神さまたちの遊ぶ庭 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
4.38
  • (75)
  • (49)
  • (19)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 629
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334775056

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 単行本のときから読みたいなーと思っていたんだけど文庫になったのでさっそく。(わりに文章は少ない印象なので文庫で買ってよかったかも。ケチで申しわけない。内容はとてもよかったけど)
    宮下奈都さん一家が、1年間、北海道のものすごい山奥で暮らしたのを日記風に書いたエッセイ。楽しく読んだ。なんか癒されたような気すらする。
    エッセイマンガを読むような感じ。文章は短くてざっくりした感じで、オチというか笑いがあってすべてが楽しく思えるからか。
    こんな楽しい生活って夢のようじゃないか、と夢のように読んだ。もしかしたら楽しくなかったこともあったのかもしれないけど、そういうのをまったく感じさせないというか、心して楽しいことだけ選んで書いたのかも。あるいは、本心からすべて楽しかったのかも。ほかの作品を読んでいつも思っているんだけど、宮下さんて本当に心がきれいな人って感じがするから。お子さんたちもそろって心がきれいそう。宮下さんに育てられた素直で個性的で楽しいお子さんたちがいるからっていうのも大きいだろうな。
    あるいは、楽しもうって決めて楽しんだのかも。見習いたいなと思う。
    それにしても、1年経って家族が北海道をあとにするときは泣けた。

  • ぼくの教員スタートは、へき複だ。教員なんてどこでもいっしょだと思ってた。そんな自分がなんと傲慢だったことか。

    その土地を愛して、その土地のために少しでもできることをして、学校を支えて、子どもたちを守って助け合って、楽しんで暮らしていく。一朝一夕にできることではない。

    だからかな、一度読んだ本だったけど、どこがいいというところはないのだけれども、空気感のようなものでオロオロ泣いてしまう。こんな風に書き上げる宮下奈都にも興味を持った。

    転校ばかりで根無しだったぼくは、こんな風に温かい人間関係を知らない。はじめの赴任地がへき複で、ほんとに良かったなと思う。そして、転校させることの罪悪感もよくわかる。ふりかえると、はじめからダメだったのかもな。

    理屈じゃないなにか。そう思うのに、どうしても、決められなかった。じたばた何をしていいのか、さっぱりわからない。気持ちは複雑、過疎のまちで家族を持つってことは、迷ったり揺れたりすることの連続だ。

    先生たちに読んで欲しいな。

  • 冒頭からすっと入ってきて、読み出したら止まらない文章に出会ってしまうことがある。宮下奈都さんの文章がそうだ。宮下家が北海道のトムラウシに一年間山村留学した話が本当に本当におもしろい。人が優しく温かいトムラウシはまるでユートピアだ。ああ、わたしも凍てつく冬の夜に露天風呂に入り、何千と輝く星を眺め、ジャージー牛のバーベキューに参加したい。幸せの数は星の数ほどあるけれど、宮下家を見ていてやっぱり家族仲良しって良いな、としみじみ思った。あと、山を下りて町に一軒だけある本屋さんは、雑誌がメインで、文庫の棚はひとつ、単行本は一冊しか置いてないような本屋さん。自分の本が置いてあったらうれしいだろうなあと妄想し、むりだろうなあとこの時は思っていたそうです。その後『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞し、願いが叶ったようです。

    p88
    そうそう、意外と虫が嫌いだったりもする。バッタが怖い子が何人もいて、ちょっとびっくりした。私も虫が好きなわけではないけれど、バッタくらいならだいじょうぶだ。かわいいなぁと思って、虫が怖いという子に話を聞いてみたら、バッタが大量発生する年があることを教えてくれた。空がバッタの大群で黒くなってしまうという。作物も荒らされ、甚大な被害を受ける。

    p157
    チャンスの神さまには前髪しかなというまことしやかな噂を聞いたことがある。通り過ぎてから気づいてふりかえっても、後頭部には毛がないからもうつかめない、というものだ。

    p220
    宮下「プリンタが壊れたようです。もう紙は詰まっていないのに用紙を取り除いてくださいと言われます。幻肢痛みたいなものでしょうか。私に直せるのでしょうか」
    担当者「そうですか。幻の紙を取り除くなんて、それは心理療法の領域かもしれません。プリンタは代替わりすべきときかと思います」

  •  2013年4月、小説家・宮下奈都が1年間限定の北海道家族移住での経験と生活を綴ったエッセイ。場所は十勝・大雪山国立公園にあるトムラウシ。周囲を囲む美しい景観は「カムイミンタラ」と呼ばれ、アイヌの言葉で「神々の遊ぶ庭」を意味する。山奥の特別豪雪地帯、小中併置校の生徒は全校生徒10名。夫の突然の提案で、山村留学制度を利用した1年間の移住生活。現地の人々との触れ合い、壮大な自然、子どもたちの成長、母としての自身の成長、そして逞しく優しい人々との出会いと別れなど、トムラウシで実際に生活することでしか経験できない、気付けない、味わえないことが優しいユーモアを交えながら丹念に綴られてゆく。素敵な家族の素敵な人々とのフィクションでない出会いと生活、空や緑を見つめ「ほっ」と一息つきたくなる心温まる一冊。

