雪の鉄樹 (光文社文庫)

  • 光文社 (2016年4月12日発売)
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感想 : 187
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  • 本 ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334772734

感想・レビュー・書評

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  • 本の雑誌「おすすめ文庫2017」第1位

    庭師の雅雪は、20歳の時から
    両親を失った小年、遼平の面倒を見続けていた
    初めて、預かった時にはまだオムツをしていた
    男の子は中学生になっていた

    庭師の男は、なぜここまで献身的なのか
    何を償おうとしているのか
    遼平には、未だ真実を言えないでいた

    読みながら、少年と共に苦しむ
    庭師はなぜそれほど自己犠牲を続けるのか
    許されない罪、終わりのない贖罪
    憎しみに隠れた愛情
    贖罪に伴った悦び
    報われる事はないのかと思われた庭師の献身が
    真実の告白と共に受け入れられていく
    とても素敵な作品でした
    庭師が最後まで過酷すぎるけれど
    人間の渇望、羨望が苦しいほどに描かれます

    • おびのりさん
      へー
      1Qさんって結局夫婦円満なんだね
      へー
      1Qさんって結局夫婦円満なんだね
      2024/12/16
    • ultraman719さん
      なんや!
      一休さん、夫婦円満やん!
      もし、やばい状況なら、子供さんと一緒に来ないよ。
      なんや!
      一休さん、夫婦円満やん!
      もし、やばい状況なら、子供さんと一緒に来ないよ。
      2024/12/16
    • 1Q84O1さん
      おびさん、ultramanさん

      夫婦円満ですよ!
      円満です…
      円満…
      円…
      どーでしょか…(_ _;)
      おびさん、ultramanさん

      夫婦円満ですよ!
      円満です…
      円満…
      円…
      どーでしょか…(_ _;)
      2024/12/16
  • たらしの家系って…
    どんな家系やねん!
    多少、羨ましくもないではないけど^^;
    努力せんと、家系だけでモテるのなら!笑

    主人公の周り、ココロが壊れてる人ばっかり…自身も含めて。
    おじいちゃんなんか、情が分からんって、サイコパスか?
    ある殺人事件(無理心中)が原因で、自身を含め、周りの皆んな崩れていく…

    しかし、凄い空回りというか、12年もの償いは、何やったんやろ…
    自身が起こしたというより、自身も傷を負った1人とも言えるのに。
    自己解釈やけど、償いやないんやろうな。自分の居場所というか、そういうのを求めてやってた気がする。

    事件とか起こす前に防ぐとしたら、あのおじいちゃんを覚醒させんとあかんのやろな。この人が、トリガーになって色んな人の人生が台無しやもん。
    寺で修行するとかして治らんのかな。本人はする気ないけど、周りが何とかしてやらせるしかないんやろうけど…

    光が見えたような終わり方で少し安心やけど、これを起こしたのは、凄い空回りのお陰かも?
    そういう意味やと理由はともあれ、やった事は正解やったんかな。

    自分がこんな環境で育ったら、どうなってるか…


    …キツい…_| ̄|○

    • みんみんさん
      これって途中まで何でこんなに耐え忍んでるの?
      って話だよね?フンが〜って(゚-゚*;)(;*゚-゚)
      これって途中まで何でこんなに耐え忍んでるの?
      って話だよね?フンが〜って(゚-゚*;)(;*゚-゚)
      2024/01/05
    • ultraman719さん
      みんみんさん

      そうです。
      雅雪が、被害を受けた家族に対して、12年もの歳月を耐え忍んでますね。
      何か、空回りしてそうな感じです。
      何か、ず...
      みんみんさん

      そうです。
      雅雪が、被害を受けた家族に対して、12年もの歳月を耐え忍んでますね。
      何か、空回りしてそうな感じです。
      何か、ずっと頭下げて、おばあちゃんが「よし!」って言われるまで、頭上げないとか…

      2024/01/05
    • 1Q84O1さん
      キャラ立ち&設定が凄い!
      要チェックとφ(..)
      キャラ立ち&設定が凄い!
      要チェックとφ(..)
      2024/01/05
  • ★4.5

    祖父と父が日々女を連れ込む、通称・たらしの家で育った庭師の雅雪は、
    二十歳の頃から十三年間、両親のいない少年・遼平の面倒を見続けている。
    遼平の祖母から屈辱的な扱いを受けつつも、
    その傍に居るのは、ある事件の贖罪のためだった。
    雅雪の隠してきた過去に気づいた遼平は、雅雪を怨むようになるが…。
    愛と憎しみの連鎖の果てに、人の再生を描く衝撃作。

    凄い!凄かった。
    愛を知らない雅雪
    どうして…どうしてそこまでするの…?
    読んでて苦しい。
    とても苦しいけど頁を捲る手が止まらなかった。
    最後は涙が零れました。

  • 重い、けどそこが引き込まれる。
    中盤までなぜこんな状況なのかが全く分からず
    読むほどに謎が深まっていくけど
    後半読めば読むほど状況が明らかになって
    苦しいのに読む手が止まらない作品でした。

    雅雪への感じ方は人それぞれだろうなぁ〜

  • 主人公である庭師の雅雪は、ある事件の【償い】のために、両親のいない少年・遼平の面倒を見ている。【償い】の理由を知った遼平は雅雪を恨むようになり・・・

    本屋さんでなんとなく表紙にひかれて手に取った一冊。初めての作家さん。とっても暗くて、読んでいるととっても気持ちが疲れる。

    鍼灸師の原田も言っていたけれど、雅雪は何も悪くない。何も悪くないのに遼平のそばで償いを続けるから遼平も親が殺された事実を忘れられない。遼平の祖母からひどすぎる仕打ちを受けても、遼平から冷たい態度をとられても、遼平のそばで償い続ける。なんでかなあと思うけれど、雅雪の性格なのでしょう。

