火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 1294
レビュー : 112
  • Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334776282

感想・レビュー・書評

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  • 仕事帰りの電車の中でこの本読んでたら、最寄り駅に着いたのに気がつくのが遅れ、一駅先まで乗り過ごしちゃったよ。何という不覚…。
    こんなこと、まずなく、まあ、それくらい話に惹き込まれてたってことだけどな。

    世の中の危険人物を捕まえては公開処刑するという仕組みが始まった日本。取り締まるのは、その名も”平和警察”。
    「安全地区」に指定された仙台を舞台に繰り広げられる警察vs無垢の市民の物語。
    誰が中心人物やら色んな人の話やエピソードが積み重なって進む第一部。
    警察を襲った謎の人物を追う平和警察の側から描かれる第二部。
    謎の人物から事の顛末が明かされる第三部。
    それぞれが公開処刑の場に引き寄せられる第四部。
    全てがきちんと回収される第五部。
    いつもながらに、少し前に書いてあったところに行きつ戻りつ小さなエピソードの積み重ねを楽しみながら、物語が膨らんで収束していく様を楽しむ。

    伊坂幸太郎は悪意に侵食されつつある社会と闘ってるな。
    今、正に『自分たちにとって都合のいい情報が、真実として扱われる』といってもおかしくない世界じゃないか?
    悪意が善意を駆逐するような胸糞悪くなるような話だけれど、ここに描かれている権力の暴走や市井で跋扈する暴力(言葉の暴力も含めて)は誇張されているだけで、日常どこにでも転がっているのだろう。
    それらに対して、元々作者には、日本はもっと素晴らしい国民ときちんとした法律で成り立っている筈とのささやかで真っ直ぐな希望があったと思うが、『何がどう変わろうと、別に、世の中が正しい状態になるわけじゃない』と登場人物に語らせるにあっては、真っ直ぐさだけではなく、長い物に巻かれながらも強かに世の中を生き抜く力が大事との思いが加わったように思える。
    読みようによっては何が真実だったか推し量れないような話なのは、『大事なのは、行ったり来たりのバランスだよ』と語る作者の今回行き着いたところかと。

    佐藤誠人って、同姓同名の奴が知り合いにいたけど、今はどうしてるんだろうなぁ…。

  • 架空の日本(仙台)が舞台。平和警察が魔女狩りのように、市民を拘束し拷問で危険人物であると白状させる世界。
    平和警察に運命を翻弄される人々、平和警察(と県警の人間)が描かれていく。群像劇のように、それぞれのエピソードが絡みながら、徐々に収束していく様は相変わらず見事!
    伊坂氏の小説によく出てくる、理不尽な悪(暴力)が本作もいやーな感じで描かれていた。明るい未来を描いた終わりかなと思いつつ、そこも軽く突き放すのもうまい描き方だった。
    相変わらず、登場人物の描き方は魅力的。続編ができたら嬉しい。

  • ゴールデンスランバー以降社会派に転向した印象の強い伊坂氏ですが、これはとてもバランスのとれたディストピア小説です。
    バランスのとれたディストピア小説、という響きもアンバランスですが。

    仙台には「平和警察」という、危険人物を取り締まる機関が存在していて、彼らに目をつけられるとそれは有罪を意味する。拷問にかけられ、民衆の前で「公開処刑」されてしまう。
    危険人物をあぶりだすための金子ゼミ(反乱組織をうたい、偽の情報を流す集団)等の入り組んだ罠がはりめぐらされた社会のなかで、ツナギに磁石のヒーローが現れた・・。平和警察の二瓶や、東京から派遣された真壁はツナギの男を追うが・・!?

    というのがざっくりあらすじ。
    前半は金子ゼミにハメられた市民たちがヒーローに助けられるパートまで、中盤は平和警察側がそのヒーローを追いかけるパート、そして後半はツナギの男の観点から物語が進む。
    中盤くらいまでものすごくディストピアで胸糞悪いんですが、ツナギの男の独白パートからめちゃめちゃ面白くなってきます。最後の展開は読んでてニコニコしてしまう気持ち良さ。抜群の読後感。

    伊坂氏の小説『魔王』でも昆虫は描かれていましたが、民衆はひとりひとりであれば人間なのに、群をなすと昆虫のようになる、というのが繰り返し伝えられる皮肉ですね。
    かのシェイクスピアも民衆はヒュドラの頭のようなもの、と言っていましたね。どんな状況であっても、自分の頭で考え続けろ、行動しろ、と、伊坂氏は一貫して我々には伝えてきます。今回の行動した人々はいままでないほど狡猾にことをなしとげましたね。魔王やゴールデンスランバーでの敗北を噛み締めてきたからこそ、本作で慎重に裏で思惑通りに物事をなしとげた彼らの行動に喝采を送りたいです。
    火星に住むつもりかい?というタイトルの通り、理想通りの場所はどこにもないことを理解したうえで
    いまいる場所の振り子のバランスをどうとるか、という着地点が、伊坂氏の成熟をそのまま感じさせます。

