで、今後も楽しみな作家である。 -
小野不由美氏推薦!
「物語も仕掛けも世界観も。
詠坂雄二は最高にcoolだ」
詠坂雄二・連続刊行第3弾!
八十件以上の完璧な殺人を犯した男、佐藤誠。
ただ一つの例外を除いては……。
副題になっている、佐藤誠。
彼は八十件以上の殺人を自供し、死刑執行された。
彼の人物像は――、一般論で言えば「とんでもないヤツ」なのだろう。
その犯罪はいつも完璧に計画的。殺人から死体を処理する証拠隠滅まで、徹頭徹尾にわたって。
本書はただ一つの例外、所謂「遠海事件」を扱った“犯罪実録”風の小説なのである。
そしてなぜこの事件が例外的に語られるのか。それは、
「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」
というハウダニットが、佐藤誠という人間を紐解くために必要だからである。
この一点の問いに対する回答、および本書の捻くれた構成(“誰が”考えたものなのか、また巻末資料について、など)が、本書を傑作たらしめる。
ミステリ :☆☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆
人物 :☆☆☆☆☆
文章 :☆☆☆☆