    誰かと食事ができない雅雪が食器を灰皿代わりにしているのを最低だと指摘されるところ。誰にも教わらなかった雅雪からしたら、なぜそれが最低なのかがわからない。コーヒーの空缶を灰皿代わりにすることと、食後の皿を灰皿代わりにすることの違いがわからない。たしかに、それはとても寂しいことだなと思った。同時に、私も誰かから直接「食器を灰皿にすることは下品だ」と教わったわけではないけれど、それが良くないことだと知っているのはなんでなんだろうと思った。生活するなかで自然と、マナーとか思いやりとか、もっと言うと愛を感じ取っていたのかも。そういうのを感じ取れないまま、教わらないまま大人になってしまう子どももいるんだな、寂しいなと思った。

    雅雪が燃やされるところはすごい。狂気を感じる文章でゾッとした。
    「松葉が降ってくる。でも、やっぱり降るなら雪がいい。舞子は言ってくれた。蘇鉄みたいだ、雪をかぶった蘇鉄のようだ、と。俺は嬉しかった。俺の名前にも雪がある。俺を産んだ女が残した、たったひとつの名残だ」
    雅雪の命名の秘密もつらい。自分の息子が祖父と母に関心を持ってもらえるように、と父親が祈りを込めて名前をつけた。でもそれは叶わなかった。
    最後に少しだけ救いがあるものの、どこまでも切ないつらい話だった。


    「祖父や父のように壊れたまま生きるのはいやだ。吸殻山盛りに疑問を持たないような、汚い生きかたはいやだ。俺は苔庭のように生きたい。濡れたように輝く、清潔な緑の苔だ。」

  • 読後、映画を1本見終わったような迫力のある小説だ。
    半分以上読み進めても、雅雪はなぜ他人の子供の遼平の面倒をせっせとみているのか、その祖母はなぜに雅雪に徹底的に冷たいのか。あと数日で会えるという女は誰なのか…全くわからずもどかしく先に先にと読み進める。

    雅雪に遼平、親方に俊夫、文枝、原田、細木老、舞子と郁也、全ての登場人物の描き方が深い。
    情をかけてもらえず育った雅雪と俊夫、舞子。
    才能を見限られ苦しむ俊夫と郁也。
    それらに巻き込まれ波乱万丈の人生を背負い込む雅雪。
    だが、原田や細木老、そして舞子の存在が彼を救う。

    子供を愛せなかった親がいて、そのためにご飯を人と食べられなくなったことも、楽しい思い出がないことも、お皿を灰皿にしてしまうことも普通のこととして育った雅雪。だが自分を削ってでも貫くその信念は間違ってなかった。ラストのシーンでそれがわかる。

    蘇鉄、割箸鉄砲、竹垣結い、庭師の仕事、会食恐怖症、たらし、釣忍、自分の育て直し…。
    なぜか全て心に残った言葉だ。

    最後に。永井さん、クロマツと蘇鉄のある扇の家を潰さんといて下さい、お願いします。

  • 贖罪、愛憎、光。

    13年前に何があったのか?
    なぜ主人公はそこまでしなければいけなかったのか?
    気になって一気読み。

    自己満足の押し付けの償いであれ、
    遼平がその中でもちゃんと愛を感じ取ることが出来たのなら間違っていなかったんだろう。

    やるせないし、もどかしく思うけど最後まで読み切れて良かった。

  • 号泣(T_T)
    泣けたぁ、、、

    昨年から読んだ本の中では自分的には一番良かったんじゃないかなぁと思える一冊。

    ラストを自宅で読んでいて良かった。

    娘が横に居たが、号泣する私を見て、
    「情緒不安定か!」
    って笑っていた(^_^;)

    いや、良かった。

    こういう人好きだよ。
    ほんと、いい人。

    良かった。ほんと、良かった。


    映画を見ているかのようだった。
    読書している間の素敵な一週間をありがとうございますm(__)m

    • もおりいさん
      気になる一冊。ご紹介ありがとうございます。
      気になる一冊。ご紹介ありがとうございます。
      2018/01/21
    • bmakiさん
      私的には、最近読んだ本の中では一番でした。お気に召されるとよいのですが。。。。
      私的には、最近読んだ本の中では一番でした。お気に召されるとよいのですが。。。。
      2018/01/22
  • ずっと読みたかった本。
    少しずつ語られ明らかになる過去はあまりにも重苦しく、それでも続きが気になり手が止まらない。
    何故?何故そこまでして?と、全てを知りたくなる中毒性も含む、愛を知らない男が人生をかけた壮絶な物語だった。

    絶対的な安心感や安らぎを幼少期から与えられないまま成長し、一般的な常識を知らず、他人との関わり方も知らず、独りで生きてきた男が彼女と出会って惹かれ、「人間にしてもらった」。
    初めて自分を見てくれた。
    初めて関心を持ってもらえた。
    そんな温かい目を向けてもらった事がなかった。

    疎まれ、蔑まれ、好奇の目にさらされながらの13年という年月はあまりにも長い時間であったが、身代わりの贖罪というだけでなく、共に過ごす中で自分をもまた育て直す事が出来た貴重な時間だったのだろう。

  • いったい何がそうさせるのか。
    誰の何をどこまでどう償おうというのか。

    一生懸命な姿というのは、時に周りをいらだたせる。
    鬱陶しい押し付けがましいといわれても、逆なでしても、自らが傷ついてもやめないやめられない雅雪。
    事件だけではない、また彼だけでもない、それぞれの心に蓄積されてきたものが少しずつ明らかになってゆく。
    全容がわかったあとには、疾走感のあるシーンがラストへと導く。

    親方にだって何かがあったのかもしれないな。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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