東京すみっこごはん レシピノートは永遠に (光文社文庫 な 41-5)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334779160

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ最終巻。
    多分、このシリーズはきちんと終わりを「ここ」と決めて書かれた作品であることがよく分かる、きちんとした構成。
    最終巻は今まではたまにしか登場しなかった楓のおじいちゃんの語りから始まる。
    高校3年になった楓は、みんなで応援したのにもかかわらず、家庭の事情で高校に進学出来なった瑛太のことが頭から離れないでいた。
    瑛太のような困窮に悩む子供がいるのに、自分は進学していいのか悩む様子は、正直受け入れられないままで、読み進めていた。
    そんな中、すみっこごはんの常連メンバーも次々とすみっこごはんを去ることに。
    カップルだった奈央と一斗は茅ケ崎でお店を開くことに。
    定年間際の丸山も、会社を辞め、八王子の子ども食堂へ。
    そして、NPO法人すみっこごはんの代表だった柿本も、本来のボクシングのトレーナーとして渡米することに。
    押し寄せる別れの波に、心も頭もついていけない楓に、さらに祖父の死が間近に迫っていることが発覚する。
    小説を読んでいるだけでも、これだけの別れの波が押し寄せたら、もう心がもぎ取られそう。
    それでも、すみっこごはんのメンバーたちは、折れそうな楓の心に寄り添う。
    赤の他人の集まりのはずなのに、様々な背景を抱えた人たちが支え合う様子に思わず涙が流れる。
    最後まで読んで分かったこと。
    このシリーズで訴えたかったのは、多分、子供の食の貧困なのだろう。
    楓が母親が早く亡くなっても、家庭の味を忘れないように母である由佳が遺したレシピノートも、冒頭の瑛太の件も、丸山が子供食堂で働きだしたのも、お金がなくて食べられない物理的な困窮だけではなく、親や大人の愛情の入った食を食べることが出来ない困窮も含めて、食は子供の成長に大切であることを訴えているような気がした。
    楓が瑛太を思い、自分の進学を悩むことはエゴであり、そんな自分に酔っているだけだよ、と思いながら読んでいたが、その部分はきちんとあとですみっこごはんのメンバーに注意される。
    楓の悩みとして、問題を提起し、すみっこごはんのメンバーの言葉で解決しつつ、楓の成長を描く。
    とても秀逸な作品だったと思う。

  • 『東京すみっこごはん』最終巻。

    高校三年生になった楓は、悩み、迷いながらも大学への進学を決意したのだが、その一方でお馴染みのメンバーが、示し合わせたのかと思うほどに次々とすみっこごはんから離れ、新たな道へと進んでゆく。
    そして最終章では、楓を男手ひとつで育ててきた祖父が、天国へと旅立っていった。


    シリーズのはじめ、さびしさと幼い反発から家を飛び出した末にすみっこごはんにたどり着いた楓は、出会った多くの人に愛を注がれ、その手を人に差しのべられる、すてきな18歳に成長した。
    愛を注いでくれた人がいなくなっても、その愛はどんどん育ってゆく。
    きっとこれからも、手を合わせてきちんとごはんを食べて、真っ直ぐに歩んで行けるだろう。
    甘い癒しだけでなく、孤独も痛みも別れもきっちりと描き切った、とても良いシリーズだった。


    食いしん坊の私は、まぁ何があっても食べることは忘れない自信はあるけれど、こんなにちゃんと誠実に生きてないなぁ。何となく、ごめんなさい。

  • うっ、うっ…涙なしでは読めない最終巻
    今年一番泣いたかも…

    変わりゆくこともあれば、変わらないこともある。それに、金子さんの言う通り、その人がくれた愛は消えないし、育っていくんだよ。

    寂しかったけど、いい終わりでした

  • すみっこごはん最終巻。ついに読み終えた!

