晴れたらいいね (光文社文庫)

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  • 光文社
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本棚登録 : 60
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334774950

感想・レビュー・書評

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  • 夜勤中に地震が起こり、気づいたら1944年のマニラにいた紗穂。しかも、自分のことを皆が「雪野」と呼ぶ。それは、直前に介護していた老女の名前だった!

    というタイムスリップものです。

    反戦小説とはいうものの、ティーン向けのかなりライトな感じです。

    以下ネタバレ含みます。

    タイムスリップしたからと言って、さほど現代の医学が活かされるわけではなく、むしろ「平成」という時代の「平和」と「平等」が異質なものとして語られる。
    私たちにとってのその人権とかその感覚こそが糧として紗穂を支え、当時の人たちを勇気づけるというまぁちょっとあれですが、このくらいはよいかと。

    最後がちょっとバタバタで気になりました。

    元に戻った雪野のことをみんなどうおもったんだろうか、とか。

  • この著者の作品は初めて読む。
    先日、ノンフィクションの『ポツダム看護婦』(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B074CGPH1J?ref_=dbs_r_series&storeType=ebooks)をよんでいて、その流れで引っかかってでてきたものだと思う。

    現代日本で看護師をしている女性が、高齢の女性患者を看ていると、彼女の青春時代--太平洋戦争末期の昭和19年、しかもフィリピン・マニラに飛んでしまう。
    ラノベ界では異世界転生、転移モノが長く大流行りだけれど、戦争モノを描く際にも実はこの転移設定、よく見かける手法だ。
    そう、それくらい、現代からみたら、70余年前はもう”異世界”であり、非現実なのだ。その時代を生きた人々はまだご健在で、歴史と呼ぶには近く、かといって昨日のこととは呼べない、過去である。

    転移してしまった看護師の紗穂は、漫画の仁先生のように、新しい医療知識で人々を救うわけではない。
    この時代の人々と、今の我々に決定的に違うのは、ものの考え方の自由さである。紗穂は、唯一知っている歴史的事実、8月15日に戦争が終わること、この時代では許されない、というより自然発生しないはずの考え方、「その日までを生き抜く」という意思をもって、仲間たちと生きていく。

    ノンフィクションではないため、少し浅いなと思われる個所も何か所かあったし、なぜ紗穂が無関係の老女の過去に飛んでしまったのか、そして彼女が転移してしまった事実はきちっと未来まで残っていたわけで、仲間たちはどう思って平成時代を迎え、『晴れたらいいね』を聴いたのか…なんて気になる部分も多数。紗穂が戻る部分前後が最も過酷だったはずで、どうやって日本にゴールしたのか、も気になる。。。
    戦地の看護を描いていながら、表現もライトで戦争モノをあまり読まない人にとっては導入としていいのかな。私としては物足りない、言いたいことがあまり明確でない感じを感じた。

  •  戦争小説と聞くと、なかなか手を出しにくい人も多いかな、と思います。でも、この小説はとっつきやすい。その理由は文章の読みやすさはもちろんですが、登場人物たちの個性が豊かなことが特に大きいと思います。

     主人公で戦時下のマニラにタイムスリップしてしまう紗穂はもちろんですが、タイムスリップした先での同僚たちもいいキャラが多い! ちなみに僕の個人的な推しは民子さん。常に皮肉でマイペースな姿勢を崩さず、主人公だけでなく軍の上層部にもそれは変わりません。看護婦になった経緯もいろいろあるみたいで、彼女が主人公のスピンオフも読んでみたい、と思いました。

    看護婦さんが主人公ということで、この小説には医療小説の側面もあります。敵の命を奪う戦争で、場合によっては敵になりうる外国人を救わなければならない場合もあります。作中でそうした場面もあるのですが、ここの書き方はカッコいいの一言につきます。医療小説はこうこないとね。

     一方で戦争のシリアスさも描かれます。備品や薬剤、食料の不足、助かる見込みのない兵士たちへの対応、さらに終盤は兵士と同じような密林の行進を迫られます。従軍看護婦といっても、後方での治療がメインだろ、などと思っていたので、この過酷さは意外であるとともに驚きでした。

     でも何と言っても驚きだったのは、彼女たちのほとんどは、軍の病院に所属しているなど仕事のため、あるいは志願してきたわけではなく、国から召集されてきたということ。

     この小説では描かれていませんが、きっと戦地で亡くなった看護婦さんもいるのでしょう。あるいは帰っても、家族が亡くなっていた場合も… 

     主人公は日本軍の「捕虜になるくらいなら自決をせよ」という考えを真っ向から否定します。それはもちろん、この考え自体のバカバカしさもありますが、それぞれに帰る場所があるということを、考えていたからだと思います。

     兵士を主人公とした戦争小説とは、また違った視点から戦争を考えました。

  • 気がつくとそこは2015年の日本ではなく1944年のマニラだった。看護師の紗穂は従軍看護婦として、持ち前の明るさで数々の理不尽に抗いながら過酷な日々を駆け抜ける。かけがえのない青春が紡ぐ感動作。
    同じ人間として生まれても、時代や周囲の環境でその人の価値観は全く異なってくるが、戦争なんて理不尽極まりないものの為に、命を懸けることなんかしたくないのは皆同じなのではないだろうか。紗穂の「誰が始めたかわからない、誰のためなのかもわからない、こんな戦争なんかで死にたくないんです」という言葉に胸を打たれた。

  • この前一緒に藻岩山に登った親友から帰りがけにプレゼント!っていただいた本。過酷な話なのに不思議と爽やかで元気が出る。ドリカムの晴れたらいいねの歌が出てくるシーン、地下鉄だったのに泣けてきて困りました。娘にも読んでもらおう。

  • 最近多いタイムスリップもの。終戦記念日が近いこの時期にはいい作品。当時、女性もまた苦難を強いられていたのだ。先人たちの苦労を想像することは有意義だと思う、
    あらすじ(背表紙より)
    夜勤中に地震に見舞われ意識を失った看護師の紗穂。気がつくとそこは一九四四年のマニラで、さっきまで病室にいた老女の若き日の姿になっていた!困惑を抱えたまま、従軍看護婦として戦争に巻き込まれる紗穂。それでも、持ち前の明るさで数々の理不尽に抗いながら、過酷な日々を駆け抜けていく。反戦の意志と、命を背負った女たちのかけがえのない青春が紡ぐ圧倒的感動作。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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