神の子(下) (光文社文庫 や 34-2)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334773922

感想・レビュー・書評

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  • 勢いに乗った物語もいよいよ終盤へ!
    主要人物は上巻でほぼ登場しているが、町田に執着する闇の組織トップの思惑が明らかになる。そしてその歪んだ考えに奔走させられた人々のそれぞれの想いや行動、結末が切ない。後半は町田の周辺にも実際に異変が起きてくる。

    他人に全く興味のなかった町田が厳しい状況に立たされながらも、しぶとく自分と向き合ってくれる仲間のことを考え行動していく変化や仲間とのやり取りに心温まる。
    不器用なのは付き合い方を知らなかっただけ。町田を信じて向き合い続けてくれた仲間への想いは表現が下手なだけで人一倍強いと感じた。

    闇の組織とのクライマックスはあっさりだけど、この物語自体が事件の真相や解決ではなく「人の想い」や「仲間」等の人の心に重きを置いてる作品だと思う。
    最後のエピローグが特に感動。読み終わってほっこり。

  • 一つの作品に収めてしまったら、もったいないような様々なモチーフが溢れている。
    IQ161以上の頭脳を持った少年が振込み詐欺グループで働く悪漢小説、少年が更生を目指す少年院物語、元教官が少年の謎を追う探偵小説、学生たちによる起業をテーマにした経済小説、彼を慕う寄宿先の娘を描く恋愛小説等々。
    それぞれの主題で、いくつもの作品ができるかも。
    それでも、これらを総合的に一つの作品で堪能できる読者の贅沢を、著者に感謝しなければ。
    欲を言えば、終局の対決の場面は何とも物足りないかな、との感が残った。組織が繰り出す、それまでの大掛かりな仕掛けが印象にあるから、さらなる波乱を期待したのだが。

  • 薬丸岳『神の子(下)』光文社文庫。いよいよ物語の全貌が見えるであろう下巻への突入。物語は町田、雨宮、室井、為井、内藤を中心に展開し、いよいよ核心へと迫る。登場人物同士の意外な関係と二転三転する展開、そして『神の子』の正体が見えてくる…しかし、最後まで室井の野望を引っ張った割りには意外にあっさりとした結末だった。そのためにストーリーの印象が希薄になり、結局は町田博史の悲惨な生い立ちと恐るべき頭脳、心の本質が物語の全てだったのだという印象が残ってしまう。そこが不満と言えば不満なのだが、全編を通じては、これまでの薬丸岳の作品の全てを凝縮したような面白い作品だった。北上次郎が解説の中で『友罪』が薬丸岳のターニング・ポイントであったと述べているが、個人的には『逃走』から薬丸岳の作品が明らかに変わって来ているように思う。特に『逃走』の場合、賛否両論があった単行本と大幅に加筆・修正を加えた文庫本とでは全く違う作品に仕上げられており、これが薬丸岳の作品の方向性を決めたのでは推測している。

  • 一気読みでした。途中て読むのを止めた日には、気になって何も出来なくなる!と言うぐらい、一気に読みました。 この本では、仲間がテーマになっているのかなぁと思いました。 町田は、人に対して不器用だし、言葉も一言足りなかったり、勘違いされたりしますが、ちゃんと、自分が関わってきた人達のことは気にしていて、不器用で相手に勘違いされそうになったりするけど、きちんと向き合っている。 町田のそういう思いや行動で、人が集まってきたのかなと思います。 人は変われます。そう思った1冊でした。

    • taro & kotetsuさん
      薬丸岳もかなりいいですね。夏目刑事のシリーズが好きです。
      薬丸岳もかなりいいですね。夏目刑事のシリーズが好きです。
      2020/09/11
    • トッチさん
      実は、夏目刑事シリーズ気になってました。今度読んでみます。
      実は、夏目刑事シリーズ気になってました。今度読んでみます。
      2020/09/12
  • 連続ドラマになりそう。
    上下巻あわせて1116ページ。
    やはり少年ものなら薬丸岳さんだ。
    未成年は未熟だから一度は悪いことをしてしまうが、人生において何度でもやり直しはきく、がんばれ、という応援歌を送る作家さん。

