- Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334776282
感想・レビュー・書評
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現代の世相を反映させたような小説だった。真実かどうかに関係なく目障りなものを冤罪で罰するところはSNSの不快な袋叩きに似ているし、政治家の常套手段のようでもある。
最後のところは初期のルパン3世に同じものがあったなと
笑ってしまった。 -
伊坂幸太郎氏のアクションアドベンチャー小説。
物語の舞台は『平和警察』という警察内部のある部門が強大な力を握った監視社会。社会に害悪を行うと思われる人物はどんどん摘発され、ギロチンで公開処刑されていくというディストピアだ。
「社会に害悪を行う」と言っても、ほとんどは全く無実の人物ばかり。えん罪や密告なんでもありで、えん罪で陥れられた人物も『平和警察』の拷問部隊によって必ず『自白』させられてしまう。
人々はそんな『平和警察』の発表を鵜呑みし、
あの人が、そうだったんだ~、人は見かけによらないね~
などと他人事のように信じてしまうのである。
そんな状況下において、『平和警察』に表立って反逆する謎の怪人が現れる。
序盤の第1部、第2部は、阿部和重氏との共著『キャプテンサンダーボルト』を彷彿とさせるスピーディーな展開で、謎の怪人を追う警察側の視点から描かれる。
第3部からは逆に謎の怪人の視点から描かれていく。
第3部からは、ジェットコースターに乗っているような感覚で、一気にラストまで読ませる。
この小説を読んで、一番心に残ったセリフは、
「何がどう変わろうと、別に、世の中が正しい状態になるわけじゃないけどね(中略)振り子が行ったり来たりするように、いつだって前の時代の反動が起きて、あっちへ行ったり、こっちへ来たりを繰り返すだけだよ(中略)大事なのは、行ったり来たりのバランスだよ。偏ってきたら、別方向に戻さなくてはいけない。正しさなんてものは、どこにもない」
というものだ。
これはラストシーン近くのある登場人物のセリフであるが非常に心に響き、説得力があった。
確かに、どんな社会の仕組みも完璧なんてものはあり得ない。時計の振り子のようにある時は行き過ぎたと思われる振り子もいずれ必ず反対方向に向かって動き出す。
人類が歩んできた歴史はこのような振り子の揺れを繰り返してきたのだろう。
本書は、エンターテインメント小説でありながら、思考停止に陥っている現代社会を痛烈に風刺する社会派小説でもあるのだ。-
kazzu008さん
こんばんは。
『蜻蛉の理 風烈廻り与力・青柳剣一郎』への、いいね!有難う御座います。
小杉健治さんの本は、時...kazzu008さん
こんばんは。
『蜻蛉の理 風烈廻り与力・青柳剣一郎』への、いいね!有難う御座います。
小杉健治さんの本は、時代小説はよく読んでいますが、中には字が小さくて読めない本もあります。
風烈廻り与力・青柳剣一郎は、2016.12.11に1巻目を、字が小さいですが最初なので無理して読みました。
次は、何とか読める最小の字の大きさの12巻から読んで行きました。
すごく面白いですよ。
やま
2019/12/09 -
2019/12/10
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「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は公開処刑の対象となってしまう。
「逃げたって無駄だよ、逃げれば逃げるほど近付く、地球は丸い」
「本気で逃げるなら火星にでも行くしかない」
不条理渦巻く政界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒づくめの「正義の味方」、ただ一人。伊坂ワールドの醍醐味が余すことなく詰め込まれた、ジャンルの枠を超越する傑作。
伊坂さんらしく、宇宙にでも行くファンタジー系の本。かと思いきや、まったくもって予想を裏切られる。あまりに理不尽な世の中。監視社会の成れの果て。「正義」とは何か。とても考えさせられる。
序盤からサディスティックな世界観。展開が読めない。この物語はどういった終わり方をするんだろうってソワソワしながら読み続けていましたが、終盤を迎えたあたりからの怒涛の伏線回収。
「人間は、安心できる情報よりも、危険を煽る情報に、より反応するんですよ。」
まさしくその通り。インターネットが普及し、ちょっとしたことですぐ炎上してしまう。どこで誰に見られているか分からない。監視社会。まったくもって生きづらい世の中になったものです。いっそのこと、火星にでも住もうかしら。
総評として、伊坂さん初心者の方には入門編としては、おすすめしづらいかなあっていうのが正直な感想です。ただ、ディストピア系の小説としてみたら入門編に適していると思います。興味がある方は、ぜひ、手に取ってみてくださいね。 -
明確な正義と明確な悪があるような物語は、わかりやすい。しかし、果たして誰もが正義を唱える場では何が正しいのか。
この物語は、現代版「魔女狩り」が行われる世界。
「疑わしきは罰せよ」を元に行動する、「平和」警察。そして、そうした現実に歯向かう、一部の人々。
騙し騙されが繰り返される世界で、絶望したときに現れたのが、正義のヒーローなのかわからない、黒いフェイスマスクの男。彼は一体何者なのか。
こうした本を読んでいると、つい現実世界に当てはめてしまうのは、私の悪い癖なのだろうか。
私刑がなぜいけないのか、正しさとは何か、など、色々なテーマに変換して考えさせられる、素晴らしい小説でした。
今回も伏線だらけで、常にアンテナを張りながら一気に読み進めました。回収する場面の気持ちよさは格別です。
もはや、伊坂氏の小説は、冷めないうちに味わい尽くすのがおすすめという、持論ができつつあります。 -
クスクス笑いたくて手に取った伊坂先生の本。
あれ?作風変わりました?ぐらいの拷問のシーンの連続。軽いタッチの拷問シーンが余計に辛かったけど
その後は、恰好良いヒーローが2人登場!
