雪華燃ゆ: 上絵師 律の似面絵帖 (光文社文庫 ち 6-3 光文社時代小説文庫 上絵師律の似面絵帖)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334775469

感想・レビュー・書評

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  • 『上絵師 律の似面絵帖』その3。

    粋人として知られる雪永から、着物の上絵の依頼を受けた律。その依頼の影には、叶わなかった哀しい恋が…


    相変わらず、良くも悪くもさらっと。
    ようやく上絵師としての大きな仕事に取り組む律だが、まだまだ未熟さばかりが目立つようで、ヒヤヒヤする。
    雪永と千恵のエピソードはしみじみ。
    女将の類は、本当に厳しい商売人だが、それも人の心の奥底を深く見通す眼力があってのこと。職人としての律のどこかに、何か光るものを見ているのだろう…たぶん。

  • 女流時代小説作家 “知野みさき” のシリーズもの 『上絵師 律の似面絵帳』 全4巻。
    第1巻『落ちぬ椿』
    第2巻『舞う百日紅』
    第3巻『雪華燃ゆ』
    第4巻『巡る桜』

    第4巻目発刊時の新聞広告で見つけ、
    .....母親を辻斬りで殺され、失意のうちに父親も失う。 幼い弟と.......
    とあり、姉、弟による親の仇打ちものか、と興味を募らせた。

    近くの図書館にはあいにく無かったが、ありがたいことに、
    リクエストして10日もしない内に近隣の複数の図書館から4冊揃えて取り寄せてもらった。
    図書館の厚意に応え、4冊1300頁余を5日で読み抜いた。

    最初、読み始めは、
    この作家さん大丈夫かな、場合によっては “ナナメ” もできると読みだしたが、
    “ん、何とか耐えられる”、
    “ん、なかなかいけるな”
    “やるね、おもしろいじゃないか”、と “ナナメ” なしで読了した。

    さて、本シリーズ、
    江戸は神田相生町の裏長屋に住む、上絵師の “律” を中心に展開される
    ヒューマン・ドラマ、ときどきアクションも織り交ざる長編時代小説である。

    この小説、よく4巻まで引っ張ったなぁというのが
    なにをさておいてもの印象である。 
    上下2冊で纏められる内容である。
    というのは、肝腎の仇討ちは2巻目で終わらしている。
    それがしかも、姉弟揃ってたすき掛けに鉢巻姿と思いきや
    仇本人がお縄になって自害して完わり。
    数少ないアクション場面はお縄になる前にあるが.....。
    この場面、弟は一切出て来ない。

    あとの2巻、いったい何をやるのか。
    やはり、嫁入り話の相手決めで完結した。
    上絵師の精進ばなしは全篇通してあるが、
    4巻目の最後の最後にやっと芽が出てきてこれからという処でおしまいとなる。

    登場人物は百人余りでてくるが、それぞれを丁寧に扱っているのはいいね。
    主要な人物20人程度を点・線・面・時間軸の4次元で絡まして
    しかも絶妙のタイミングで、もぐら叩きのように出してくるのは見事と言える。

    さらに、いきなり、四半刻、七つの捨て鐘、九つ.....とくる時刻表現
    現在の何時にあたるとかの解説をしないところがいい。
    一文、一朱、一分、一両の貨幣表現
    九尺二間奥行三間の長屋、間口十三間の大店など寸法表現
    一町も行かぬ内、二町ほど南...などの距離表現
    あさつきと梅の粥、麩入りの茶漬けなどの食事情
    服装、小間物、武士世界と町民世界の違いなどなど.....
    読んでいて、江戸時代にタイムシフトしたかのような錯覚に陥る。
    それに、あたかも江戸の地図帳を開けているかのような
    町名、川、橋などの街並みの詳細な表現は臨場感を覚える。

    ただ、場面・風景の情景表現が殆んどなされていないのは物足りない。
    登場人物の心理・感情表現は刻銘になされているのに対して...........。

    第3巻の冒頭にある「口吸い」(Deep Kissingの意味合いで)の言葉は
    うまく見つけてきたと思う。 この時代によく会っていておもしろい。
    これに対し、Light Kissing の表現で「接吻」を持って来ているが、
    これは「口吸い」に対するものとして不釣合いである。
    .....蘭学書にも記されている西洋人の......とかの解説が表記されているが尚更不自然。
    むしろ、あっさりと「口つけ」でよかった。

    上絵、似面絵、染め、葉茶の一際入念な描写は、本作品に深みを与え格調を高めている。

  • 過去2作以上に強い想い/相思を感じました。
    ゴールの形はいろいろあれど、実を結んでほしいものです。

  • 上絵師として初めて着物を手がけることになった律。粋人として名を馳せる雪永が親しい女に贈るものだ。しかしなかなかよい返事がもらえない
    シリーズ第3弾

  • 202202/1~7巻まとめて。先に読んだ「神田職人えにし譚(しろとましろ)シリーズ」が面白かったので、こちらも購入。弟がいる女性職人が主人公ってことで、似たようなところも多いけど、こっちもなかなか面白かった。

  •  なんか展開が『みをつくし料理帖』みたいになってきたな…。「涼太の妻になることと、上絵師になること。どちらも当然と思っていた幼き頃と今は違う」どうなっていくんだろう?

  • シリーズ第三弾。

    いくつかの事件が、、、(この事件がそれぞれに良い味わいなのだが。)起こり、巻き込まれたりしながら。
    二人の初恋は徐々に実を結ぶように。

    二人を応援する幼なじみや、隣人たち。

    たくさんの人生が綾なすお江戸のまちで、人間模様が万華鏡のように。

  • ぼんやり読んでいるせいかあっという間に涼太と相思相愛の展開でびっくりでした。でも想いが通じ合ってもすんなりいかない展開が読ませます。
    職人パートは正直イマイチ。事情がある女性を相手に奮闘する様は読ませるけど特殊すぎて女性の職人の奮闘としは疑問。残念ですけど職人小説の一面は期待できないということなのかな。
    律さんを普通の一人の女性として描くのはいいのだけれど今のところ彼女はひっかかるものがなさすぎて職人としても人間としてもイマイチで魅力が伝わってこない。普通でいいので彼女にしかない何か伝わってくるものがほしいところです。
    ところで。律さんて相手の事情や気持ちをおもいやる能力が低いのかな。話を動かすためとはいえ、彼女は余計な一言が多すぎる気が……。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    上絵師として、初めて着物を手がけることになった律。粋人として名を馳せる雪永が親しい女に贈るものだ。張り切って下描きを仕上げる律だが、なかなか良い返事がもらえない。そんな中、ある女から金を騙し取ったという男の似面絵を引き受けるのだが―。涼太との恋、仕事への矜持。心を揺らしながらもひたむきに生きる女職人の姿を描く、人気シリーズ第三弾。

    平成31年2月4日~7日

  • 2019.01.06

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著者プロフィール

1972年生まれ、ミネソタ大学卒業、カナダBC州在住。2012年『鈴の神さま』でデビュー。同年『妖国の剣士』で第4回角川春樹小説賞受賞。「上絵師・律の似面絵帖」シリーズでブレイクした注目時代作家。

「2023年 『江戸は浅草5 春の捕物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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