     実際に移住生活を送りながら雑誌「小説宝石」に連載していたこともあり、トムラウシへの移住の話が出た1月、そして実際に引っ越して生活が始まった4月から丸一年間、月ごとに章立てされた日記形式に綴られていく。
     たぶん大変な事や辛いことも多くあったと思う。なのに宮下さんの言葉で語られるとそれが何とも素敵で愛おしい生活として感じられるのがすごい。下手な小説よりよっぽど登場人物の個性が際立っていて、読んでいて全く飽きない。
     エッセイの端々に宮下さんの考え方やものの見方が語られる。本当に大切なものは何か、世間一般の常識に囚われず自由な息を吸う。こんな風に生きられたらなぁと思ってしまう。
     大自然の中で生きることへの憧れが強くなる、そして人に少し優しくなれる、そんなエッセイだった。

  • とても素敵なエッセイだった。
    おもしろくて、温かくて、幸せな気持ちになれる作品でした。
    こんな貴重な経験、なかなかできるものではない。
    一生の宝物になるに違いない。

    今は帯広に住んでいるおじが、最初に北海道に住む時に、どうせ住むなら一番寒い場所にしようと思って選んだんだーと言っていたけど、北海道の真ん中あたりと言ってたので、この辺かもしれない。
    そんな話をしたのを、思い出しました。

  • 満点のエッセイです。
    十勝に越してきて2年が過ぎました。宮下さん一家が暮らしたトムラウシという山村をこの本で初めて知りました。十勝を知った気になっていた自分を恥ずかしいと思ったのと同時に、もっと知れて嬉しい。もっともっと十勝を味わいたいと奮起しました。
    何よりご家族がユーモア溢れていて、あっという間に読めました。

    書くことはあっても話すことはないという言葉の潔さがかっこいい。

  • 読み終わっちゃったよーーーーーーーーーーー(゚´Д`゚)わぁぁぁぁぁあ!!さーみーしーいーーー!!!!!!!そして、さっそく山村留学をググるのであった。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベースより)
    北海道のちょうど真ん中、十勝・大雪山国立公園にあるトムラウシ。スーパーまで三十七キロという場所へ引っ越した宮下家。寒さや虫などに悩まされながら、壮大な大自然、そこで生きる人々の逞しさと優しさに触れ、さまざまな経験をすることになる。『スコーレNo.4』の宮下奈都が「山」での一年間を綴った感動エッセイを文庫化。

    読みやすい文章と何気にクスリと笑える内容にあっという間に読了。自然体の子供達も良いし、時々出てくる先生達も素晴らしい。後味スッキリ。

  • 温かい気持ちにさせてくれる作品。

  • 福井在住だった宮下一家は、夫の強い希望から北海道に期間限定の山村留学をすることに。
    移住先は大雪山国立公園の中にあるトムラウシという集落。
    虫や寒さに悩まされながらも、大自然の素晴らしさや地元の人との温かな交流を描いた、作者の移住体験記風エッセイ。

    いやー、すごいです。
    何がすごいって、宮下一家のフットワークの軽さ。
    アクティブすぎます。

    何しろ、移住した先は大自然に囲まれた寒さの厳しい過疎地域。
    携帯は圏外、スーパーまで37キロ、子どもの通う学校は小中合わせて生徒は僅か10人。
    その上長男は受験生だし、宮下さんの夫も北海道で職探し(移住のために福井での仕事を辞めたみたい)。
    自分だったら考えられないかも…。
    その逞しさには、憧れを通り越して畏敬の念さえ抱いちゃいました。

    美しい景色と穏やかで楽しい暮らしが生き生きと語られていくのでどんどん読み進められます。
    数の多いやたらと楽しげな学校行事や地域行事、濃密なご近所づきあい、子どもたちのオモシロ発言や珍事件など、クスっと笑えるエピソードばかり。
    もちろん、描かれないその裏には初めての土地での苦労があり、楽しいことばかりではないと思います。
    でも、宮下一家の面々は問題についても深刻になりすぎず、リスクを恐れずに目の前の興味あることに対して貪欲に、全力で楽しんでいきます。
    日常を大切に愛おしみ、光に顔を向けてゆく家族のまっとうな姿は下手な小説を読むより面白かったです。

    世間や常識に囚われて曇っていた目を覚ましてくれたエッセイでした。

全82件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月映画化。『静かな雨』が2020年新春映画化が決まり、2019年6月6日文庫化される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

神さまたちの遊ぶ庭 (光文社文庫)のその他の作品

宮下奈都の作品

神さまたちの遊ぶ庭 (光文社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする