晴れたらいいね (光文社文庫 ふ 23-4)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334774950

感想・レビュー・書評

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  • タイムスリップ物語と思っていたが、反戦物語であった。戦時中の悲惨な話はいくつか読んだが、現代に生きる私達が全く異なる価値観で教育を受けた時代にタイムスリップしたなら思いを伝え正しいと思う行動が出来るのだろうか?結局は我が身を守るために滅多な事は言えなかったと思う。この平和の時代でさえまだまだ多くの課題が山積みの社会で暮らしている。それでも平和な世の中であれば何らかの灯りは見える。世界を見渡せば近頃もきな臭い話が余りに多い。過去の戦争を反省する事が出来ない人間は、未来永劫戦争を繰り返すのかと思うと空恐ろしくなる。リーダーの資質の低下か?
    ただ、どんな時代でも歌は弱った心を元気付け、時には慰めてくれるものかもしれないなと思った。ドリカムか~。私には思いつかなかったなあ!

    • さてさてさん
      秋桜さん、私もこの作品読みましたが、書名からは全く思いつかないその内容にとても心を打たれました。おっしゃる通り、いつの時代も、今も、きな臭い...
      秋桜さん、私もこの作品読みましたが、書名からは全く思いつかないその内容にとても心を打たれました。おっしゃる通り、いつの時代も、今も、きな臭い空気感に包まれた世界、私たちのこの国の今だって思い返せば、ほんのつかの間の戦争のない時代だったと歴史に記録される可能性だって十二分にあるように思います。この作品で描かれたこと、描かれた世界をきちんと目を逸らさないで見つめたい、噛み締めたい、そう思いました。
      とても良い作品だったと思います。
      そして、藤岡陽子さん、私にとっては直球ど真ん中の球を投げる作家さんだと感じています。まだ三冊しか読んでいませんが、どんどん読んでいきたいと思っています。
      2022/10/23
  • 夜勤中に起こった地震で気を失った紗穂が目を覚ますと、そこは1944年のマニラで、雪野サエという人の中に入り込んでいたというタイムスリップ物語。
    1944年のマニラというと、そう、雪野サエは従軍看護婦で・・・という戦争の物語。

    「手のひらの音符」が素晴らしかったので、それと比較すると少し、残念な感じではあった。サエに入り込んでしまって、サエとして生きていくことを決意する(せざるを得ない)紗穂の感情の部分や、親友のサエが今までとは別人になっていると気づいた美津の感情の部分が伝わってきづらく、少し読者側の感情が置き去りにされているような感じがあった。
    それでも、戦況を考えると感情云々の前に生き延びないといけない、という状況だったのだろうとも思う。
    紗穂の「生き延びる」という決意と、それを上官や周りの仲間に堂々と発言する姿勢に、「よし、よく言った!」と清々する気持ちになった。戦後に生まれ、戦争の悲惨さを知り、二度と戦争を起こしてはいけないとわかっている現代からの使者、紗穂だからこそできる発言、姿勢。
    どこかで聞いたことのあるような、と思うタイトルは、予想通りあの有名な歌からだった。

    少し紗穂の感情に追いつけないところはあったものの、反戦小説として素晴らしかった。

  • 文庫で読む 医療小説
    「晴れたらいいね」 藤岡陽子著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/293888

    書評『晴れたらいいね』藤岡陽子著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2015072900100.html

    晴れたらいいね 藤岡陽子 | 光文社文庫 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334774950

  • 24歳の看護師が、95歳の患者の24歳だった時にタイムスリップして、1944年から1945年の1年間をフィリピンに派遣された従軍看護婦として過ごす。

    悲惨な体験をした従軍看護婦の物語を描くこともできただろう。しかしその時代の教育を受けていない主人公の、命に対する考え方の違いや、軍歌ではなく「晴れたらいいね」を歌わせるために必要だった設定。

    この時代からすれば、今の普通がユートピアに見えるかもしれないけど、貧困も差別もあるのよ、とちゃんと言わしている。
    皆が生き延びたことが描かれたラストが良かった。

    ウクライナの人たちも死なないで欲しい。

  •  戦争小説と聞くと、なかなか手を出しにくい人も多いかな、と思います。でも、この小説はとっつきやすい。その理由は文章の読みやすさはもちろんですが、登場人物たちの個性が豊かなことが特に大きいと思います。