    町田博史は戸籍をもっていなかった。育児放棄され、愛情を知らないまま成長し、14歳で家出した。あるのは類稀なる知能指数だけ。反社の片腕を担いでいたが、……。

    繰り返し前のストーリーに言及し丁寧に書かれているので、「あれ、これはどんな事情だっけ?」と前のページに戻ることなく読み進められる。じわるユーモアも散りばめられている。最後の方で、クールな主人公が読んでいる本に笑った。

  • 天才的なIQで詐欺に手を染めていた町田博史。
    町工場を経営する母娘の元での同居生活、そして大学生活。知り合った学生たちとの企業。全てはうまくいくかのように見えたのだが、町田に執着する室井はじわじわと町田を追い込んでいき…

    愛するものを奪われる苦しみが一番こたえる…
    じわじわ追い詰めていくのよ~室井さんってば。

    で、まさかこの人も?あの人も?室井さんの手先!?
    いや~!!もう誰を信じてよいやら…
    でもって町田の周囲の人たちが苦境に…
    「コイツと関わると不幸になるぞ~」
    な、イヤ~な感じの呪い的な陥れ方が怖い~

    で、ついに町田と室井の対決なんだけど…
    あれま!!
    あっさりしてて拍子抜けしちゃった

    もっとこう~バチバチにやり合ってくれるかと思った~
    ドカ~ン!バンバン!ドギャ~ン!てな感じ?
    しゅるしゅる~って感じだったな~。
    そこが残念!

  • ちょっと残念
    上巻の盛り上がりに対して下巻の最後がなんともいまいち
    陰謀もの?
    テーマは「仲間」かな

    そして下巻です
    いよいよ新しい会社が立ち上がります。
    順風満帆な会社経営、会社はどんどん大きくなります。

    一方で、両腕を失った磯貝も町田が作成した義手を手に新たな人生を歩み始めます。

    そして、雨宮は同じホームレス仲間と一緒に稔を探し続け、その中で室井の組織が徐々に明らかになります
    さらに、少年院の教官だった内藤も町田の背景にある事件の全貌、室井の陰を追い始めます。

    室井がやろうとしていることは何なのか?

    そんな中、前原製作所の工場が焼失
    さらに会社では健康被害が発生、そして、会社の重役たち中心メンバも謎の失踪
    会社経営が困難な状況になっていきます。

    すべて室井の差し金なのか?
    明らかになる室井の真意
    そこにあったのは...

    といった展開なのですが、この最後がとても納得がいきません。
    陰謀ものでスケールも大きくて、これはすごいって前半はワクワク読んだものの、下巻の最後のまとめは正直しょぼい。

    一人で生きてきた町田の変わる姿を描きたかったのだと思いますが、ちょっと後半残念な感じでした。

    上下巻合わせてボリューム満点の物語
    詰め込みすぎなのかも(笑)

  • ラストに寂寥感を覚えるのは私だけだろうか?

  • 少年院を出所後、大学に進み
    そこでの仲間たちと起業した主人公、町田

    彼にあくまでも固執する、裏社会のドン、ムロイ。

    彼の周りに次々と起こる不幸とは

    結末はあっけなかったけど、ぐいぐい引き込まれて読んじゃいました。

  • とにかく薬丸さんは儚さと切なさとが絶妙...待ってたこのタイプって感じ、堪らん。
    最後は良かったなあ、とも思いつつ、個人的には最後に笑っても、どこか奥には絶対に消えない孤独があるようにも感じられて、その感じがまた堪らんなあ、と(完全な個人的見解)。切ない、最高。それでもやっぱ、後半の町田に惚れました、あざす。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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