ココロ・ファインダ (光文社文庫 あ 57-1)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334767969

作品紹介・あらすじ

自分の容姿に自信がもてないミラ、クラスの人気者カオリ、「わたし」というしがらみに悩む秋穂、そして誰とも交わろうとしないシズ。同じ高校の写真部に所属する4人は、性格も、好きなカメラも違うけれど、それぞれのコンプレックスと戦っていた。カメラを構えると忘れられる悩み。しかし、ファインダーを覗く先に不可解な謎が広がっていて…。高校の写真部を舞台に、女子高生たちが構えるカメラに写るのはともだち、コンプレックス、未来、そしてミステリー。

感想・レビュー・書評

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  •  写真部に所属する4人の女子高生と彼女たちにまつわる小さな謎を描いた連作短編ミステリ。

     作中に登場する女子高生の描き方がとても絶妙だと思います。それぞれが絶対に純粋な少女というわけでもなく、友人の容姿をうらやましく思っていたり、クラスのいじめやそれを止められない自分に悩んだり、友人関係、進学、自分の存在意義…、純粋すぎず、ドロドロすぎず、あくまで等身大の女子高生たちの姿を描こうとしているのが、とてもよかったです。

     そして、そうした少女たちの本当の姿を描くために日常のミステリという手段を使っているのも好印象でした。それぞれの謎は、

     なぜ突然写真部に友人は来なくなったのか(コンプレックス・フィルタ)、学校の壁ばかり撮られた写真のデータの謎(ピンホール・キャッチ)、告白してきた男子をビンタした女の子、その理由は(ツインレンズ・パララックス)、展示写真をコピー写真とすり替えられた理由(ペンタプリズム・コントラスト)。

     こうしたそれぞれの小さな謎が彼女たち自身が見失った等身大の自分を見つけるための謎としてしっかりと話と結びついています。

     そしてこの小説を成立させるうえでもう一つ重要な要素となっているのがカメラ。作中の彼女たちはカメラによって救われたり、あるいは傷つけられてしまうこともあります。しかしたとえ傷ついても、そこからの成長をしっかりと描いている、だからこの作品に出てくる少女たちがとても愛おしくも思えました。

  • 相沢沙呼さんの小説は本当に好き。一人一人の心情の描写が素敵すぎる。

  • かおりの話が一番はらはらしました。
    様々な部員の視点からカメラが描かれている、青春溢れる素敵な作品でした。

  • この作家さんの酉乃初シリーズの後にこの本を読んだのですが、こっちの本の方が語りすぎず甘すぎなくて好きでした。

  • 高校の写真部に所属する4人の女子高生のそれぞれの視点から語られる短編集。

    ハタから見るとキラキラして悩みや葛藤も無さそうな少女たちですが、容姿に自信が持てなかったり、学校や家の居心地が悪かったり、自分らしさを見失ったり、人知れず悩みを抱えています。

    人は誰もが悩みを抱えて生きていますが、彼女たちはその若さゆえ、悩みに直面した時、立ちすくんでしまうのです。
    自分の悩みが他人より深刻に感じてしまったり。
    お互いに思いやる気持ちはあるのにうまく届かず、行き違いが生じてしまったり。
    幸せになりたいのに、悩みを自分で作り出してしまう自家中毒な面もあったりして。

    そんな彼女たちの繊細な心の動きを、カメラの性質や作用を利用した謎解きに沿って、優しく紐解いていきます。
    謎としてはそんなに意外性は無いのですが、少女たちの心の機微の変化には感じ入るものがありました。
    自分の気持ちに向き合い、それを受け入れることで、同時に他人の感情の蓋をゆるめることができるのかもしれないな、と思いました。

  • どうにもできないほどの、苦しさ、むず痒さ

  • 「あなたたちのイメージを、押し付けないで。」っていうのにすごい共感した。結局自分ってなんなんだろうって考えるきっかけになりました。答えは出なかったけれど。

    カメラ詳しくないから調べながら読んでたら、フィルムカメラで写真撮ってみたくなった。

  • 相沢氏の物語の多くには女子高生と男子高生のペアが登場するが、本作では4名の女子高生が主人公。カメラと写真を主軸として、それぞれの視点から語られる4編の綺麗な物語。まさに「ココロ・ファインダ」。

  • 小さな謎解きが面白くて、さらっと読めた。
    高校生の友達関係、親との関係って、真っ只中にいると苦しい。何十年前のことだけど、思い出すとかなり苦しいから。
    わたし自身、カオリみたいな時もあったし、シズみたいだった。
    ただ、全然乗り越えずに進んでしまったなー。

    きっと、それがあっての今なんだけどね。
    でも、もう少し、楽しい高校生活、過ごしたかった。

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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