    楓のお母さん、自分が死んだ後の世界のことを考えすぎだよー。お医者さんが言っていたように、余命宣告でパニックになったり怒ったりする人が多いはずなのに(それも3歳の娘を抱えたひとり親で)、自分が死んだ後の娘の人生のために、自分に縛られないで欲しいとかまで考えるなんて…前の巻では、楓が、お母さんみたいになれないことを嘆いていたけど、やはり楓母は神だと私は思ったよ…。

    悲しい別れがたくさんあって、すみっこごはん常連さんたちがそれぞれの道を歩むことになり、すみっこごはんで集まれなくなってしまう。
    高校生のときのわたし自身のことを思い出してみると、わたしにはどうしようもない「別れ」を前にしたとき、どうしようもないのに、なんとかしたい、何かできないのかな?!と、1人で考えたりしてたなぁ。
    楓みたいに、社会人の人たちと対等に仲良くできるような大人な子じゃなかったけど、高校生のときは、いろいろ一生懸命だったな。
    楓は、やたら大人っぽくて、おじいちゃん死なないで!って本人の前で泣くことすらできないような。なんかそれは、わたしの中でとても悲しくて切なかった。
    楓は、こどもでいられなかったんだなぁ、って思って。

    楓は、亡き母の思い、亡き祖父の思い、すみっこごはんで楓を見守ってきた人たちとの思い出を抱いて、自分の道を歩んでいくんだな。
    これから、すみっこごはんがどうなるのかは分からないけど、もしすみっこごはんがなくなっても、絆も愛も思い出もずっとあるよっていうメッセージを受け取った気がする。
    人が必ず死ぬように、物事にも終わりが来る。もしすみっこごはんが自然消滅的になくなるのであれば、それは楓を育てると言う役割を終えたということだろう。
    ありきたりな言葉だけど、終わりや別れって、悲しいだけじゃないなと思った。たとえ終わったり、別れたりするものであっても、そのときの人生には必要なものだったし、その後の人生にも必要だったということなんだろう。

    今回はスパイスカレーと、いなり寿司がめっちゃ食べたくなりました。
    スパイスカレーは、本関係なく、定期的に食べたくなるんだけど笑。
    いなり寿司って、中高生〜20代頃は全然心惹かれなかったんだけど、ここ数年は大好きな食べ物。具が入ったいなり寿司って、良いよなぁ。

  • 最終巻。
    何事にも変化がある。
    時が経てば、人それぞれ人生の転機を迎え・・・
    すみっこごはんからも、一人去り、二人去り。
    三名以上六名以下で実施が約束の「すみっこごはん」だが、三人集まることも難しくなって、楓は、やりきれない寂しさから怒りさえ感じる。
    そんな時に、すみっこごはんのレシピノートが無くなって・・・

    じいちゃんはその昔、楓の母の由佳を、可愛くて心配するあまり、何でもかんでも禁止した。
    そして、失うことになった、後悔と愚痴を、心の中の亡き妻にささやきかける。
    「すみっこごはん」で、たくさんの人達に見守られて、楓は本当にいい子に育った、と旅立ちの時を前にじいちゃんは思う。
    成長する楓と、見守るじいちゃんの物語だった。

    楓は、母親の由佳が望んだ以上の成長を遂げたのかもしれない。
    守られる存在である子供から、誰かを守りたいという強い思いを抱く大人へと。楓、18歳になる。
    そこまでは読めなかったわね〜と、由佳はきっと天国で微笑んでいる。
    はて、最初の頃の楓はどんな子だったのか・・・もう一度読んでみたくなった。

    【勝負にカツ丼】
    じいちゃん、倒れる。
    楓は、ちゃんと話ができる時にしておかなくては、と悟り、進学の話をする。
    将来は福祉の道に進みたい。
    一つ、貧困で進学を諦めた瑛太のことが気になっている。
    中途半端に手助けしようとして失敗し、傷つけてしまった。

    【決断のピリ辛麻婆豆腐】
    柿本が渡米することになって、長年務めたNPO法人の代表も降りる。
    楓が18歳になったらNPO法人の代表を辞めるというのは、由佳との約束だった。
    ずっと縛られるのはダメ、と。

    【カレー・リレー】
    すみっこごはんのレシピノート、カレーだけは、スパイスの配合が書かれていなかった。
    形を変えることを恐れず、変化を楽しみなさい、という由佳からのメッセージかもしれない。

    【思い出のおいなりさん】
    金子さんが昔やさぐれていた時に、甘いおいなりさんの匂いに誘われてすみっこごはんに初めて入った日のこと。
    厨房にはむさい渋柿が立っていて、誰かが「今日はもう締め切りで」と言うが、柿本がいいじゃねえかと入れてくれたのだ。

