絶叫 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (613ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334774509

感想・レビュー・書評

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  • 葉真中顕『絶叫』光文社文庫。

    終盤でタイトルの『絶叫』の意味を知る時、何とも言えない恐ろしさを感じる。物語の雰囲気は山田宗樹の『嫌われ松子の一生』にも似ているし、真梨幸子の一連のイヤミスとも似ている。デビュー作の『ロスト・ケア』も現代社会の歪みを描いた傑作であったが、本作もまた非常に面白い力作だった。

    物語はいきなり主人公の鈴木陽子がマンションで孤独死体となって発見されるところから始まる。刑事の綾乃は鈴木陽子の波乱に満ちた人生を辿る。

    現代社会の深い闇が次々とリアルに描かれ、そら恐ろしさと、何とも言えない哀しさとに孤独感を感じる。

  • おもしろかった!最後の3行で「えーっ!」と声が出てしまった。
    しかし、本当ならごく普通の女性、普通の一家だったはず…自分は幸いにもこういった人生ではないが、同じ立場だったらやはり転落して行っただろう。
    へその緒に、書かれた言葉が悲しかった。読んでる時はすっかり騙されたが、本物だったらよかったのにと思わずにおれなかった。
    さて、もう1人の語り手の女性刑事も、うまく娘を愛せない過去があったが、その娘も陽子のように母から愛されなかったトラウマを抱えたまま生きていくことになるのだろうか。父とその両親がまともそうなので、こんなに転落することはないと思うけど、刑事というしっかりとした職業であり、将来はちゃんと年金がもらえるので妙子のように生活保護なんてことにはならないだろうが、将来老いた刑事が娘に復讐されないといいなと思った。
    最終章、「家に帰るの?」と嬉しそうだった妙子。自分の居場所を求め続けていたんだろうか。

  • 書店で平積みにされていた本を何気なく購入して読んだのですが、意外や意外!(すみません、こういう本の選び方をして失敗も多いものですから)すごく読み応えがあって、面白かったです!

    語り手の主語の違いで、誰のことなのかがすぐにわかるし、犯罪の起こった理由などが読み進めるに従ってわかっていく部分が、怖かったけどいちいち納得がいき(エグいんだけど)順調に読み進めることができました。

    すっごいなあ・・
    ネタバレしたくないのでこの辺にしときます!面白かった!

  • 鈴木陽子の壮絶な人生…どこまで行っても闇は深まる…最初から最後までたった一筋の光すら見えなかった…。
    いや…最後に母が叫んだ言葉、陽子が叫んだ言葉はもしかしたら微かに見えた一筋の光だったのかな?
    彼女を支えたのは孤独の中に芽生えた、生きて戦うことへの執念…自ら選んだ生への執念は凄まじい!

    著者、初読み!単行本で出た時から気になる作家さんでしたが想像以上の読み応え!
    600ページの圧巻でしたが、同じ女性として、生きる事の難しさにずっと苦しみながらの読破でした^^;

  • 登場人物である陽子の壮絶な人生に加え、予想できなかった結末、そしてしっかりとオチがあり、読み終わった後になんとも言えない高揚感がありました。
    同じく読んだ友人は、私が感動したオチに気づかずに読んでおり、読み手によっては感じ方が変わる可能性のある本なのかもしれません。
    (ちなみに、私含め4人読んだうち、2人がオチに気づいていませんでした)
    誰でもわかるようなわかりやすいオチよりも、ほんの少し想像力を働かせることで気づけるオチ、の方が個人的には読みがいがあり、私史上過去最高の小説だと感じた傑作でした!!!

  • 一人の女性の壮絶な人生…って感じでした。
    飽きずに一気読み出来るくらいすごく読みやすかったです。
    ただ淡々としていて、ドキドキしたり先が気になる!とはならなかったかな。
    ところどころの弟の幽霊とのやり取りが、なんか私も人間とか人生とか、生涯について考えさせられちゃいました(笑)

    父親は仕事人、母親は弟に全ての愛情を注ぐ。そんな家庭で育ち、弟が自殺し、父は借金を作り家出。母からは愛を貰えないまま決別。保険会社に入社し、上司に洗脳されて体を使って契約を取る始末。買い物依存症、借金は膨れ上がり、風俗嬢に。元ホストのDV男をヒモに飼うなかでデリヘル狩りにあい殺人未遂、レイプ。そして犯罪者のグループに加入し、保険金殺人。最後は親玉を殺して、デリヘル仲間を自殺にみたてて殺し、自分はそのデリヘル仲間と入れ替わる。
    東野圭吾の幻夜を思わせるオチでした。最後は生きよう、幸せになろうっていう強い意思を感じたので良かったかな…とは思いますが…壮絶。

    家族の愛を受けないで育つと、やっぱり大人になってからも他人からの愛を強く求めちゃうんだな~
    ってことと、お金って大切だなあってことをしみじみ思いました。

    面白かった!

