舟を編む (光文社文庫 み 24-2)

著者 :
  • 光文社
4.21
  • (2426)
  • (2250)
  • (891)
  • (126)
  • (30)
本棚登録 : 24010
感想 : 1755
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334768805

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「舟を編む」を半分まで読んだ翌朝、つまり馬締のラブレター作戦のくだりを読んだ後、私はこんな夢を見た。

    私は若くて綺麗な女性と知り合いになる。そのあと労務者2人とも知り合いになる。そのあと知り合いの先輩から、「(先輩と同じアパートに住む)あの女性が(同アパートに住むあの労務者から)目をつけられて困っている、ひいてはお前は知り合いらしいから一緒に行って談判して欲しい」と頼まれる。(以上夢なので色々長いけどかなり端折りました)
    私はその古いアパートに赴くと、ちょうど彼女が保育所から子供2人を連れてアパートの2階に上がる所だった。
    「仕事帰りですか?」私は尋ねた。驚く彼女に「先輩がこの一階に住んでいるんで、訪ねてきたんです」と言い訳をした。子供はお母さんの知り合いとわかると「こんにちは」と、はもりながら天使の笑顔を見せる。
    一階の先輩は、同じく一階の労務者の部屋に入ろうとしている所だった。用件は伝わっているらしくすんなり部屋に入る。中はかなり整頓されている。労務者は仕事場で知り合い、部屋を折半して借りているらしい。話の流れから、単に可愛い彼女を真面目に口説き落とそうと「ちょっかい」に見える口のききかたをしただけのようだ。それでも私は2人に注意する。
    「(彼女はいま一生懸命生活を立て直している最中なのだから)乱暴な口のききかたをする貴方たちの相手をするのは不安なんです」
    「乱暴な」というワードに、かなりショックを受けているようだった。2人は了承した。
    そこで夢が覚めた。
    そして呟いた。「馬鹿らしい」
    何の資格があって、私はあんなことが言えたのか?私の方がよっぽどいやらしいではないか?

    この夢を書き記している間、「はもる」という言葉がどうも気になって調べてみた。ちゃんと辞書にあった。

    ハモ・る
    〘自ラ五(四)〙 (ハモは「ハーモニー」の略) 二つ以上の声部の声、または音が、ひびき合う。ハーモニーを生じる。
    出典 精選版 日本国語大辞典
    ※「新明解国語辞典第五版」には不記載。

    実はスマホ辞書では「ハモ・る」はカタカナにも漢字にも変換されなかった。日本語になっていないのか疑問に思ったのである。スマホが認識していなかっただけで、立派な「日本語」になっていたようだ。辞書はやはり素晴らしい。ちょっとした言葉の疑問が直ぐに氷解する。「ハモる」は、いまや音楽家のみが使う言葉ではなくなっているのである。それに見合う語釈がちゃんとされていた。

    え?何の話をしているのか?だって。
    そうだった!
    「舟を編む」と私の夢とどう関係あるのか、説明するべきだった。
    主人公馬締(まじめ)は、同じアパートに住む香具矢(かぐや)さんに恋をしている。その状況が、私に往年の名作「めぞん一刻」を思い出せ、アパートの管理人で美貌の未亡人たる女性に恋する男たちの顛末を夢の中で再現してしまったということらしい。つまり、この夢の中、2人の労務者どころか、先輩も私も、2階の子供連れの女性に恋をしていたということだ。「舟を編む」の第二章の終わりで、馬締の恋は成就する。しかしあまりにも不器用な成就であった。
    馬締よ、お前の恋は羨ましいぞ!
    その気持ちが、こんな変な夢に変化したということらしい。

    いったい私は何を読まされているのだろう?

