- Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334772734
感想・レビュー・書評
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久しぶりに重たい物語でした。関西弁が身体にすぐにはいってくる。またこの作家の本を探そう。今年のベストの一冊。
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2018.3.2
「すごい小説だ。」のあとがきに、うん、って。ほんと、「なんなんだ。」っていう感じ。
著者紹介にもあったけど、熱量がすごい。2日にわたって読んだけど、読んでない間もふとした瞬間に物語に引き込まれそうで。読んでる間は、自分の中に情景が映像として浮かんできて、息苦しくなった。
雅雪の孤独、遼平の葛藤、周囲の温かさと厳しさと・・
「みんないろいろある」のはもちろんそう。だけど、決してそういう風にまとめられるような内容じゃなかった。
灰皿のくだりは胸がつまりそうだったし、子育てを楽しかった、自分ができなかったことが経験できたと話す雅雪の言葉には泣いたし、雅雪に頼られて嬉しがる遼平にはもうなんか、言葉が出なかった。
初読みだった遠田さん、他の作品も読んでみたい。 -
なんという重い小説だろうか。ここまで深い小説に出会うことはそうそう無い。『アンチェルの蝶』は傑作ハードボイルドであったが、本作は人間の再生を描いた深い、深い物語であった。
祖父と父親が放蕩の限りを尽くす庭師の家で育った雅雪は理由あって二十歳の時から十三年間にも亘り両親のいない少年・遼平の面倒を見続けていた。
雅雪の隠し続けてきた過去が少しずつ明らかになり、人間同士の愛と憎しみのドラマが描かれていく。
普通の小説に物足りなさを感じている方々に是非とも『アンチェルの蝶』と併せて読んで頂きたいと思う。
解説は北上次郎。 -
全体を通してかなり重い雰囲気の物語でしたが、最後は希望の見える終わり方で少し救われました。親にきちんと愛されることの大切さ、罪を償うとはどういうことかを教えられた気がします。個人的には、原田さんの優しさが胸に沁みました。雅雪の想いが遼平に伝わって良かったなと思います。
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十数年前のある事件をきっかけに、加害者でもないのに被害者の息子を援助するという形で償いを続ける主人公。償い続けるを彼には隠し続けていたが、意図せぬ形で知られてしまう。それにより、改めて昔あったことを主人公は包み隠さず話す。
それほ愛情を受けていたのにそれに応えられなかった者、その陰で愛情をうけられずに自身を消耗させていった者、愛情というものをそもそも知らない者が絡み合った末の残酷な事件だった。
とにかく暗い。そして、愛情を与えられなかったことにより登場人物みんな屈折しているし、その自覚もない。
とくに主人公がひどい。償いの押し付けとしか言いようがなく、自己満足のためにだけ献身する。しかもまだ足りないと思い込む事で自分を卑下し、それに酔う。
最終的には救いがあるのかまさに救い。 -
素晴らしい名作
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読んでしばらくは主人公とその周りの歪で緊迫した人間関係の描写が続く…何が起きたのか微妙に匂わせつつ本の半分を超えるまで引っ張っていく構成と文章力は流石。人間の業ってなんて深いんだろう…と辟易とした気持ちになるのだが、結局みんなそれぞれに傷つき闇を抱えている。懊悩しながら償いをする不器用な主人公、そんな主人公に向かって痛い事でも真っ直ぐ言ってくれる人、怨み憎しみをぶつけていく人の心…等の描写がどれをとっても良かった。読ませる文章ってこういう事を言うのかなあと思ったよ。読み応え抜群です。
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『たらしの家』で育った雅雪。
両親のいない少年・遼平の面倒を見続ける日々。
遼平の祖母からは恨まれ、酷い仕打ちを受けるも
献身的に遼平の面倒を見る。
その裏に隠されているものは…
何が起きてるの?という感覚で
早く読み進めたくなる一冊。
終盤、雅雪が自覚していない感情も次々と出てきて
感動の最後となる。
構成がとても好き。楽しく読めました。
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重たすぎる話だし、悲しい。でも読んでよかったなと思わされる。家族に愛されたいと願いながら、家族だからこそ難しく、鬱屈した感情があるからこそ、他人をも巻き込んで悲劇を生んでしまっている。それでもラストには救いがあった。
受けた仕打ちに、許せない気持ちになるのも理解できるけれど、私は人を許して生きよう。そんな気持ちになった。