  • 宮部さん、火車のダーク版?うまい、面白い。けどここまで考えれる主人公ならもっと違う生き方が現実ならあるかなと。

  • マンションで飼い猫たちに喰い荒らされた孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。
    刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどに、その壮絶な半生を知る。
    平凡な人生を送るはずが、弟の自殺に父の失踪による一家離散、ブラック企業、そしてより深い闇の世界への転落……
    一方、陽子の死亡と同時期に、生活保護者を食い物にしていたNPO団体の代表・神代が殺された━
    通報した女性は行方をくらませていた。
    ふたつの事件が繋がりを見せたとき、その裏で進行していたのは…
    辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!?


    全ては自然現象

    確かに、生まれる先の家や両親、時代は選べないけど。
    でもここまでの転落は本人の選択のまずさも少し関わってると思う-
    何故にハローワークの前まで行っておいて、その入口で待ち構えてる生保レディに釣られるのか。
    何故にリボ払いで借金膨らませるのか。
    そこで振り払えば良かったのに仕送りするのか。
    夜の仕事に就いてもホストに貢いでヒモにしちゃうのか。
    ありがちなんだろうけど、だからこそほんの少し違う行動していたら回避できたんじゃないかと思うと…
    (それじゃ物語にならないけど)


    夜店で金魚くれたのは神代なの?
    同じ台詞だし、邂逅していたってことだよね。

    こいつ怪しい…と思ったら。
    やっぱり地元実家(跡)に戻っちゃうのね…
    そしてその歳でMs.でもマダムでもなくミス・バイオレットって…

    母からの呪いを解いて「産んでくれてありがとう生きていくよ」って言えたのは良かったのでしょうね。

  • 死体で発見された鈴木陽子と捜査を担当する刑事・奥貫綾乃のW主人公を通じ物語は進む。歯車のズレで誰もが陽子になり得る現代社会の閉塞感を痛感する。それでも人生をサヴァイブする陽子の生き様は壮絶だ。どこか対比的に描かれる綾乃は完璧主義に苦しみ、やがて陽子に尊敬に似た念を抱く。陽子が母の呪いと戦い続けた様に、彼女もその呪いに苦しんだのではないか。「自分の人生を生きる」のは恐らくそんなに簡単でないと思い知る。

  • お、お、面白かった!!
    構成やストーリーは飽きさせず一気に読まずにはいられない展開はさることながら、同性として登場人物の生き方に、「もしも自分だったら」や「それはだめだよ〜」とつっこんだりと、読んでても読んでない時でも深く考えさせられた。
    そして最後まで読んで初めてタイトルと、「ー陽子、」と始まる段落が示す意味を理解し、より著書がおもしろいと感じた。全ては妙子を殺す時に走馬灯のように思い出したんだな、と。本当に生まれかわる瞬間、陽子であることが最後になる瞬間の話だったのかな、と。
    もしもミス・バイオレットが橘すみれだった場合(少なくとも私はそうだと感じている)、自分の居場所ではないと言っていたのに帰ってきてお店を開いているのは、過去の自分や家族への当てつけなのかな。居場所を与えてもらえなかった代わりに自分が作ってあげる。陽子への弔いなのでは、と。
    その他にも警察官の綾乃との対照的な所とか、陽子と少し深く関わった人の顛末とか、そこにも色んな考察ができそうで、当分はこの著書の虜になりそう。

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プロフィール

1976年東京都生まれ。2009年、児童向け小説『ライバル』で角川学芸児童文学賞優秀賞受賞。2011年より「週刊少年サンデー」連載漫画『犬部!ボクらのしっぽ戦記』にてシナリオ協力。2012年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、ミステリー作家としてデビュー。『絶叫』が第36回、『コクーン』が第38回吉川英治文学新人賞候補となる。

「2018年 『ブラック・ドッグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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