人はなぜ学歴にこだわるのか。 (知恵の森文庫 a お 8-1)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334783501

作品紹介・あらすじ

「学歴はワインと似ている。中身を鑑定するより、ラベルで判断する方が面倒が少ない」「学歴は環境問題と似ている。抽象的な正義に賛成しながら、現実面では野放図なままである」-就職、恋愛、結婚、出世、人間関係から、有名人学歴スキャンダルにいたるまで、学歴という踏み絵をテーマに、縦横無尽に著した刺激的書。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと下品な感じもしますが、面白く読めました。結局のところ学歴にこだわるのは差別だそうです。しかもその差別は差別される側とする側が同じ人というところもポイントです。あるときは差別する側、またある時は差別される側。難しいですね。それにしても著者の出身校が早稲田大学。生まれ育ったのが初の勤務先の赤羽。何か運命感じちゃいます。

  • P20
    生まれてこの方自分でランキングを作ることを学ばず
    (つまり自分固有の価値観を持たず)
    他人にランク付けされることだけに慣れてきた人々は
    結局、他人に押し付けられた価値観の中に身を置いて
    自己確認をするほかに
    生きる術を持たない

    P79
    怨念なんかで勉強したところで
    何が生まれるはずもない。
    そういう意味では父も私も間違っていたのだ

    P79
    学問の府であるべき場所に
    不純な憧憬や敬意や呪詛を抱いていた
    私たち親子は
    学問とはほど遠い人間であった

    P112
    真剣な交際ほど
    打算的だってこと

    P140
    対象を賞賛しているようでいて
    結局はおとしめている

    P140
    高卒で出世するためには
    「温厚」だとか「好人物」だとかいった
    なまやさしい評価を得るようではダメなのである。
    イヤミったらしいくらいに
    能力を誇示するタイプだったり
    変わり者だと思われかねないほど
    競争好きだったり、
    付き合いにくいくらい仕事熱心だったり
    戦闘的なほど実績志向でないと
    なかなか上に上がることはできないわけだ

    P192
    受験戦争が不毛であることと
    不毛な競争から撤退することは
    まったく別の話なのだ ※

    P194
    自己保身と我欲と虚栄心の充足のために
    勉強している

    P211
    学歴=ペーパーテスト巧者
    の社会的不適応傾向について

    P228
    当事者にとって難しいのは勉強そのものではない。
    むしろ、異常な勉強量をこなし続けるために
    「どうやってモチベーションを持ちこたえるか」
    といったあたりが現実的な問題になる

    P229
    テストというのはまったく個人的な体験だ。
    対して、教室で行われる授業は
    あれは一種のコミュニケーションだ

    P230
    私が学校で身につけるべきだった資質は
    学力ではなく、
    くだらない話に興味ありげにうなずいて
    みせる能力であり
    わかりもしない話を聴きながら
    わかったふりをしてみせる態度だったのである

    P235
    何であれ、何かに対する執着を絶ち切るためには
    その対象について
    くよくよ考え続ける以外に有効な方法がない ※

  • 著者の文章はすごく好きなのだけど、これははずれ。
    なんかだらだらとまとまりのない話を垂れ流しているだけで、はっとする表現とか洞察とかは少ない。

  • 学歴というおおっぴらに言えない割に毎日のように耳にする話題について書かれた本。
    従妹が結婚すると聞いて「で、相手はどんな人なの?」「慶應の経済を出ている人よ」「なるほど。慶應の経済か」「おい、俺が分かったんだ?」
    という一連の言い回しは珠玉でした。

  • まだ小田嶋隆が若い時の学歴に対するエッセイ。毒が今よりも利いている感じ。

  • この著者の本は初めて読みましたが、文体が独特です。
    学歴云々よりも読み始めたときはそちらに気を取られてしまいました。
    しかし、最後まで読み進めると文体を受け入れつつも気を取られることはなくなり
    この人は自身の学歴と、世間の学歴社会とに大きな切り込みを入れたのだ思うに至りました。
    また本著は論文などとは異なりますが、自身の経験、聞き取り調査を行ったうえでの執筆であり素晴らしいとも思いました。

  • 当事者と傍観者という2つの視点.学歴に限らず問題を語るにしてもその2つの視点のいずれかから述べざるを得ないということに自覚的になるべきだ.
    要は他人事は好き勝手言えるけど、自分の事になるとそうはいかないってことですね.

