東雲の途 (光文社文庫 あ 46-5 光文社時代小説文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334767808

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ4の一冊。

    信次郎と伊佐治。 
    この二人を、屍体の中に隠されていた瑠璃が導いた先は遠野屋清之介のもと。
    この導かれ方といい、やっぱり切っても切れない縁を感じる信次郎と清之介の二人。

    そしてこの瑠璃があの過去、清之介にとって忘れられやしないあの過去、大切な人との優しい思い出に絡んでくるとは。

    今作は清之介&伊佐治の旅という意外な展開を始め、内から外への動なるものを感じた。

    清之介の人としての、商人としての姿が眩しい。

    過去へ向き合った故の大きな商人としての決意、大切な人達のために一歩外へと踏み出す姿がカッコいい。

  • 東雲は全国で割と多くある地名で、私も近くに住んだことがある。本来、夜明け前の茜色の空を指し、これから成長していく期待が現れていると思うのである。
    本題名は、さらにその前であろうか、東雲の途ということは東雲に向かっている、夜明けに向かっているのか、まだ東雲の状態の途中なのか、楽しもうと、ページをめくった。

    町人風の男が殺害されるところから始まる。その男は武士だと木暮信次郎が見抜く、そしてその男は遠野屋清之助とどんな関係が・・・。
    清之助の止まっていた時間が動き出す。
    信次郎、清之助、伊佐治がそれぞれの味を出しながら、清之助の過去に迫る。過去を断ち切るには原点に戻ることなのかもしれない。それは心理療法の手法に近いものがあると感じた。

  • 回を追っても、面白さは増すばかりの弥勒シリーズ第4巻。
    今回は遠野屋の過去が明らかになる。
    ほぼ三人の男の周りでの出来事を追っているだけなのに、こんなに夢中にさせられるのは、三人のキャラがたち魅力的だからか。
    木暮と遠野屋の関係が微妙に近づいた気がする。

  • この「弥勒」シリーズは、絶対見逃せなくなってしまった。
    麻薬のような、と言ったら語弊があるだろうか、読みだしたら止められない、それほど魅力的ということであるが。
    毎月大量生産されている文庫書下ろしの時代小説(ほとんどが延々と続くシリーズもの)とは、確かに一線を画すこの小説を、「全体時代小説」あるいは「創造的な時代小説」と、解説者の高橋敏夫氏は書いている。
    本屋の書棚にずらりと並ぶ「最近大流行の平板で紋切型の時代小説」を苦々しく思っている身にとって、解説者の言は、まさに言いえて妙であり、留飲の下がる思いである。
    武士としてではなく、商人として故郷に帰り、大仕事を成し遂げた清之介が、今後どういう活躍をし、運命をたどるのか、そして岡っ引き伊佐治や、同心木暮信次郎が、どのように係わっていくのか、次回作『冬天の昴』
    が楽しみである。

  • 信次郎と遠野屋の距離がなんか縮まった気配のする4巻。
    やっぱこの作品は長編が良い。
    個人的にはダークサイド遠野屋が好きなので、その片鱗がチラッと出てきたのにゾクっとしました

    2022.9.24
    140

  • 弥勒シリーズの第四弾。
    今作では、小間物問屋の遠野屋が、ついに過去と正面から向き合って、逃げずに覚悟を決めた。
    ここまで、ずっと暗く付き纏っていた不安感が消えて、とても気持ちよく作品の世界に入り込めた。
    江戸を(信次郎とも)離れ、遠野屋と伊佐次が旅する様子も新鮮で、瑠璃の謎を解き、貧しい藩の活路を語る遠野屋が良かった。

  • 相変わらず登場人物の表現が卓越していて、惹き付けられている。
    個人的には、伊佐冶は、普通の人間なら知らずとも生きていける井戸の底のような暗闇を怖々と覗いている最もまともな一般人。
    遠野屋は、伊佐次がのぞき込む暗闇の真っ只にながらも、たった一筋、細く差し込む光に向かって、必死で足掻いている非凡人。
    私には、この2人が対極のように感じられる。
    そして、もう1人のキーパーソン、信次郎は数学で言うとX軸、Y軸に対するZ軸のような存在。そもそも次元が異なるのだ。
    三者が互いを異なものと認め、どうしても分からない、混ざりあわない部分を持っているのに、どこかで期待し、信頼し、ひとつひとつの事件を通して関わり合っていく。
    そんな彼らの人生の1ページを一緒に過ごしているかのような、そんな気分にさせてくれるシリーズだ。

  • シリーズ四作目。
    これまでとは少し違って、信次郎はあまり出てこない。けれどそのぶん、遠野屋と伊佐治の事がいままでになく深く描かれている。
    とにかく最後の数行にすべて持っていかれたような気がする。ひろげた風呂敷が、とてもきれいにたたまれた感じで、個人的にはとても満足した。

  • 遠野屋メイン。すげの里の瑠璃が結局どうだったのかよくわからなかった。終わり方は、いきなり紅花が出てきていきなり終わっちゃった?って感じ。だから読了感はイマイチだけど、あさのさんの醍醐味である人物描写は今回も健在でした。自分の暗い過去にずっと背を向けてきた清之介が、それに目を向けようと決心したのは、清之介の大きな成長になっただろう。旅の描写も素敵。そこにいるだけでいい。そんな、伊佐治さんのような人になりたい。

  • 帰郷編。
    信次郎のヒトデナシ度が神がかってきている。
    これで清之介の方はひとまず大丈夫だろうか。

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著者プロフィール

岡山県生まれ。1997年、『バッテリー』(教育画劇)で第35回野間児童文芸賞、2005年、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。著書に『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ、『THE MANZAI』シリーズ、『白兎』シリーズなど多数。児童小説から時代劇まで意欲的な執筆活動で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『NO.6〔ナンバーシックス〕(8)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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