    そう思った貴方、
    正常な感覚をお持ちです。
    本来本書は『大渡海』という新しい大辞書を編纂する編集部員たちの15年に及ぶ泣き笑いの奮戦記である。もちろん汲めども尽きぬ言葉を巡るアレコレの魅力が、この小説に詰まっている。

    一方で、これは不器用な男女の恋の物語である。この書評は、それを強調せんがために書かれたものなのであった。

    (せっかく遊園地の観覧車までたどり着いた2人が)
    「俺、遊園地の乗り物の中で、観覧車が1番好きです」
    少し寂しいけど、静かに持続するエネルギーを秘めた遊具だから。
    「私も」
    馬締と香具矢は、共犯者のように微笑みあった。(92p)

    それだけで終わってしまうデートは、多分私的にはツボだったのだろう。
    同僚の西岡の恋の顛末も共感できるものだった。
    言葉にならない、その共感が、夢の形で現れたことに、私自身全く驚いたのである。
    だから言葉にした。
    「馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです」(267p)
    夢の顛末と感想と。

    恋が上手くいった秘訣は、やはりあの毛筆のラブレターに違いない。「漢文は読めない」と言っていたから、江戸時代の候文なのだろうかと想像していたら、文庫本巻末に「馬締の恋文 全文公開(西岡・岸辺解説付)」がありました。ナイス!三浦しをんさん。一読、うーむ、やはり我が教養でもわかりにくいけど、気持ちは伝わるな。参考にしよう(←いつ?誰に?)。

    よし。本屋大賞一位で、読むべき文庫本は「流浪の月」のみになった。春の「52ヘルツのクジラたち」文庫化までに読み遂げるぞ。

    • Macomi55さん
      kuma0504さん
      なんて言ってたんでしょうね。^ ^
      kuma0504さん
      なんて言ってたんでしょうね。^ ^
      2023/01/11
    • bmakiさん
      面白いお話ですね(笑)
      一つの物語として、このレビューを楽しんでしまいました(笑)

      私も物語ばかり読むので、夢が超大作になることがあ...
      面白いお話ですね(笑)
      一つの物語として、このレビューを楽しんでしまいました(笑)

      私も物語ばかり読むので、夢が超大作になることがあります。
      起きた時に、あー今の世界が小説になったら凄いのに!って思うことがあります。

      このレビューを読んで、小説読みさんの夢って、やっぱり壮大なんだなぁって感じました(^-^)
      2023/01/11
    • kuma0504さん
      bmakiさん、
      ありがとうございます。
      今回は壮大ではないんですが、
      夢を見ながら、コレ全部記録できたら映画一本できるのになあ、てことはよ...
      bmakiさん、
      ありがとうございます。
      今回は壮大ではないんですが、
      夢を見ながら、コレ全部記録できたら映画一本できるのになあ、てことはよく思います。
      で、気になってevernoteの「こんな夢を見た」で検索して10個ほどの「夢メモ」読んでみたら、
      コレが見事に面白くない!
      そんなモンです‥‥。
      2023/01/11
  • 2012年本屋大賞受賞作品
    友人に勧められて、この本と現在NHK BS放映中のドラマを並行視聴です
    しかし、ドラマの方は先週から見始めたので今晩二回目で、小説とドラマの違いがよくわかっていませんが笑

    これは、辞書作りには欠かせない才能を持った主人公馬締(まじめ)を中心に、辞書作りに取りつかれた愛すべき変な人達のお話です(*´˘`*)♡

    好きなものに脇目も触れず集中出来る人って、強いですよね〜

    それが出来ない社員の西岡は、普段はチャラ男キャラなのですが、実はとてもいい奴で、私の中では主人公より西岡が中心でした笑


    今作読んで、辞書が出来るまで沢山の時間とお金、そして人々の努力が要る事を知りました

    最近は辞書を引くこともなくなってしまった

    あの独特の薄っぺらい紙を触ったのはいつが最後だったか

    こうしてスマホで何でも検索出来てしまう世の中

    文字だけは、新しい仕事を習得する時になるべく自分の字で!自分の言葉で!書くようにしているのですが。。。

    何度も辞書をめくった学生時代が懐かしくなりました

    この本を読むと辞書をめくりたくなります

    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      皆様、こんにちは♪
      お気に入りの切手や葉書を使ってオリジナルティのあるものを考えるのも送るのも楽しいしですよね
      ° ✧ (*´˘`*) ✧ ...
      皆様、こんにちは♪
      お気に入りの切手や葉書を使ってオリジナルティのあるものを考えるのも送るのも楽しいしですよね
      ° ✧ (*´˘`*) ✧ °
      もちろん貰っても嬉しい〜

      わあ、郵便番号五桁!(๑°ㅁ°๑)!!
      三桁や五桁の時代ありましたよね
      七桁になった今、たまに自分の家の郵便番号が何番だか記憶があやしくなりますよ笑
      2024/04/16
    • bmakiさん
      K村さん、しずくさん

      こんばんは(*^^*)

      手紙が大好きで一時期切手を集めていました。
      ご当地切手等々、新しい切手が出るたびに購入して...
      K村さん、しずくさん

      こんばんは(*^^*)

      手紙が大好きで一時期切手を集めていました。
      ご当地切手等々、新しい切手が出るたびに購入していましたが、値上げの所為で使いにくくなってしまいました(-。-;
      60円切手とかたくさんあるのに、そのままじゃ使えない。゚(゚´ω`゚)゚。

      郵便料金、また値上げみたいな話ありましたよね。


      可愛いシールやレターセットも昔は集めていましたっけo(^▽^)o
      最近はLINEやメールで事足りちゃうので、手紙も書かなくなり、漢字も全く書けなくなりました(-。-;

      書取りやらないと。。。
      2024/04/16
    • しずくさん
      bmakiさん、私がラインスタンプを好きなのは、たぶんハガキの切手替わりをやってるのじゃないかと思っています。
      LYPプレミアムの3か月無...
      bmakiさん、私がラインスタンプを好きなのは、たぶんハガキの切手替わりをやってるのじゃないかと思っています。
      LYPプレミアムの3か月無料お試し期間で、色んなスタンプを使って楽しんでいます。
      本当に書き取りが必要なぐらいに漢字が書けない・・・
      2024/04/17
  • 自分の役割を認識して、
    その役割のために全力で取り組む人たちが
    ここにはいました。

    こういう人たちと仕事が出来たら
    幸せだろうなと思う。

    全力で取り組むから信頼され、
    全力で取り組んでるから応援し、
    そんな人間関係が築ける様に、
    頑張ろうっと思えた。

  • 読み終わり率直に新しい辞書『大渡海』の完成に万歳三唱!!!
    と言った気分になりました。

    完成までの長く険しい道のりを辞書編集部の面々が力を合わせて進んでいく様子が見事に描かれています。また登場人物の関係性がとても良い!!!

    人生における恋愛の重要性が、馬締と香具矢を通して心に共鳴します。西岡や岸辺を通して、仕事の仲間の重要性が鑑みられます。松本先生や上司の荒木を通して、人生がなんたるものかを考えさせられます。

    辞書作り、ときどき不器用な恋。愛すべき?まじめな変人たちの、のんびり奮闘記!!!
    2012年本屋大賞第1位!!!
    お勧めです。

  • 中学生からずっと、同じ国語辞典を手の届くところに置いています。もう、うんじゅうねん。最近は引くことも少ないですが、あると安心します。読み終え、紙のぬめりを確かめたのは言うまでもありません。何気なく使っている辞典がこれ程年月をかけ、手間と魂が込められ作成されているなど知りませんでした。
    言語学に興味があり、大学では辞書を作りたいと願望。入社し辞書編集部になり、どんどん辞書にのめり込んでゆく馬締(少し変人っぽい)。そんな馬締だが「伝え下手」という不器用さを気にしていた。そこに世渡り上手な西岡の登場。仕事で身近で関わるうちに、西岡は馬締の辞書に対する熱量に押され、「自分には何があるのか」と自問自答する。
    二人は良きパートナーとなる。年数が経っても。
    自分が持っていない個性、長所のある人の存在は、自分の世界を広げてくれる。又自分の良さも気づかせてくれるものだな、と感じた。
    お仕事小説はかたいイメージがあり、苦手意識はありましたが、知らない語釈もたくさんあり勉強になった。
    新しい国語辞典が欲しくなった。タイトルの意味がわかりました。なぜ舟なのか編むのかって思っていた。

    • アールグレイさん
      kazekaoru21さん、初めまして!
      ゆうママと申します!フォローを頂きありがとうございます。お名前、素敵ですね!私も、今になって安易な...
      kazekaoru21さん、初めまして!
      ゆうママと申します!フォローを頂きありがとうございます。お名前、素敵ですね!私も、今になって安易な名前をつけたことを後悔しています。ブクログ歴2ヵ月半程でしょうか。今まで、記録用紙に記していました。
      これから「その扉をたたく音」を読みます。その前に、「ブロードキャスト」のレビュー、これが書く内容が頭に浮かばないのです。湊かなえ「ドキュメント」はブロードキャストに繋がりがあると聞き、再読したものの・・・・いつもなら、読みながら思い浮かび、メモをするのですが・・・・kazekaoruさんは、今何か読んでいますか?
      (^_^)/
      2021/04/29
    • kazekaoru21さん
      ゆうママさん、こんばんは、初めまして!
      こちらこそフォローをありがとうございます。私は一年前から登録しました。それまでも図書館にはよく行っ...
      ゆうママさん、こんばんは、初めまして!
      こちらこそフォローをありがとうございます。私は一年前から登録しました。それまでも図書館にはよく行ってましたが、それ程読めてはいなくて(趣味の欄には一応、「読書」とは書いていましたが)。辻村深月さん湊かなえさんがお好きなのですね。リバースはドラマでみました!私はこの作家さんが!という程読み込めてなく、直感で手あたり次第(取り合えず評判のよいものとか)。川上弘美さん宮下奈都さん桜木紫乃さん重松清さん山本文緒さん…とか好みですが、他にも読みたい作家さん沢山!下の名前がひらがな(あるいはカタカナ)の作家さんとか(最近よくお聞きするので)、いろいろ読んでみたいです。あちこち手を付けると広く浅くになってしまうのが悩みでもあります。図書館へ行けば借りてしまう(積読は溜まる)^^;これも悩みです。今は長編を休み休み読んでいます。正直いうと挫折しそうになりました。あと半分くらいです(タイトルは内緒にしてください^^;)。
      名前のこと、ありがとうございます。ゆうママさん、とてもかわいいですよ!私のほうは、早まった(やってしまった)!という感じ、こっぱずかしい、後悔です(汗)
      コメントありがとうございました^^
      2021/04/29
    • アールグレイさん
      早速のお返事ありがとうございます。私はコメント好きなので、ご覚悟を、笑 こっぱずかしくなんてありませんよ。私も何年か前までは厚みのある本は苦...
      早速のお返事ありがとうございます。私はコメント好きなので、ご覚悟を、笑 こっぱずかしくなんてありませんよ。私も何年か前までは厚みのある本は苦手でした。永遠の0、罪の声は、せっかく図書館の予約順番が回ってきたのに、息子に頼んで返してしまいました。道尾秀介さんの「カラスの親指」絶対いいです。読み始めてすぐに引き込まれます。良い本が読めるといいですね!
      o(^-^)o
      2021/04/29
  • 辞書の編纂に携わった人々の静かで地味(?)なお話。言葉は歴史と共に変遷し、日本文化をも形作ってきた。それらの言葉一つ一つを辞書に残す意味は大きい。私達が、普段使わせてもらう辞書の成り立ちを改めて考えさせられ感謝したくなった。
    実は先に映画を観ていた。小説を読み始めるとキャストの面々が出現し「まずいなあ…やはり先に読むべきだったかな?」なんて思いはじめたものの少しも邪魔をしないどころか、映画に更に深みを持たせる結果になった。
    皆どこか不器用だけれど、一つの大きな目的に向かい丁寧で真摯な行き方をしていた姿が感動的。
    ※(2023.5.7 映画観賞)

  • なにかを生みだすためには、言葉がいる。

    この世に言葉が生まれた瞬間を想像してみました。
    例えば、ただ荒涼と広がるばかりだった大地に、草木が芽吹き色鮮やかな花が咲き乱れ、灰色だった空は刻一刻と色を変えていく。凪いでいた海は波音を響かせ始め、吹き荒ぶ風は、まるで怒りを鎮めたかのように人の頬を優しく撫でて消えていく。
    言葉が生まれたことによって、世界は時を刻みはじめ色づきだしたのではないかと思えるのです。
    ただそこにあると認識していただけのものに、ちゃんと意味があるんだと知ることが出来たのだから。

    そして、言葉は見えない感情をも表すことが出来ます。
    頭に浮かぶ突拍子もない閃きも、心に宿る灯火のような温かな愛情も、ポッカリ穴のあいたような空虚感も。それらを言葉によって紡ぐことが出来た時、人は体中を感情の嵐が駆け巡り身を震わせたのではないだろうか、なんてことを更に想像してしまいました。
    そう、わたしはこれが言いたかったのだ、と。みんな聴いてください、と。