スパイダーマンみたいな人間臭い久慈さんに
ルパンみたいにお洒落にスマートに人の裏をかいていく真壁さん。
クスクスは少し少なかったけど
終盤の盛り上がり❣️電車を降りるの忘れるぐらい集中して読んでた。
あぁ、やっぱり伊坂先生の先品大好きです。 -
物騒なSFっぽいディストピアを舞台に描かれた、伏線回収が素晴らしい作品。
振り子が揺れていくように伏線に翻弄された。
ところで最近この日本で痛ましい事件が起こり、それがいろんな場所でいろんな話題に転じている。
その中で良からぬビジネスのセミナーに行った人のツイートを見かけた。
そこでは冷房や冷えた水により、思考を奪う手法が取られているという内容があった。
まさにこの作品でも同じ思考を奪う手法をとられていた。
この作品をただのディストピア、現実とは違う、と片付けるには無理がある世界が現実となっている。
正義という曖昧で揺らぐものについて登場人物が触れていくのだけど、真壁の飄々とした接し方が熱かった。
昆虫に例えて、彼の正解を濁しているような気がした。
最後までかっこいい人物だった。
我々はまだ火星に住めないし、住める頃には火星は火星ではなくなるのだと思う。
火星に住めないからこそ出来ることがあるのではないか。
出来ないことをただ出来ないだけでなく、それについて声を上げることも大事なのだと思う。
正義を火星に持っていけるように、最近の事件にも声を上げていきたい。-
2022/07/14
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2022/07/14
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どこかにある気がする世界「平和警察」
狙われたくないから無実の人でも平気で密告しちゃう人間の心理の恐ろしさが伝わったな
ちょっと今の日本が平和すぎて想像もつかない内容だったけれど近い未来あるかもしれない
そう思うと人間関係うまく築いておくのってほんとに大切だなって思った、難しい
正義ってなんだろう
途中難しかったけれどやっぱり伊坂さん面白い -
久しぶりの伊坂さん小説!なぜ積ん読してたのか…!読み始めたら最後まで一気読みしてしまった。
火星探査の話を読んだばかりだったので、ファンタジー系か近未来系を想像していたら、思い切り社会派だった。
火星(人間社会の秩序外)ってそういう意味!?
伊坂さんって痛快な終わりが多いし好きだけど、取り扱うテーマが社会的なことも多い。
平和警察制度って、まるで戦時中の「隣組」みたいな…。
相互扶助、相互監視、連帯責任で統治しやすくする目的で作ったんだろうけど…。
インボイス制度やマイナンバー制度で個人の経済活動を管理・監視する方向に全振りしている今の動きを見ると、近い将来マジでこうなりそうで怖いんですが。
謎の圧倒的力を持つヒーローが現れて平和警察という名の悪者をバッタバッタとなぎ倒していく…風に見せかけて、地道にチャンスをうかがっていた人たちが暗躍する。
自分の守りたいもの、守れる範囲を理解して機会を伺い、耐えながら地道に行動する人たちにスポットが当たった話だった。
最後の最後でいいところを持って行ったあの人は今後どういう動きをするんだろう。