- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334775421
感想・レビュー・書評
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定年間近の妙子が、10年前に家を出た夫を探しに上京し、そこで新たな友人と出会い、食堂の料理人としての新たな生き甲斐を見つけるストーリー。
東京に到着した日に財布をなくした妙子は、滋賀県公認宿泊施設の近江寮に泊まったのをきっかけに、そこで賄いを作るようになる。
料理を通じて、宿の管理人、安江や常連客たちと親しくなっていく一方で、安江に協力してもらいながら夫探しを続ける妙子。
安江の義母、ヨシ子が、認知症ながら、その何気ないコメントでその場をなごませたり、人に生きる力を与えたりしていたのがスゴい。特に、常連客の池花さんが、同姓のパートナー、忍さんを食堂に連れてきたときのヨシ子さんの反応がステキすぎる。
料理の描写も丁寧で、優しい味わいの近江料理が目に浮かぶよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めて読む作家さんだった。
感動することもなく、可もなく不可もなくテンポよく読めたけど、何か物足りなく終わった感じ。旦那さんとの会話が欲しかったなぁ。 -
【美味しい小説】
序章のあたりは流れがあまりわからなかったけど、後半はどんどんと美味しいものが出てきて、妙子と安江の仲が良くなったりヨシ子さんがボロボロ名言出したりと、物語のしても面白かった。
蒸発した旦那さんを10年以上経ってから探しに来る。。ハガキを出した旦那もだが、妙子の方にしても現実的でない一途さでは?と思ってしまう。主人公がアラカンだから感覚違いかもだけど、今の20〜30代の人じゃありえないのでは。。。
後半に東京近江寮で朝ごはん提供が始まったあたりから、どんどん美味しい描写が増えていきました。
近江料理って気になりますね。
鮒寿司と鯖そうめんくらいしかしらなかった。赤いこんにゃく食べたことないし。
確かに文章で見ても派手な華やかさはないけど、海ではない湖水料理特有の素朴で滋味深い感じが伝わってきます。
何より妙子さんが料理人だったわけではないのに、料理に、というか食べることに真摯なのが好感が持てます。
あとヨシコおばあちゃんの名言の数々。
食べることに真剣になってればなんとかなるのは、本当その通りですね。
続編があるようなので、あらためて旦那さんと再会を果たした妙子が、どんなふうに引き続き料理と向き合うのかたのしみです。 -
寺島妙子、太めのおばちゃん。
滋賀県で病院職員として働いてきた。
定年退職を前に、ひと月の休暇を取って東京へ。
周りには、友達と旅行に行くと言ったけれど、実は、10年前に失踪した夫を探すため。
音沙汰なかった夫から、この夏に葉書が届き、消印が本郷だったのだ。
上京早々、財布をなくした彼女は、拾ってくれた鈴木安江が管理人をつとめる、滋賀県公認宿泊施設、「東京近江寮」に滞在して、賄いをしながら夫の手がかりを追う。
主張し過ぎない(ここ大事)人情が心にしみる。
妙子と安江のおばちゃん同士が友情を育んでいく過程もいいし、寮の滞在客もそれぞれの人生がある。
夫の失踪を後ろめたく感じて周囲に壁を作っていた妙子もしだいに変わっていくのだ。
がんと戦うパートナーを支える池花さんたちから命の意味を学び、安江の姑(まだらボケ)ヨシ子さんから食べることの大切さを学んだ。
飲食店を何軒も経営する、嵐皮(あらしかわ)社長からは、夫との関係を振り返るヒントをもらう。
妙子と夫の秀一は、夫婦で近江の郷土料理の店「江州(ごうしゅう)」を営んでいたが、大きな赤字を出してたたんでしまう。
そこに夫婦が抱えた思いは別のものだったことを、妙子はやがて気づく。
秀一も気づいただろうか。
10年が意味のあるものに変わる事を願う。
ちょっと重いエピソードを明るくしてくれる安江さんのキャラクターが貴重。 -
【腹減り度】
☆☆☆
【食べ物の割合い】
☆☆☆☆☆
【1番美味しそうだったもの】
銀シャリおにぎり梅とおかか(ラップで包んである)
*感想*
食堂の賄いさんをやる話なので全体に食べ物が出てくるものの描写自体はごくあっさり。献立が書いてあるかんじ。
お話自体は登場人物がおっさんおばさんばっかなのにとってもキュート。トラブルあっても乗り越えて、元気が出てくる小説。
近江料理って全く馴染みがないけれど作中でも割と「地味」とかそんな扱いで笑えた。丁字麩、焼き鯖そうめん、モロコの飴煮、おちから落とし。どれも気になる〜! -
上京した滋賀県の人のための宿泊施設、東京近江寮で料理を担当することになった主人公・妙子。滋賀県の郷土料理が次々に登場して、温かな気持ちで満たされていきます。ちゃんとご飯を食べると、素直に生きる力が湧いてくるのですね。
読んだのは図書館で借りた単行本ですが、表紙のげみさんの絵のお料理がとっても美味しそうです。 -
夫を探しに慣れない東京に1人で出てきた妙子さん。出だしはハラハラして読んでいましたが、どうにかやっとこと言った感じで近江寮の生活をスタートできてホッと一息。
寮のメンバーもなかなかの強者揃いですが、それにも引けをとらない妙子さんの逞しさにもクスッとさせられました。
ご飯が美味しそう。
あまり凝らずにシンプルが1番と思えました。 -
展開として上手く転がっていき、できすぎな流れではあった。ただ文章としては料理の描写は丁寧だし、登場人物のキャラもしっかり立っていて、スイスイ読める感じ。ほっこり温かくなる話だった。
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10年前に失踪した料理人の夫から突然届いた1枚の葉書。それだけを頼りに主人公・妙子は夫を探しに上京。財布を落として現金を盗まれるハプニングから、安江という派手でどこか憎めない女性が経営する近江寮という滋賀県人のための宿に行きつく。料理が苦手な安江の代わりに妙子が料理担当になることに。
中年女性が主人公ということもあって、悲喜こもごも様々な人生が描かれる。生きることの素晴らしさ、美味しいものを食べる幸せ。大事な人と過ごす時間。当たり前に感じがちな小さな幸せを再確認させてくれるような心温まる話。 -
最高の表紙だなとおもって手に取った本作。舞台は谷中だしなんとなく落ち着いた雰囲気の話なのかなと予想していたけれど、全く違って関西の空気の方が強かった。特別なことはない普通の人だなと感じるキャラクターたちが良い。そしてラストが好きだった。続きが知りたいけど満足感も高い終わり方。次巻もぜひ手に取りたいと思う。