    言葉へ真摯な態度で向き合う人々がいることを知ったことで、言葉について改めて考えてみることができました。言葉を愚直なまでに追い続ける彼らのおかげで言葉は今もわたしたちの生きる道を照らす道標になっているんだと思います。
    彼らの想いを知ってしまった今、もう言葉をぞんざいに扱うことは出来なくなりました。
    と同時に、言葉を扱う辞書の危うい存在意義に対して今まで全く考えたこともありませんでした。言葉を生み出す心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものでなければならない。
    これって当たり前のようでいて、いやいや世界では実は当たり前ではないところもあるぞと今さらながらその恐ろしさに愕然としました。
    人が人として生きるためには、言葉は自由なものでなければいけないのです。

    最後に一番心に残ったのは、言葉があるからこそ、大切な人がいなくなっても思い出が、記憶が心に残っていく。語り合い、伝えあっていくことができるということです。
    なんて言葉は貴く綺麗なものなのでしょう。

  • 完成させるまでにこれ程長い時間をかける書物は、辞書以外にないでしょう。
    携わる人々の人生を懸けて、作り上げていく一冊の本。
    とても素晴らしいものだと思いました。

    小学生の頃は紙辞書を使用していましたが、中学生になり電子辞書を使用するようになってから、
    紙辞書はほとんど手に触れることはなくなりました。

    しかしこの作品を読んで、分からない言葉の意味を知るために辞書をひたすらめくっていた、あの頃を思い出しました。
    個人的に一番好きなのは「新明解国語辞典」です。

    大学は文学部でしたので、また紙辞書へ立ち戻りました。

    言葉を引き、出典を調べ、その出典を読んで実際の用例を知る。
    この作業は電子データではできませんし、用例を調べる方法としても認められていませんでした。

    紙辞書への信頼、辞書そのものが持つ権威があるからこそ、今も辞書が改訂され続けるのだと思います。




  • 最近放映されたドラマが面白かったので、改めて再読。1回目は10年前くらいか。

    意外と恋愛部分もあって軽い。
    辞書を作る人たちの、言葉への思い、辞書を生み出すことへの熱い思いが感じられる物語。

    「知ってる」という言葉が、時になんで言われた人に、ちょっと強い言葉として感じさせてしまうのか、時々思うところがあったので、物語の中で出てきてくれて腑に落ちた。「知ってる」のひとつの代わりの言葉も出てくる。

    「なにかを生みだすためには、言葉がいる。」
    言葉は傷つけもするし、誰かを支えもする。
    なにかを生み出したいけれど、傷つけたくはない。

    「心を映した不器用な言葉を、勇気をもって差しだすほかない。相手が受け止めてくれるよう願って。」
    辞書を読んでみたくなった。

  • 兄弟の本棚で見つけ、手に取った1冊。三浦しをんさん初読みでした。
    私の知らなかった世界の扉が開いた。その一言につきます。辞書って、学生時代誰もが1度は触れてるけど、作成の裏にはこんなドラマが広がっているんだなぁ。
    主人公馬締さんの辞典編集との出会いから、13年の年月を経て「大渡海」が編まれるまでを数人の視点を介しながら物語が進みます。
    馬締さんにも、岸辺さんにも、西岡さんにも、それぞれのキャラクターがあって、それぞれの在り方で仕事に向き合っている。
    解説のお言葉のとおり、好きでたまらない仕事に出会える幸せ、そうでなくても目の前の仕事に真面目に取り組むことで誰もがその道のプロとして誇りを持てるのだ、というところが心に沁みます。
    文庫特典の恋文、おもしろかったです(笑)。

  • 先に会社の方から DVDをお借りし、映画を見ていた。
    映画の世界観が素晴らしく、何て美しい物語なのだろうと思っていた。

    小説もぜひとも読んでみたいと思っていたところ、会社の方から貸していただくことができた。

    簡単に言ってしまえば、国語辞典を作る それだけの本であるが、
    映画でもそうであったように、まじめくんの人となりにとても好意を持った。

    まじめくんを取り囲むすべての登場人物も生き生きとし、
    それぞれ個性は強いが、とても清々しく感じた。

    映画とは違い、小説では登場人物の心の機微に触れることが出来る。
    映画は映画の、小説には小説ならではの良さがあり、どっぷりとこの物語に浸かることが出来た。

    良書!