    ☆4.5!楽しいです。

  • 「憂鬱でした、途中で読むのを止めました」なんてことは無かったですよ。
    監視社会とか公権力による横暴とか公開処刑とか、この手の設定があると普通の書き手であれば重苦しい雰囲気になって読み進めるのに難儀しそうなところなのですが、本作はさすがというかやはりというか、伊坂さん独特のユーモアが中和剤として絶妙な効き方をみせており、まあ多少辛く感じるところはあったものの、基本的には最後まで楽しく読み進めることができました。

    本作は現代日本(のような国)の仙台を舞台にしたディストピア小説で、『ゴールデンスランバー』や『魔王』の延長線上に位置する作品に当たると思います。未読の方もいるでしょうから、ストーリーはとてもよくできており、伏線も仕掛けもばっちり決まっているとだけ書いておきましょう。個人的には近年の著者作品の中では群を抜いて面白かったです。

    それにしても、本作で描かれている社会に、現実の社会が近づいているような印象を持ったのは私だけでしょうか。安全の名の下に街中に監視カメラが設置されたり、時の権力者を批判した者が体制の御用メディアにレッテル張りされて社会的に抹殺されたり、社会全体がニヒリズムに覆われて深く考えることを放棄したりとか・・・
    犯罪が起こらない代わりに権力者に監視されて一方的な正義がまかり通るディストピアと、人と人の衝突はあっても自由で多様な正義を認め合う社会のどちらに私たちは向かっているのでしょうかねえ。前者じゃないことを祈りたいのですが。
    と、そのようなことを考えさせてくれる深みを併せ持った、いい作品だなあと思ったのでした。

  • 再読。きっとこういう世界は、過去にも未来にも日本にも世界のどこかにもある。ただのフィクションだと思ってはいけない。その中でお前はどう考え、行動するのかと突き付けてくる現実だ。自分だけが正義だと思わないことは大事だが、正義を信じたい気持ちも捨てられないんだよね。ムズカシイ。

  • 伊坂幸太郎作品は大好きでほとんど読んでいるが、珍しくイマイチだった。イヤーな気分になる描写が最初から続き、いつスカッとさせてくれるんだろう? と思っているうちに終わってしまった。

  • 終盤、多田の心の動揺にほっとした。一番ナチュラル。

  • ばらまいた伏線を回収するいつものパターンですが、どうも切れ味がないのか、私が感じられなくなっているのか。いやいや、これは設定に無理があるでしょと突っ込んでしまうと読めなくなる。

  • 前提となる大きな設定「平和警察」に最初はなかなか馴染めなくてリアル感がつかめなかった。同じありえないような設定でも、検索窓で特定のワードを検索した人を‥っていうのと訳が違う。なんてったってギロチンだから。

    ‥だけどもしそうなったとしたら?

    怖いなぁ。平和警察が、ではなく「隣の人」が。
    効率化されると、そこには意思も善意もなくなる。
    平和警察は、いやありえないと思いたいけど、嫌なやつを告発したり罠にハメたりって、今も普通に起こっていることでしょう。会社で、学校で、近所で。

    何かおかしくないか?って行動に移した人が、本気でバサバサと平和警察につかまるので容赦ない。金子ゼミ、蒲生くんたち捕まった時まじかよぉぉぉって叫んじゃった。
    いつ、誰が告発されて捕まるかといつもヒヤヒヤしてた。

    解説で加護くん(新人サイコパス)について書かれていたけど。
    悪意満タンな人には感情移入しにくいように細かい描写がない、彼が身体中穴だらけで亡くなった時、読者はスッキリするだろう、それはある意味、作中で広場の処刑を見て興奮しスッキリする民衆と同じではないか?っていうやつ。
    私は、どんな人が死んでもスッキリはしないけどね。
    彼が目の前で生死の境目にいるとしたら、私は助けると思うよ。きっと大多数の人がそうだと思うし。
    ただ、世の中にはそういう真っ黒いやつが、本当にいる。なるべく避けて関わらず生きていたいけど、不運にも出会ってしまってどうやっても逃げられない時、余計なことは考えず、行動に移すしかない。 「余計なことは考えず」。それだと思う。
    重力ピエロのラストだと思う。
    マリアビートルのラストだと思う。(他にも多数)

    あと、正義の味方が100%善意で決意でやってるわけじゃないのでは?ってやつ
    これでいいのか自問自答したり、迷ったりしている。
    結果的に正義のヒーローになってはいるけど。
    まっさらで一つもシミのない、穢れないヒーローなんてテレビの中だけで。
    グレーでいい、グレーがいい。
    そのバランスが大事なんだと。

    無意識に動く集団をはるか遠い宇宙から見てみたら、何に見えるかってやつほんと好き。
    鈴木光司のループ(?だったかな?)の最後みたいだね。自分は何かを構成する集団の一つで外側にメタ的な生物がいて観測していると。
    百億の昼と千億の夜みたいだぁああーー


  • 少し冗長な部分あり。
    相変わらずの見事な伏線回収ですっきり読めた。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業後、SEとして働くきながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。
2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。
上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されてきている。

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