    【レシピノートは永遠に】
    すみっこごはんも、レシピノートも、受け継がれていくもの。

    ーーーーーーーーーーーーー
    これで一区切りかもしれないけれど、楓とすみっこごはんの将来を見てみたいです。

  • 最終巻は別れの連続…。学校で辛い時も、親のいない寂しさも支えて来た、すみっこごはんの仲間たちがどんどん居なくなっていき、たった1人の身内のおじいちゃんとも…。もう、最後は泣けて泣けて…。おじいちゃんの生き様は天晴れだ! 変化って怖い、でも、ずっと変わらない事などないんだなぁ。その人がくれた愛は消えることはない…。ジーンときた。

  • 楓と母親の由佳、祖父とのことが少しずつ語られながら、すみっこごはんの来し方も変化していきます。たくさんの別れに押しつぶされそうになりながら、楓は、自分の道も決めなければいけない高校卒業をひかえていました。
    瑛太くんとのこと、レシピノートのこと、家族のこと、あまりに多くのことがなだれ込んでいくので、ちょっと詰め込まれすぎな感もあるけれど、最後はこういうことだったと納得できる終わり方でした。
    これでもうほんとに終わっちゃうのかな。楓が大人になったら、すみっこごはんはどうなっているのか、また知りたくなります。

  • 寂しくて悲しくて、切なくて、途中は泣きすぎてしんどいくらい。
    でもきちんと最後まで読まなくちゃ。
    やっぱりお別れが寂しいけれど、旅立ちを止めることは出来ないから、ぐっとこらえて笑う。
    でも、美味しいごはんを通じてできたご縁は、優しく強く、ずっと残る。
    また再会したら、みんなでどんな話をするだろう?どんなごはんを食べるだろう。
    物語は完結のようだけれど、できればまた再開してほしいと思っている。

  • 『東京すみっこごはん』シリーズも第5弾。
    そして、最終巻になりました。

    『東京すみっこごはん』と出会ったのは2016年7月の事。
    母の入院中で、駐在先から母が1人暮らしをしていた実家に戻っていた時のことです。

    私自身の気持ちも落ち込んでいるときだったので、『東京すみっこごはん』は心の真ん中にずどんと響きました。
    気持ちも沈み、食欲がなかったこともあり、食べることが疎かになっていた時でした。
    『東京すみっこごはん』を読んでいると、食べること=生きること。
    生きること=母の愛を感じること。
    しんどかった気持ちが、少しだけ解き放たれたようでした。



    東京のとある町の片隅にある「共同台所 すみっこごはん」
    その看板には ” 素人が作るので、まずい時もあります ”
    なんて、書いてある。

    「すみっこごはん」を守って来た常連さんたち。
    そして、時々、この場所に引き付けられるようにしてやってくる人たちがいる。

    「すみっこごはん」に集う人たちにとって、ここは欠かせない場所で、心のよりどころ。
    時には心に溜まった荷物を、少し下ろせる場所でもあって…

    シリーズが進むにつれ「すみっこごはん」に集う人々にも、それぞれ新たな道が。
    第5弾では悲しい別れもあって。
    辛すぎる…

    だけど、きっと「すみっこごはん」はずっと続いていくはず。
    新たな一歩を踏み出して!

  • 出会いがあれば別れもあるものだけれど、あまりにも一気に別れがやってきて、必死に気持ちを立て直そうとする楓が痛々しかった。
    それでも、悲しい別れだけではなくてよかった。
    あの子も立ち直ってくれていたし。
    レシピノートの件は、想像していたのが当たってなんだか嬉しい。
    シリーズは完結だけど、すみっこごはんはずっと続いていく。

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著者プロフィール

1975年青森県生まれ。東京外国語大学卒業。『月だけが、私のしていることを見おろしていた。』で電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞し作家デビュー。シリーズに『東京すみっこごはん』『今日は心のおそうじ日和』がある。著書に『ベンチウォーマーズ』『ハレのヒ食堂の朝ごはん』『坊さんのくるぶし 鎌倉三光寺の諸行無常な日常』『世はすべて美しい織物』『時かけラジオ 鎌倉なみおとFMの奇跡』『いつかみんなGを殺す』などがある。

「2023年 『月はまた昇る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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