  • 辞書の編纂作業ということで、難しいテーマだなぁと思っていたので読むことを躊躇っておりましたが、人情味がある作品かつコミカルな感じでとても読みやすかったです。

    辞書の編纂作業というテーマで本屋大賞受賞作ということ以外全く前情報がなかったので、本作が連作短編集であったことに少し戸惑いはしました。しかし、それぞれの登場人物が抱える仕事や恋愛に対しての純な想いがヒシヒシと伝わってきて、まるで透き通った小川のような作品であるかのように感じました。

  • 辞書を引くことがめっきり減ってしまったが、辞書作りの奥深さが、この一冊で十二分に伝わった。
    荒木、馬締、西岡、岸辺、とそれぞれの物語が進んでいったから、人物像が掴みやすかった。
    辞書作りの物語なだけあって、読むのが少し大変だったが、とても温かい物語だった。読後感が良い。
    15年かけて編んだ「大渡海」とても興味深い。

  • めちゃくちゃ面白い本でした。
    読みやすくて、グイグイ一気に読んでしまいました。
    辞書を作るという大仕事に対する情熱と人間模様がめちゃくちゃ上手く描写されていて、本にドップリ入り込みました。
    ぜひぜひ読んでみてください❕

  • 三浦しをんには驚かされる。特にお仕事本

    教わることが多い。
    ふーん。辞書を編纂する
    気が遠くなるような地味な作業。
    そのおかげで
    その辞書を使って理解を進めることができた。
    もう随分前に読んだので記憶だけで
    振り返ってる
    三浦しをんを好きになった最初の本だ。

  • 来週からNHK:BSでドラマスタート。
    『原作が先、映像が後』党なので急いで手にとった。

    辞書制作の物語…いや、辞書を作ることを「編む」と表すらしい。言葉を紡ぎ合わせてまとめる作業は「編む」が相応しいのだろう。

    月日とともに変化していく言葉は生き物。言葉の大海原を渡る舟を編んでいく。
    辞書【大渡海】発刊に情熱を傾け、没頭する人々の話は新鮮で胸が熱くなった。
    よし、私も頑張るぞう!と、大いに前向きにしてくれた!

    • こっとんさん
      『原作が先、映像が後』党のセシルの夕陽さん
      おはようございます♪
      私は映画を先に観ました。
      あの映画が、ドラマになってキャストがかわるとどん...
      『原作が先、映像が後』党のセシルの夕陽さん
      おはようございます♪
      私は映画を先に観ました。
      あの映画が、ドラマになってキャストがかわるとどんな映像になるのか……興味があります(*^^*)
      私もこの頃、『原作が先』に傾いているので、映画化!とか聞くと、すぐに原作に飛びついてしまいます( ˊᵕˋ ;)
      2024/03/01
    • セシルの夕陽さん
      こっとんさん、コメントありがとうございました!

      ドラマは主人公が岸辺みどりだと耳にしました。
      ドラマ、ダビングしたら安心してまだ観ていない...
      こっとんさん、コメントありがとうございました!

      ドラマは主人公が岸辺みどりだと耳にしました。
      ドラマ、ダビングしたら安心してまだ観ていないのです(^^;;

      映画とドラマではキャストも変わり、また趣きが違うのでしょうか?

      原作を読んで、映像で脳内イメージの答え合わせをする方が好きなんです。人によっては、映画やドラマが面白かったら、原作を読む方もいらっしゃいますよね(^^)

      2024/03/02
  • とても面白かった。ほとんど止まらず読み切った。

    辞書を作る人がいるだなんて考えたこともない。想像を絶する壮大な話だった。たくさんの人の想いをのせて15年もの月日をかけて「大渡海」は作られていく。すごいな本当に。
    こういう大きな物に触れると唖然というか、圧巻!な気持ちになる。全く知らない世界である辞書を愛する人々に触れられて嬉しい。

