- Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334775971
感想・レビュー・書評
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裕福な商家に生まれたが火事で一文無しになり、奉公に出された米屋を出奔、旅の砂絵師に師事して絵師となった、豊蔵・深山筝白。
武士の家に生まれるが家族との軋轢を抱え、家督を弟に譲って円山応挙の弟子となった、彦太郎・吉村胡雪。
片や、“変人”“狂人”と罵られ、片や尊大で身持ちが悪いと評判の『ごんたくれ』
会えば憎まれ口、皮肉の応酬で、喧嘩ばかり。
しかし、相手の絵には大きな魅力を感じるのを認めざるを得ない。
悔しいがうっかり褒めてしまう。
読んでいくうちに、だんだんと二人が可愛らしく感じられてきた。
絵を描くことに限らず、芸術は孤独な作業であり、憎しみと区別のつかないほどのライバル心があってこそ上達するものだ。
その人物評がどうであれ、作品がすべてなのである。
しかし、「職人でいい。職人でありたい」と言った応挙の言葉も、悪くはないと思う。
人が喜んでくれれば、それは絵師の喜びでもあるだろう。
最後に、彦太郎、豊蔵というごんたくれたちが、それぞれ仕掛けた、一世一代の“悪戯(イタズラ)”が、なんとも素晴らしく人を食っており、それでいて、実に愛おしいものだった。
とても気持ちのいい幕切れである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
池大雅、円山応挙、伊藤若冲などなど。
その周辺の人物や物語を、虚実織り交ぜ最後までドキドキさせてくれる。
絵師と絵画を中心に置きながらも、浮かんでくるのは人・人・人。
「人が好きで好きでたまらんのや」
人くさい絵を、みんな描くために、もがいてもがいて、絵筆を握っていたんだろーなぁ。
そんな向合う姿を感じました。 -
京都に住む画家。筝白と胡雪、ごんたくれの二人は絵図ではなく絵を描こうとする。二人の人生が交わるたびに彼らの絵が変わる。彼らの心意気にだんだん引き込まれていく。
応挙や若冲が出てくるので実在の人かと思ったが、創作の人だった。読みながら彼らの描いた絵が目の前に浮かんでくる。美しい絵、恐ろしい絵、静かな絵、迫ってくる絵、楽しい絵。ふと 若冲の絵がテレビを賑わしていたのを思い出した。 -
解説を読んで、豊蔵と彦太郎は実在しないのだと知り、とても驚いた。二人のみでなく登場人物みなが、生き難さを抱えながらも自分の内なる声に向き合い懸命に生きていく日々と、なぜか気になり魅かれ合ってしまう人と人との関係が、とてもリアルで、時代は違えども、確かに自分も同じ世界に生きていると思うことができた。
これまで画家や絵師の話はいくつか読んだが、本作は、素人でも目の前に情景がありありと浮かんでくる様がことに素晴らしく、重く暗くなりすぎないバランスも心地良かった。西條奈加さんの本には、いつも夢中になってしまう。