エッシャーに魅せられた男たち 一枚の絵が人生を変えた (知恵の森文庫)

著者 : 野地秩嘉
  • 光文社 (2006年11月7日発売)
3.57
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  • レビュー :12
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334784492

エッシャーに魅せられた男たち 一枚の絵が人生を変えた (知恵の森文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  入手から9年を経てようようと読む。エッシャーという画家は、かつてジグソーパズルの絵にあったので記憶があった。この人に凄い思い入れを持ち、東奔西走する人たちがいた、というのがまず驚く。さらにマガジンに連載されたというのも(自分の生まれる前に)。色んな話を当の本人に聞けた、という感じの本。

  • この本で紹介されている「甲賀コレクション」の展覧会を、当時観に行きました。
    そして「四分冊の豪華な」図録も、当時学生だった身分にはかなり高価でしたが、無理して買いました。
    今、その図録を改めて見返してみると、この本の登場人物たちの名前がずらっと並んでいることに気づき、とても感慨深く思いました。

  • 新書文庫

  • エッシャーの解説ではなく、それを取り巻く群像劇でした。でも何と言うか思い込みがムーヴメントを産み出す不可欠の要素なんだと改めて実感。結構引きこまれて読みました。
    そしてエッシャー然りだが、ウィーン派の日本での認知・地位確立の歴史の浅さに愕然、そりゃ絵画における世界は程遠い訳です。歴史と広がりと深み、全てが不足した土壌に生きていることを改めて実感です。

  • エッシャーの絵に入れ込んでいく男達。
    コレクションとして絵を買う様子、エッシャーを少しでも多くの人達に見せようと展覧会を企画する様子など、面白いエピソードが目白押し。
    魔術のような魅力を持つエッシャーの絵とその世界観は真の芸術の力ゆえのものであることがわかる。

  • すごく面白かった。

  •  2006年11月から2007年1月にかけて、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催された「スーパーエッシャー展」。当時東京に住んでいた僕はさっそく観に行ったのを憶えている。エッシャーといえば上下左右の感覚がおかしくなったりとか、遠近法が奇妙に歪んだ作風が有名だ。誰でも一度はその作品を目にした事があるんじゃないかな。
     僕自身、特に美術に詳しい訳ではなく、面白い絵を描く人、ぐらいの認識で出かけたのだ。
     そして魅了された。ワクワクするような感性の世界に取りこまれてしまったかのようだった。

     自分の思い出を長々と書いてしまったけど、この本はタイトル通りエッシャーに魅せられた人々を取材したノンフィクションである。エッシャーに人生をかけた男たちの群像。それはエッシャーを通して描かれる彼らのまっすぐな生き方。
     単行本時のタイトルは「エッシャーが僕らの夢だった」という。一枚の絵に魅せられて夢を追い続けた人々の姿だ。
     解説は羽生善治氏。エッシャーの絵もたくさん収録していて、眺めているだけでも楽しい。

     ちなみに前述の展覧会、人がいっぱいいて疲れたけど、ニンテンドーDSが鑑賞用ガイドとして無料で貸し出されていて、それを片手に様々な作品を見て回り夢中になった。現代のエンターテイメントのテクノロジーがエッシャーと共鳴し合ったのである。いつの時代も先端の感性は人々の心を魅了するのだ。
     この展覧会のサイトはまだ残っているようなので、雰囲気だけでも味わえるのではないか。印象的なBGMが流れている。

  • エッシャーの魔術に翻弄され奔走する男達の物語。60、70年代という高度経済成長期にあって、自分の仕事を成して行く男達が入れ替わり立ち替わり描かれて行く。その核となっているのがエッシャーの作品、もしくはその複製である。


    様々な業界•役職を移り変わる主人公と共に職業を横断しながら各々の業界で異端と見做されている行動をとり成功して行く主人公達。その発想のエネルギー源は常に若者の側にある事を見抜いており逆境や逆風にも動じない。そこに社会的評価への諷刺としてなのか常にアウトサイダーとしてのエッシャーが描かれる。何故こんなにも認められないのか、と主人公達は現実との軋轢のなかでもがき苦しむ様子が読者の想像の中でエッシャーの芸術的評価の歴史に投影される。


    本書の良い点は、正確に当時の各職業の現実と問題点を精緻に描きながらもストーリー性やテンポを重視しながら展開していくその時々の主人公の個性的な語り口にある。業界の問題点など読むには煩雑な事柄も話の展開や意外性と絡み合っていて実に読み易い。また、アートに触れない人々をどうやって引き込むかを話の本筋に添えているので、本書自体も教養的な敷居はそう高くないし難しい議論も為されていないと思う。

    その時代の著名な作家、芸術家、デザイナー、資産家、政治家など知っていればより楽しめると思う。もちろんエッシャーを知っていれば日本の家庭にどの様に輸入されたのか、その経緯、そして奔走したのはこんな男達だったのかと様々な驚きと発見がある。


    個人的には少年マガジンの表紙にエッシャーを用いた大伴昌司の件がドラマティックで、またエキセントリックな生き様とキャラが面白く当時のマガジンの表紙を図書館に見に行きたくなりました。