  • 「人はなぜ学歴にこだわるのか」という問い自体に潜む罠に自覚的な人だけが書ける論考。

  • 学歴は、多くの人が当事者。加害者であり、被害者。
    そしてまた多くの人が、主張として学歴主義は良くないと思いながらも、現実は自分のこどもを塾に通わせる。

    学歴コンプレックスとかそういうのでかたづけられるほど、簡単な問題じゃないことに気づいた。5年くらい前の本だけど、ちょっと内容が古く感じるところもあったから、この問題は時代を反映する問題なんだと思う。

  • 小田嶋隆は僕が最も尊敬する物書きの1人であるが、その理由は彼の視点が鋭い(分析が深い)こと、文章が面白いことの2点である(後者は駄洒落めいたものも多く意見が分かれるところであると思うが、僕は好き)。

    前者が特に大事なのだが、世の中にはテレビのワイドショーを筆頭に浅くてくだらないことを言う人間が多く、かつそれをそのまま信じている人間が多い中で、やや斜に構えすぎに見えるオダジマさんの切り口は実はもっとも納得感のある分析になっている。

    例えば、日経オンラインに書いていたオリンピックが何故盛り上がらないか、の論などは世間の薄っぺらなオリンピックブームを正しく切り取っていると言えるだろう(オリンピックが盛り上がらないのは、いつしかトップアスリートを見るものから同国人を応援するものへと変わったから)。

    で、今回の本は後者については充分そのクオリティを担保していると思うが、前者はやや心もとない。

    切りつけた切り口は斬新だが、学歴社会の肝を取り出すまでは行かなかったというのが所感である。

    コラムニストの性癖というべきか、1つ1つのエピソードが全体を通した解決策を提示するというような構成をとっていないという原因もあるだろう。



    個人的な見解としては、人が学歴にこだわるのは、自分の価値観というものを確立できないからであり、その背景には個人の確立していない世間の中に生きる日本人という要素が大きいと思うが、変えるために必要なのはやはり教育であろう。

    学校の価値観が世間にはびこる学校化(学歴社会)を解消するには、かなりドラスティックな変革が必要だと思うが、例えばテストを廃止して論文にするとか、義務教育課程を大幅に削減するとかすれば効果は見込めるのではないだろうか。

    こうしたアイデアには必ず、それでは国力が低下するだのといった批判が聞かれるが、そうした批判自体が既に学力→GDP=国力という一元的な価値観にとらわれた発想である。

    国の豊かさは平均的な人間を多く生みだし、マニュアルに沿った作業を適切にこなさせることによって生まれるものだとは限らない。多様なものが混ざり合って新たなよくわからないものが生み出されるという世の中に希望を見出していくのが真の持続可能な"発展"ではないだろうか。

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著者プロフィール

1956年東京赤羽生まれ。早稲田大学卒業。食品メーカー勤務などを経て、テクニカルライターの草分けとなる。国内では稀有となったコラムニストの一人。
著作は、『我が心はICにあらず』(BNN、1988年、のち光文社文庫)をはじめ、『パソコンゲーマーは眠らない』(朝日新聞社、1992年、のち文庫)、『地雷を踏む勇気』(技術評論社、2011年)、『小田嶋隆のコラム道』(ミシマ社、2012年)、『ポエムに万歳!』(新潮社、2014年)、『ア・ピース・オブ・警句』(日経BP社、2020年)、『日本語を、取り戻す。』(亜紀書房、2020年)、『災間の唄』(サイゾー、2020年)、『小田嶋隆のコラムの向こう側』(ミシマ社、2022年)など多数がある。
また共著に『人生2割がちょうどいい』(岡康道、講談社、2009年)などの他、『9条どうでしょう』(内田樹・平川克美・町山智浩共著、毎日新聞社、2006年)などがある。
2022年、はじめての小説『東京四次元紀行』(イースト・プレス)を刊行、6月24日病気のため死去。

「2022年 『諦念後 男の老後の大問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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