    この感想を馬締くんにみられたら言葉の使い方を間違ってるよと指摘されてしまう気がする。。

    西岡、いいキャラしてるなと思った。普通にいい奴で一番気持ちがわかる感じ。

    辞書を作る人達の話。
    馬締、荒木、佐々木先生、西岡、岸辺、香具矢さん。

    三浦しをんさんの本は普通とはちょっと一味違ったような本が多いのかな?今のところ思いつきもしないような知らない世界の話ばかりだ。三浦さんのいろんな本を読んでみたいと思う。

  • 西岡のキャラクターが凄く好き。何かに熱中する人を否定、嫉妬する事は簡単だけど、受け入れて我が道を行ける男はかっこいい!ストーリーも感動でした。

  • ある出版社の辞書作りに携わる編集部を追った物語。この本を読んで初めて辞書編纂(へんさん)というお仕事を知りました。
    『辞書は言葉の海を渡る舟だ、海を渡るにふさわしい舟を編む』
    辞書「大渡海」の完成を目指す登場人物は、みんな仕事に情熱を捧げ、自らの仕事に自信と誇りを持っている。そんな登場人物たちの姿が、なんだか堪らなくかっこよかったです。

  • 辞書を新たに作ることの大変さと、それに関わる人々のそれぞれの想い。
    大人になって、辞書を触ることがなくなりましたが、辞書を読んでみたくなりました。

  • 辞書編集部という、出版社の中でもマイナーかつ地味な部署を舞台にして、辞書編集という、「言葉という途方もなく広く深い海原を航海する舟を編むという作業」を、とてもとても魅力的に三浦しをんさんが描く。

    それにしても一冊の辞書を作り上げるというはほんとうに気が遠くなるほど地道で根気強い、精神力のたまものなんだなぁと実感。確かにあの紙は薄くてもインクが裏写りしない、特殊なものなのだろうな、というのは元書店員だからうっすらとは感じていたが、これほどまでに編集に携わる方々の血と汗と涙が詰まった魂の結晶ともいえるものだとは。

    これからはよりいっそう国語辞典を大事に扱わなくては、と心を新たにしましたね、ワタシは。

    どの登場人物もいちいち魅力的なのですが、特に見た目や言動から感じられる軽薄さとは裏腹な誠実さや優しさをちらりと垣間見せる西岡さんが素敵だし、厳しく取っつきにくそうな荒木さんの、松本先生の葬儀の場面「どれほどの慟哭がこだましているのか」という一文が、半世紀近くを共にし人生の大半を辞書作りに費やした二人の心の絆を感じてすごく心を打たれましたね。

    さすがは本屋大賞。素晴らしい一冊だと思います。

  • 何かに没頭するって、素敵なこと。
    辞書作りという気の遠くなるような話でも、読んでいくうちにだんだん楽しくなってきた。
    言葉は時とともに、生き物のように変化していく。
    たったひとりでは成し遂げられない大きな仕事も、人々の情熱によって、長い年月をかけて、実現されていく。
    勇気と感動を与えてくれた。

    • アールグレイさん
      初めまして、ゆうママと申します。先ほどはいいねをありがとうございました。私も「舟を編む」読みました!良かったです。言葉って大事な~と思いまし...
      初めまして、ゆうママと申します。先ほどはいいねをありがとうございました。私も「舟を編む」読みました!良かったです。言葉って大事な~と思いました。
      cafeさんの本棚、拝見しました。様々な本たちで溢れかえっていますね。お互い本に癒やされているのでしょうか?ではまた、
      (^_^)/
      2021/04/10
    • m.cafeさん
      ゆうママさん、はじめまして。
      私の古いレビューにいいね押してくださって、ありがとうございます。
      「舟を編む」いいですよね。

      読んだ...
      ゆうママさん、はじめまして。
      私の古いレビューにいいね押してくださって、ありがとうございます。
      「舟を編む」いいですよね。

      読んだ本を登録して表紙を眺められるのは嬉しいです。
      それに、読書の楽しみをたくさんの方と共有できるなんて感動です。

      ゆうママさんの本棚も楽しそうですね。
      また参考にさせていただきますね。
      読書熱がまたまたヒートアップしそうです。
      2021/04/10
  • 言葉のチョイスが繊細で、とても丁寧な文章。
    心暖まる素敵な作品。
    熱を持って何かに向き合えるのが羨ましい。