  • (2009.01.30読了)
    マウリッツ・コルネリス・エッシャー、1898年6月17日にオランダで生まれました。
    版画の制作を学び、建築を学び、装飾美術への道を勧められます。
    1921年から、イタリアで過ごすことが多くなります。
    1937年、エッシャーの不思議な絵の始まりとなる「メタモルフォーゼ」を制作
    1972年3月27日、死去、享年73歳

    エッシャーの不思議な絵を見てその魅力に取り付かれた人は多いのではないでしょうか。僕も、一度見て以来、展覧会が開かれるたびに見てきました。
    この本は、「エッシャーに魅せられた男たち」の物語であるとともに、日本におけるエッシャー紹介の歴史でもあります。
    日本で最初にエッシャーが展覧会で展示されたのは、神奈川県立近代美術館で1953年に開催された「現代オランダ版画展」においてとのことです。5点展示された。
    1965年、洋書の輸入販売を担当していた、河井藤江さんは、目録でエッシャーの本を見つけ5冊輸入し、一冊をイラストレーターの真鍋博に持っていった。(67頁)
    真鍋は、エッシャーの本を見せられると即決で、購入した。真鍋は、エッシャーの画集を彼の事務所を訪れる者の中で喜んでくれそうな相手に披露していた。1968年に、エッシャーの絵に興奮し、食いつかんばかりに見つめる男に出会った。(70頁)
    その男が、フリーランスの編集者大伴昌司だった。彼は、「少年マガジン」の表紙や特集ページの構成を担当していた。
    大伴は、「これ貸してくれませんか。「少年マガジン」で紹介したいから」と切り出した。
    こうして、1968年の8月11日号から12月15日号まで18週にわたって「少年マガジン」の扉ページをエッシャーの作品が飾ることになる。エッシャー作品の楽しみ方の解説は、真鍋が担当した。(当時僕は、大学生で、残念ながら、漫画は読んでいなかった。「少年マガジン」の表紙の話は2006年末から2007年初めの会期で開催されたBunkamuraザ・ミュージアムの会場で知りました。何点か展示されていました。)
    新聞で、エッシャーを紹介したのは、朝日新聞の坂根厳夫である。(86頁)
    1969年に「美の座標」で紹介し、さらに1975年12月から掲載の「遊びの博物誌」のなかでも紹介した。坂根は、生前のエッシャーにもあっている。
    日本での展覧会を開きたいと奔走した男は、新藤信である。
    エッシャーの版画は、正当な芸術とは言い難いので、公立の美術館では、展覧会は開催できないのだそうです。そうなると、私立の美術館か、百貨店ということになります。
    日本で最初のエッシャーの展覧会は、1976年4月16日〜5月5日の会期で、西武美術館で開催されました。(僕が最初に見たのも西武美術館だったように思うのですが、このときだったかどうかは、不確かです。東京近郊に住んでいたことは確かなので、可能性はあります。)
    新藤は、エッシャー展の図録に文章を書いてほしいと、坂根に依頼します。
    エッシャー展の主催は、東京新聞でした。新藤が東京新聞に企画を持ち込んだのです。東京新聞の事業部長は、夏目十郎で、彼は、エッシャーの絵を見たことがあったのです。
    見た場所は、神奈川県立近代美術館の収蔵庫でした。1953年に展覧会を開いた際に、一点購入したのだそうです。
    エッシャー展は、大変な盛況でした。
    その後、新藤は、エッシャー・コレクションを所持する、フェアミュレンの依頼で、コレクションの購入してくれる人を探します。
    購入したのは、甲賀正治です。彼は、1966年に、アメリカ兵からエッシャーのポスターをもらい、部屋に貼ってみていたのです。
    購入の話が舞い込んだのは、1986年5月です。彼は、個人で銀行から借金をして購入しました。あとで、税務署からあれこれ言われたようです。
    (このコレクションは、現在日本にはもうないようです。)

    著者 野地 秩嘉(のじ つねよし)
    1957年、東京都生まれ
    早稲田大学商学部卒業
    ギャラリー・プロデューサーを経て、ノンフィクション作家に
    1994年、『キャンティ物語』でデビュー
    (2009年2月15日・記)

  • エッシャーは当時故国オランダでは風変わりなGD程度しか評価されていなかった。エッシャーの家庭は裕福で自身は働かず家庭を持っても生活費は仕送りに頼り社交嫌いで仕事中は家族でも話すことを禁じた。やがて家族は彼から離れ息を引き取るときには家族は誰も駆けつけなかった。弟子も誰ひとりいなかった。エッシャーの父は土木技師である。彼は自然や人間に何かを求めていた芸術家だろうか。彼はきっと生まれてから死ぬまで頭から設計図面が離れなかったんじゃないか。エッシャーという画家はいったいどこまでボクたちをはぐらかす気なのだろうか。1993年作「花火」野原に集まった観衆のど真ん中から花火師が大空に向かって一発の花火を打ち上げている。「おお。」「ほう。」そんな声が木霊しているような妙にふつうの一枚の絵。誰も騙されていないし意図するものも感じられない。また騙されたような気がするだけだ。

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