奇譚を売る店 (光文社文庫 あ 36-6)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334772109

感想・レビュー・書評

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  • 古本屋が舞台の暗めな幻想小説かと思ったら、最終的にホラー寄り怪奇譚でした。
    古書収集に取り憑かれてしまう感情とか、本読みには心地よい書香とか、表現として本好きに刺さる要素は多かったですね。
    描写が浮かびやすかったのは帝都脳病院。わかりやすい怖さも面白かった。引き込まれたのはこちらX探偵局。昔の漫画の面白さって確かに今とは違いますね。
    昔の漫画への語りはやたらリアルだったので、作者の実感かなぁと思う。
    全体的に仄暗く、古書と、それを愛する本読み達を美化している感じも伺えて、表現も昭和初期的なので、江戸川乱歩とか好きな人にはオススメかも。

  • 単行本を手に取った瞬間、オッと思います。
    どこかノスタルジックな装幀。全体は薄っぺらいにもかかわらずがっちりした表紙の厚みにも雰囲気が有ります。そしてちょっと変わったフォント。なかなか凝っています。
    「また買ってしまった―。」と古本屋を出た時のつぶやきで始まる6編の短編。ストーリー的にはどこか大正・昭和を思わせる幻想奇譚なのですが、その雰囲気の割にインターネットが出てきたりして時代は新しい。そして最後に物語がぐるり廻って・・・。
    所謂「奇妙な味」に分類される作品ですが、切れ味はイマイチかなぁ、というのが私の感想。でもそれは最初に装填で期待してしまった反作用かもしれません。ぴったり嵌る人には堪らない作品のような気がします。ちょっと変わったB級奇譚をお望みの方に。

  • 「また買ってしまった」はとてもわかるのでそこに惹かれて読んでみたのですが、のんべんだらりとした本編に楽しめずに3話程で切り上げてしまいました。。
    面白そうだったのですが。

  • 結末は幻想的なものになるんやろうな、と思って読み進めると見事!さすがミステリー作家さん!!
    最後の章では、「あっ、そっち!?」となりました。

    物語の導入部分の古本屋に関しての記述が楽しい。
    探書の楽しみでもあり辛いとこあるあるよね。

    一番の好みは「這い寄る影」。

    満足しました。

  • 町の小さな古本屋で見つけた1冊の本、パンフレットから雑誌、上下巻の本まで、名著とは程遠い物を手に入れ、開いたことから、その書物の中に取り込まれていく一人の作家の短編6篇。

    アナクロな雰囲気で、1960年くらいの話かと思いきや、突然ネットオークション等の話が始まる、現代の話である。ただ、全体的に江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズや、桑田次郎の『まぼろし探偵』を意識したような世界観に、取り返しのつかないような絶望的な幕切れに、現代のミステリやホラーにはない、退廃的な空気を感じる。

    6篇のそれぞれが独特の世界観であるが、やはり”ムラ”を感じてしまうのは致し方ないところ。昭和の漫画を解説する部分はややもたつく感じがあり、一方で『時の劇場』のスピード感は魅力的である。

    最後の章はどうなの?という話では有るものの、全体には最近あまり見ないタイプの作品で、満足度は高め。ただ、あとがきはともかく(その時点ですでにやりすぎ)、解説でも同じネタを引っ張るのはどうなんだろうねえ。

  • 酒飲みが読む本という帯に惹かれたのだけど…ちょっと想像してた読後感じゃなかったかな…
    古本屋通いの気持ちは肯定するけど…

  • 楽譜の方を先に読みましたが、あちらは世界各国回って華やかなのに比べて、こちらはちょっとマニアックというか…何か著者の好きなものいっぱい詰め込んだんだろうなあ、というかんじ。
    構成がとても好き。全編最初の文章が同じだったり、最後のまとめ方も好み。
    「人は本のみに人生をささげたりしない」という一文がなぜか気になって、しばらく凝視していた。でもそのすぐ後に、もう物理的に身体をささげていて、なるほど、と思うなど…

  • 古書を買う人々を恐怖の世界に引き摺り込む、奇譚を売る古本屋。
    買ってしまった本にどんどん吸い込まれていくその様子が不気味でした。
    やはり「帝都脳病院入院案内」が一番面白かった。

  • 酒飲み書店員大賞受賞作。酒好き本好きの私は即購入。どうやら本の迷宮に迷い込んでしまったみたいです。

  • 「また買ってしまった」の出だしで始まる古書店で買ったものにまつわる短編6編。

    主人公が話の最後で悲惨な目に遭うものもあるので、これはパラレルワールド?それとも主人公は別人?という謎が生まれるけれど、最後には驚愕の答えが待っている。
    夢か現実か作中のことなのか、曖昧でぼんやりしている。
    あとがきも解説もそれに乗っかっていて、調子がいい。

    ペンタブレットで漫画を描くシーンもあるので、時代は現代なんだろうけれど、作品の中の空気はちょっと古めかしい。
    文章は軽めで読みやすい。

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著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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