許されざるもの (光文社文庫)

著者 : 樋口明雄
  • 光文社 (2016年7月12日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334773151

許されざるもの (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 帯や裏表紙の解説を確かめもせず、最初の頁を開いたとたん、七倉航というなつかしい名前を見つけ、この作品が『約束の地』の続編だと、初めて知った(笑)。
    もちろん、単独で読んでも少しも支障はないと言っていい。
    『約束…』が、七倉の娘が小学校5年の時の出来事であるのに対し、この春中学生になったという説明から、本書はその2年後の話のようだ。
    七倉は、支所長をはずれ一管理官となっており、キャリア丸出しの新支所長が赴任している。さらに、新メンバーとして新人二人が加わる。
    そのうちの一人関千晶は、同著者の別シリーズ「山岳救助隊K-9」で活躍する隊員関真輝雄の妹のようだし、県警航空隊のヘリの操縦士たちがチョイ役で登場するのも、ファンにとっては楽しい。
    今回は、急増する野生動物の被害に対処するために、オオカミを中国から移入し、八ヶ岳に放つという計画の話。
    中国奥地での辛酸をなめる調査活動や移入地の反対派との対立等、計画がどういう決着をつけるのか、息を持つかせぬ展開とともに、ただ頁をめくるだけ・・・

    植物連鎖の頂点に君臨し、自然界で生きる誇り高き存在としてオオカミを描き、農業及び環境破壊を懸念する一方、著者は作中人物に、オオカミ放獣をただセンセーショナルに取り上げるマスコミを批判させる。
    南アルプスの麓で暮らす著者だからこそ書ける山岳冒険小説。

  • 日本の野山にはかつてニホンオオカミが食物連鎖の頂点に君臨し、野生鳥獣の個体数の調整弁を担っていた。そのオオカミが日本人による森林乱開発等が起因で絶滅に至る。その張本人である人間は今度は中国からオオカミを移入し、南アルプスに放獣し、個体数の維持を復活させる一大プロジェクトを企図する。

    はたして、幾多の困難を乗り越え、3頭のオオカミは八ヶ岳に放たれるも…。又しても、そこには肯定派・反対派・地元の政治家・中央官庁、各々のエゴと思惑が渦巻き、オオカミは激しく翻弄され、彼らの虚しき咆哮が八ヶ岳に木霊する。

  • あの大傑作冒険小説『約束の地』の続編であるのだが、読んでみると、全く違う趣の作品であることに驚いた。決して『約束の地』より劣っている訳ではなく、十二分に面白いのだが、明らかに物語の持つ雰囲気が違うのだ。『約束の地』が、ゴツゴツした男の冒険小説なら、本作は女性らしい冒険小説である。

    主人公は前作と同じ野生鳥獣保護管理官の七倉航。野生動物の被害に喘ぐ八ヶ岳で、狂った生態系のバランスを取り戻そうと中国からオオカミを移入し、放獣する計画が持ち上がるが…

    どういう訳か冒頭から登場人物に関わる様々な『死』が影を落とし、不安をかき立てる。読み進むうちにその訳が解るのだが、少なくとも5年前の東日本大震災が作品に大きな影響を与えているのは間違いない。決してあがらうことの出来ない『死』と向き合い、『死』を知るからこそ『生』を大切にし、慈しむ…そんなメッセージが伝わる良い作品だった。

    文庫化にあたり、本編の一年前を描いた『ふたつの心の大きな山~ 一年前』を併録。

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