  • この作品は映画で知り、何度も見返すほどに好きな作品でした。原作を読み、馬締役の松田龍平さん、西岡役のオダギリジョーさんの配役はマッチしてるように感じました。

    昨今、ネットによる誹謗中傷が社会問題であるが、本来、言葉の持つ力とは、「傷つけるためではなく、だれかを守り、だれかに伝え、だれかと繋がり合うための力。」であるのだ。

    言葉を扱う本作品では、言葉で伝えることの難しさも教えてくれる。愛を伝えるとき、紙の材質を伝えるとき、味を伝えるとき、感謝を伝えるとき。

    「言葉ではなかなか伝わらない、通じ合えないことに焦れて、だけど結局は、心を映した不器用な言葉を、勇気を持って差し出すほかない。相手が受け止めてくれるよう願って。」

    用例採集から始まり、編纂を経て、何十年という時をかけ、作り上げられる辞書は、作った人の人生が表されていると思うと、今までとは違った重みを感じる。今度書店に行った際には、いろんな辞書を手に取り、「大渡海」のように、そのタイトルに込められた気持ちに思いを馳せてみようと思います。

  • 読もう読もうと思って読んでなかった本です。
    なんか辞書を作る話って聞いて面倒くさそうって思ってました。
    でも今読んでよかったと思います。
    遅いかもしれませんがLGBTQもSDGsもよく聞くようになって初めて調べると言った具合です。
    でもそれってスマホで調べたりするけど辞書に載る時どう表現するのか?
    もちろんこの本が出たときはそれらの言葉はまだなかったはずです。だけれど『男』『女』を調べたとき昔の辞書と今の辞書と説明の仕方が変わってるんですそのことが今のLGBTQにもつながるなーって私もスマホばっかりですぐ調べないで辞書をもっと使ってみようかとおもってみました。
    広辞苑とかもみるのも楽しいかもって思いました。

    本を読んでから中で作ってた『大渡海』という辞書もちろんないとはわかってるけど辞書探してしまいました。

  • 主人公よりも西岡に共感しました。
    我ながら歳を取りました。

  • 「神去・・・」でだいたい満足したのでもういいかなアと思っていたんだけど、聞けばハハが、「三浦しをんさんはほとんど読んだ。舟を編むなんか、感動した」と言うではありませんか。

    へえ・・・。と思って、ナニゲに読んでみることにしました。

    うーん、これはイイですねえ。

    途中までは、キャラクターの配置や恋愛プロセスの物足りなさとかが「神去・・・」と似ていたので、もう一丁のめり込めない感もあったんですが、特段大きな仕掛けがあるわけでもなく、言葉へのセンシティビティーや辞書づくりのプロセスだけで(と言ってしまってはナンだが)これだけのお話にしちゃうというのは凄い。

    読後の爽やかさが快感でした。サスガは本屋大賞受賞作。

  • 2012年本屋大賞受賞作
    辞書作りのお話

    主人公は読書家で変わり者 営業部では影が薄かったが異動先の辞書編集部では適材適所で活躍する

    長い歳月をかけて皆で一つのものを作り上げる姿に胸を打つ
    熱くなったあの頃の自身と重ねたりして…
    感動がじわじわとくる作品

  • 辞書編纂に関わる主人公達の15年に渡る物語。途中で飽きたり、息切れすることなく楽しく読み切れました。辞書編纂がこんなにも地道で気が遠くなるほど長い作業を伴うのだということ、そこに関わる人々の人生そのものだということ、改めて実感しました。

  • とてもとても素敵な物語。辞書作りという地味、そしてニッチな世界を題材に愛に溢れている内容にした三浦しをんさんがすごいなと感じた。
    荒川という主人公で始まり、馬締、西岡、など様々なキャラクターを通じてそれぞれが仕事に対する密かな情熱を持っていることを知る。辞書づくりだけでなく、それぞれ職人のようにこだわりを持ち、天職なんだなと思う。
    辞書を作り上げるまでにどのようなプロセスを踏んで、こだわりがあって、苦難があるのか、を知ることができた。
    そして15年という長い年月をかけて1つのものを作り上げることの素晴らしさを改めて感じた。そして「男」「女」の定義でLGBTの話が出たり、時代を考慮をした文面にすることも入っていてとても興味深かった。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

三浦しをんの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
又吉 直樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×