生ける屍の死(下) (光文社文庫 や 26-4)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334776749

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!死者の甦る世界での殺人に意味があるのか?を見事に描く、論理的で驚きのある本格ミステリーだった。死生観に纏わる蘊蓄や80年代後半までの映画・音楽、笑いも絶妙にミックスされた独特の雰囲気。ネタ元探しも楽しめそう。

  • 死者が甦るという現象がアメリカの各地で発生したことが主軸の舞台となる特殊設定ミステリ。最初は設定が突飛すぎて読もうかどうしようか悩んでいたのだが、いざ読み進めてみるとこれが滅茶苦茶面白い!死んだ人間が甦るわけだが、死者には死者なりの悩みや葛藤がありそこには勿論生者の思惑も絡んでくる。途中まではしっちゃかめっちゃかの乱痴気騒ぎの無礼講パーティーという有り様で、この五里霧中状態にどんな収拾をつけるのか気になって気になって頁をめくる手が止まらなかった。そうして最後に告げられた犯人の名を示す手掛かりは、きちんと作中に散りばめられていたのに全く気付かなかった。うーん、見事にしてやられた!でもこの感覚が最高に気持ちいい!

  • 下巻に入ってからは、もう誰が死んでて誰が生きてるんだかよくわからなくって読んでるほうも混乱。もはやノイローゼ状態のトレイシー警部に同情。結局終盤で彼が言うように「生きてる人間と死んだ連中の思惑が無茶苦茶に絡まり合い、しかも、犯人も、被害者も、目撃者も、それに探偵まで死人だったときてる」のだから始末に負えない。

    最後はグリンが探偵役の主人公らしく一同の前で謎解きしてみせてくれるけれど、それでもなお、何が起こったのか部分的によくわからなかった(苦笑)それもこれもゾンビが多すぎるから!「きちんと死ぬ」ということがいかにありがたいことかよくわかりました。そして掟破りのこの設定で推理小説を成立させることの凄さも改めて認識。単に奇想天外な設定の推理小説というだけでなく「死」について、真面目に考えさせられた点も。

    事件が解決しても、ゾンビとなったグリンが元の人間に戻れるわけではない。自らの死因を突き止めた彼に待っているのは本当の死だ。最後の場面でのチェシャとグリンの対話は急に泣けた。こんな切ないラブストーリーある!?チェシャは突拍子もない娘だけどとても可愛くて大好きだったし、グリンも良い奴だった。

    各章ごとに、聖書からビートルズの歌詞まで「死」にまつわるエピグラフが付いているのだけど、エピローグではニール・ヤングの「ヘイ・ヘイ・マイ・マイ」だったのも切ない。「燃え尽きたほうがいい 消え去っていくよりも」It's better to burn out than to fade away・・・これ、カート・コヴァーンの遺書に引用された部分じゃん(泣)と思って調べたらカートの自殺は1994年、この小説より後だった。

    その他、音楽関係の引用が文章の中にもちょいちょいあって、それも個人的にはとても好みだった。例えば「昔ルー・リードがしていたみたいな、細くぴったりした広角度のサングラス」とか、ロックじゃないけれどメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」についてのエピソードが出てきたりとか、そういえばこの曲『ヨハネ黙示録』と関係しているし、個人的に黙示録の感想で「ヨハネ=英語でいうところのジョン」的なことを書いたけれど、これ、ある意味本書では伏線的なことにもなってた(笑)

  • わたしは上下巻に分かれていないやつを読んだので、まとめて下巻の方に感想を書きます。正直、謎解きはすごく面白かったですが、あまりにも長すぎて読み切るまで時間がかかり、登場人物も途中でわからなくなったりと結構混乱してしまいました。私が過去に読んだ作品の中ではトップレベルに長かったのもあり、読みなれていなかったのも原因の一つかと思います。
    ただ、世界観は独特で、舞台は葬儀屋なのに何故か重苦しくなくポップに描かれている印象を受けました。長いのは長いですが、最後の方は疾走感もあり一気に読みました。読み終わったあとは余韻も強かったですが、達成感がひときわでした。

  • 名作と聞きつつ、中々機会がなく読めていなかった作品。自分には合わなかった。アメリカが舞台で登場人物の名前が覚えきれず、読むのに疲れてしまった。
    謎解き解決からラストシーンに向けてはかなり疾走感があるが、そこまでが長い。また、生者の世界で死者の考えに想いを馳せないと、それぞれの考えが理解できず、真相にたどり着くのは難しい。

  • ☆4.0

  • この作品を余すことなく楽しむには私の知識量が少ないんだろうな、という小ネタ?的なのは感じた。
    本質は多分あと何回か読まないとちゃんとした感想に至るほど理解出来ていないと思う。それでもグリンは好きだし、キリスト教系の学校に行っていたので聖書はとりあえず読んだことはあったし(章節を表しているのに気付かなかったのは本当に悔しかった)、生屍複雑になるのは予想してたけどなる程と思えたし、何よりもピンクの霊柩車で帰ってきてピンクの霊柩車で出ていく、きちんとまとまって終わっているのが嬉しかった。

  • そうきたか!っていう意外性にやられた。
    動機がかっ飛んでて、ポカーン。
    はー、そうでしたか。
    はー。
    そんな感じでした。

  • やっと読み終わった……

  • (上/下)米国東部の田舎町で霊園を経営する一族の長、スマイリーは死に瀕していた。遺産を巡り不穏な空気が漂うなか次々と殺人が起こる……が、そもそも全米各地では死者の甦り現象が発生中で……。探偵役となるパンク青年グリンが真っ先に毒殺されてしまって呆然とし、死者が甦るという奇天烈な世界で密室とかトリックとかロジックはもはや無意味?と思っていると合理的な謎解きがきちんと用意されていて改めて感服。冒頭グリンの読む本がミール・バハドゥール・アリ著『アル・ムターシムを求めて』だったりする等、凝った小ネタの数々も堪らない(1989)

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