エッシャーに魅せられた男たち 一枚の絵が人生を変えた (知恵の森文庫)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334784492

感想・レビュー・書評

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  • エッシャーの解説ではなく、それを取り巻く群像劇でした。でも何と言うか思い込みがムーヴメントを産み出す不可欠の要素なんだと改めて実感。結構引きこまれて読みました。
    そしてエッシャー然りだが、ウィーン派の日本での認知・地位確立の歴史の浅さに愕然、そりゃ絵画における世界は程遠い訳です。歴史と広がりと深み、全てが不足した土壌に生きていることを改めて実感です。

  • エッシャーの魔術に翻弄され奔走する男達の物語。60、70年代という高度経済成長期にあって、自分の仕事を成して行く男達が入れ替わり立ち替わり描かれて行く。その核となっているのがエッシャーの作品、もしくはその複製である。


    様々な業界•役職を移り変わる主人公と共に職業を横断しながら各々の業界で異端と見做されている行動をとり成功して行く主人公達。その発想のエネルギー源は常に若者の側にある事を見抜いており逆境や逆風にも動じない。そこに社会的評価への諷刺としてなのか常にアウトサイダーとしてのエッシャーが描かれる。何故こんなにも認められないのか、と主人公達は現実との軋轢のなかでもがき苦しむ様子が読者の想像の中でエッシャーの芸術的評価の歴史に投影される。


    本書の良い点は、正確に当時の各職業の現実と問題点を精緻に描きながらもストーリー性やテンポを重視しながら展開していくその時々の主人公の個性的な語り口にある。業界の問題点など読むには煩雑な事柄も話の展開や意外性と絡み合っていて実に読み易い。また、アートに触れない人々をどうやって引き込むかを話の本筋に添えているので、本書自体も教養的な敷居はそう高くないし難しい議論も為されていないと思う。

    その時代の著名な作家、芸術家、デザイナー、資産家、政治家など知っていればより楽しめると思う。もちろんエッシャーを知っていれば日本の家庭にどの様に輸入されたのか、その経緯、そして奔走したのはこんな男達だったのかと様々な驚きと発見がある。


    個人的には少年マガジンの表紙にエッシャーを用いた大伴昌司の件がドラマティックで、またエキセントリックな生き様とキャラが面白く当時のマガジンの表紙を図書館に見に行きたくなりました。

  • バブル当時に流行っていたDCブランド,ニコルのお偉いさんが色々あってエッシャーコレクションを買う事になったという話.コレクションを買うという事は,その作者の人生を背負うという事にもなるんだねぇ

著者プロフィール

野地秩嘉(のじ・つねよし)
ノンフィクション作家
1957年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経て現職。人物ルポルタージュ、ビジネス、食、芸能、海外文化など幅広い分野で執筆。著書は『サービスの達人たち』『イベリコ豚を買いに』『トヨタ物語』『スバル―ヒコーキ野郎が作ったクルマ』『高倉健インタヴューズ』『日本一のまかないレシピ』『キャンティ物語』『一流たちの修業時代』『ヨーロッパ美食旅行』『ヤンキー社長』『新TOKYOオリンピック・パラリンピック物語』『京味物語』など多数。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。

「2022年 『伊藤忠 財閥系を超えた最強商人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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