     主人公で戦時下のマニラにタイムスリップしてしまう紗穂はもちろんですが、タイムスリップした先での同僚たちもいいキャラが多い! ちなみに僕の個人的な推しは民子さん。常に皮肉でマイペースな姿勢を崩さず、主人公だけでなく軍の上層部にもそれは変わりません。看護婦になった経緯もいろいろあるみたいで、彼女が主人公のスピンオフも読んでみたい、と思いました。

    看護婦さんが主人公ということで、この小説には医療小説の側面もあります。敵の命を奪う戦争で、場合によっては敵になりうる外国人を救わなければならない場合もあります。作中でそうした場面もあるのですが、ここの書き方はカッコいいの一言につきます。医療小説はこうこないとね。

     一方で戦争のシリアスさも描かれます。備品や薬剤、食料の不足、助かる見込みのない兵士たちへの対応、さらに終盤は兵士と同じような密林の行進を迫られます。従軍看護婦といっても、後方での治療がメインだろ、などと思っていたので、この過酷さは意外であるとともに驚きでした。

     でも何と言っても驚きだったのは、彼女たちのほとんどは、軍の病院に所属しているなど仕事のため、あるいは志願してきたわけではなく、国から召集されてきたということ。

     この小説では描かれていませんが、きっと戦地で亡くなった看護婦さんもいるのでしょう。あるいは帰っても、家族が亡くなっていた場合も… 

     主人公は日本軍の「捕虜になるくらいなら自決をせよ」という考えを真っ向から否定します。それはもちろん、この考え自体のバカバカしさもありますが、それぞれに帰る場所があるということを、考えていたからだと思います。

     兵士を主人公とした戦争小説とは、また違った視点から戦争を考えました。

  • 看護師の沙穂が夜勤中に地震に見舞われ、気付くと戦時中のマニラで、従軍看護師であるサエという女性になっていた、、ていう始まりで割りと気楽に読み進んでいたんだけれど、途中からがっつり戦争のお話。

    従軍看護師の部分は結構細かい事まで書いてあって、赤紙で召集されたのは男性って思ってたけど、こういう形で戦地で働いてた女性もいたことを改めて考えさせられた。

    ただ全体を通して見ると、タイムトリップ、入れ替わり、そしてドリカムで。なんだか頭ん中でうまく混ざり合わなかった感あり。

  • 藤岡陽子さんの作品を初めて読見ました。
    タイムスリップの物語だとは思いませんでしたが引き込まれてしまいました。
    良い作品です。
    藤岡陽子さんにハマってしまいました。

  • 子ども向けかと思うようなスタートでしたが、途中からは涙が止まりませんでした。やっぱり良い人がたくさん登場して、悲惨な状況の中でも深刻なトーン一色にはならず、前向きなエネルギーが途切れることのない感動的なストーリーでした。
    この本は日本人から見た戦争の話ですが、以前マニラに行った際に現地の方から聞いた話しを思い出しました。「フィリピンはスペイン、アメリカ、日本と3回外国に支配されたが、スペインはキリスト教を、アメリカは英語を残してくれた。日本は…」とても恥ずかしい思いをしました。
    戦争大好きな極右政党自民党の皆さんはこの本を読んだらどんな感想を持つのでしょう。安倍晋三さんも高市早苗さんも自分に命の危険が及びようなことはないでしょうし、子供もいないので最前線の兵隊の命なんて考えたこともないのでしょうね。

  • 看護師の紗穂は夜間見回り中に大きな地震に襲われ、見回り中の部屋にいた患者の雪野サエとなって1944年のフィリピンへとタイムスリップする。
    日赤の従軍看護婦として、友人の美津に助けられて過酷な日々を生きていくことになる紗穂。
    間もなく終戦がやって来る。それまでは何としても生き抜いて日本へ帰るのだと言う強い気持ち。

    タイトルの「晴れたらいいね」はドリカムの歌らしい。山中を歩いている時に紗穂が歌ったこの歌が、仲間たちの励みになった。
    友人の美津の日記の最後のページに書かれていたのは
    「わたしたちの未来は、晴れたらいいね」

  • 看護師の紗穂は大きな地震で気を失い、目が覚めると1944年のマニラで従軍看護婦・雪野サエになっていた!戦争を知らない世代の目線から描かれた戦争体験は、現代の中高生の感覚と近く共感しながら読めるのではないでしょうか。文庫本も出ました。映画化希望のおすすめ作品です。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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