- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334773618
感想・レビュー・書評
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短編集。
表題作「暗い越流」は、第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
最初と最後が葉村晶シリーズで、中の3話は無関係。
相変わらず、事件に巻き込まれてはボロボロになっていく、王道のハードボイルド。
「道楽者の金庫」では、葉村晶が〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉の書店員に。
探偵に、本の話も加わって、楽しかった。
どれも、人間の欲望や悪意がむき出しで、ダークでビターな話。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
若竹七海『暗い越流』光文社文庫。
女探偵・葉村晶シリーズとノンシリーズのミックス短編集。『蝿男』『暗い越流』『幸せの家』『狂酔』『道楽者の金庫』の5編を収録。
毎度、毎度、葉村晶は変な依頼を受け、痛い目を見るなという印象だけで、それ以上が感想は無く、無味無臭のミステリー短編という感じ。『静かな炎天』が非常に面白かったのは、フロックだったのだろうか。
『蝿男』と『道楽者の金庫』が葉村晶シリーズで、その他はノンシリーズ。また、『暗い越流』は、第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
本体価格 580円。
★★★ -
葉村晶シリーズを読み進める中で、この本も読みました。
この本だけ表紙が違うなぁと思ったら、これだけ出版社が違うのですね。
この本は光文社、その他の葉村晶シリーズは文藝春秋。
あとがきによれは、表題作である「暗い越流」が、文学賞を受賞したものらしい。
暗い越流は、死刑囚に届いた1通のファンレターが発端になり、雑誌記者が差出人を探す…という話。
暗い越流は葉村晶シリーズではなく、葉村晶が登場するのは「蝿男」と「道楽者の金庫」だけだ。
しかしノンシリーズも含めて、全てワクワク、ゾワゾワするおもしろい短編ミステリーだった。
短編であることがむしろ心地よいと思った。
道楽者の金庫では「こけし」が謎解きに一役買っている。
東北の田舎出身の私は、子どもの時から実家にも親戚の家にも必ずこけしがあった。こけしって、不気味だけど、身近な存在でもある。
だから、晶が子ども時代に「こけしは子どものおもちゃみたいなもん」と親戚に言われ、実際にこけしで遊んでいたら「こけしであそぶな!」と怒られたことは笑ってしまった。
最初に本を手に取ってパラパラめくったときに、こけしの絵が現れたときも、思わず笑ってしまった。なにこれ!早く読みたい!と思ったよ。
間取り図面とかが載ってることはあるけど
こけしって。
そんなところからも、ワクワクして読めて、私は楽しかったです。
お話自体は、どれもザラっとした気持ちになる終わり方なんだけど、こけしの登場で途端にユーモラスになったのだ。私だけかな。
なぜこけしにしたんだろう。こけしじゃなくて陶器とか花瓶などの瀬戸物でも良いよね。
そのあたりに、作者のお茶目さ、遊び心を感じたんだけど、考えすぎかな。 -
先月の古本市で見つけた短編集。5編の内、最初と最後が探偵・葉村晶主人公の短編。無茶や横暴とは縁遠く、いたって庶民的で真面目で淡々と仕事をこなす探偵なのにサクッと不運(身体的に痛いやつ)に見舞われるけど、冷静な洞察力により解決。タフさを売りにしないところもやっぱ好きだわぁと思った。しかし大量のこけしの設定には笑ってしまった。表題作は流れが全て暗い展開に繋がっていて行き着く先も暗く重い。葉村晶シリーズ以外の他の2編も後味悪い系。イヤミスではないけど。
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若竹七海さんを代表する探偵「葉村晶」が主人公を務める2編と、ノンシリーズの3編が収録されています。シリーズものならではの面白さと、ノンシリーズならではの面白さが感じられるミステリ短編集でした。
最初に収録されている「蠅男」と最後に収録されている「道楽者の金庫」が、葉村晶の登場する作品。
アラフォー、独身、彼氏なし、かつ不幸体質だという葉村晶。葉村晶シリーズを読むのは初めてでしたが、青春ミステリやライトミステリの探偵たちのような、甘酸っぱさや初々しさ、特異なキャラづけとは無縁。
なんとなく地味で、そしてこの年代ならでは……と書いてしまっていいかどうかあれだけど、気怠さというか、めんどくさそうというか、どこか諦観を交えつつ、依頼者や状況に振り回されていく語り口が、なんとも可笑しかった。
事件自体も入りからして珍しい。「蠅男」は母親の遺骨を運んでほしいという依頼。そして「道楽者の金庫」はこけしに隠されている、金庫を開けるカギの話。奇妙な依頼から、予期せぬ展開にキレイに流れ込んでいく。どちらも巧さが光る作品です。
対してのノンシリーズの3編も負けず劣らず技巧が光る。日本推理作家協会賞を受賞した、死刑囚に届いたファンレターの真意を探っていく短編「暗い越流」
行方不明になった雑誌編集長を探す「幸せの家」
教会に立て籠もった男の独白で綴られる「狂酔」
いずれも思いもよらない展開に引っ張られていって、その巧さに思わず唸ってしまう。そして、最後の最後に思わぬところから、ボディに重たい一撃を喰らわせてくるような、後味の悪さを残していくところが、これもまたたまらない……
イヤミス3編を、シリーズもの2編でサンドイッチされているので、最終的な読後感はややマイルドに収まっているのが、個人的に優しい構成だと思いました。
イヤミスの後味の悪さを楽しみつつ、シリーズものの安定した書きっぷりや、乾いたユーモアも楽しみつつ、そしていずれの短編もミステリの技巧にうならされる。若竹七海さんは初読でしたが、この一冊でそうした二面性と、ミステリ作家としての確かな実力を感じました。
第66回日本推理作家協会賞〈短編部門〉 -
以前、単行本で読んだ。
やっぱ面白い!
単行本を読んだ時は「幸せの家」が印象に残ったようだが(以前の感想による)、今回はやはり葉村晶ものが良かった。
最終話「道楽者の金庫」、ここからマーダー・ベアー・ブックショップとの縁が始まっていた。葉村晶、やはりキレッキレだ。満身創痍だけど。
巻末の、近藤史恵さんの解説も良かった。
「船上にて」「海神の晩餐」「名探偵は密航中」「火天風神」読んでみたい。
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短編集。全部葉村晶ものかと思って読んだら、あれれ?となり、よく見たら三編は葉村ものでなく、それでも不気味なイヤミスでした。葉村もの二作目で、やっとあの古本屋が登場します!
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表題作の浮かび上がった事件と、そこから繋がってしまった悪意のどん詰まり感にゾワゾワする。
最後の頁の怖さは「幸せの家」「狂酔」も、それぞれ自分の想像力でダメージを受ける。
人の、感情は、蔑ろにしてはいけない。
「蝿男」「道楽者の金庫」は葉村晶シリーズ。
他三編と同じくゾワゾワするような怖さもあるけど、葉村の不運エピソードが毎度ながら痛そう・キツそう極まって、事件の惨さが中和されてる(気がする)。『悪いうさぎ』でのトラウマ・トラブルもまだ残ってた。ハードボイルドじゃなくてハードモード。 -
女探偵 葉村晶が2話含まれる短編集
プロトタイプかな?
お尻で腐乱死体を踏んづけたり、探偵社が閉鎖して古本屋を事務所にする元ネタが見られます
渋いハードボイルド交じりのミステリ本