手塚治虫大全〈1〉 (光文社知恵の森文庫)

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  • 光文社
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334785161

作品紹介・あらすじ

「ぼくをマンガ家に育てた恩人は、なによりも母だった」-医者よりもマンガ家への道を後押ししてくれた「母の肖像」、阪大医学部を卒業後、2度の就職体験をした「サラリーマン落第の記」、アニメに懸けた夢がついえかけた「どん底の季節」…など、人生の曲折を吐露した自伝的エッセイ集。異色マンガ、幻の傑作小説、貴重な未収録エッセイも発掘掲載。

感想・レビュー・書評

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  • 積ん読チャレンジ(〜'17/06/11) 20/56
    ’16/10/13 了


    昨年「神保町ブックフェスティバル」で入手した本。
    日本ストーリーマンガの祖たる手塚治虫と言う人物を知りたくて購入。
    書籍としての面白さで言うと……正直凄く微妙。
    というか面白くは無かった。

    戦時中にも書きためた原稿は三千枚を優に超すほどという。
    一年間でボツ原稿を500ページ描いたと言う鳥山明先生のエピソードは有名だが、手塚治虫先生のこのエピソードも合わせて語られて良いと思う。
    熱量が凄まじすぎる。

    書を読ませれば速読、ペンを握れば速筆で知られる先生。
    虫プロ商事の赤字を補填するために一ヶ月に500枚の原稿を書いたこともある、と本書で語られているが、凄い話だ。
    生涯に生み出した作品数を考えると、それも決して嘘ではなかろうと思えてしまうのが恐ろしいところ。
    生涯作品数で更に上を行く石ノ森章太郎という化け物じみた漫画家もいるが……

    また、デビュー前に大阪毎日新聞の社長に対して、「暗い世間に灯をともすのはマンガしかない、そんなマンガにピッタリの手塚治虫の作品を採用せよ」(P69)と言った内容の手紙を送りつけていたというのだから、熱量もさることながら自信も大したものだ。

    また、戦争体験者と言うだけ会って思想にかなり好戦的な部分があるというのも新鮮だった。
    「予期しておった如く、敵は遂に沖縄本島に上陸を開始した。(略)敵の人的努力よりも物的努力の力によってなされたのだ。持てる国は結局、持たざる国に勝るのであろうか?
    否、それは量に於てのみ言える事であって、其の国力たるや量を差配する人間の力による。
    敵が五とだせば此方(こっち)は十だ。所が敵が十でこちらが五なる場合、五を十に対抗させる力はとりも直さず国民の熱意である。即ち人的努力である。
    故に、先ず第一は敵の人間を失わしめる事だ。米鬼(ヤンキー)--を殺すのだ。殺して、殺して、殺し尽くしてしまえば、物的攻撃何を恐るるに足らんやである。」(P49)
    この辺りなどは滅茶苦茶好戦的で驚いた。


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    気に入った表現、気になった単語

    「僕をマンガ家に育てた恩人は、美術の先生や出版社のまえに、なによりも母だったといまも思っている。」(P12)

    「軍国主義と入れ替わりに入ってきた民主主義なる代物も戦勝国の押しつけだけに、どこかインチキ臭いと思ったりもした。事実、ぼくらにとって民主主義とは焼跡と空腹の生活の代名詞に他ならなかった。」(P68)

    「どうしても闇市に足が向いてしまう理由は物質的な欲望だけに限らなかった。物質的な飢えと同時に、僕は精神的にも飢えを感じていた。この意味でも闇市にはなんでもあったのだ。現在の人間が忘れてしまっている人と人との結びつきの確かな温もりやら、貧しさ故の平等感覚やら、生活のいたたかな息吹やら、どす黒いエネルギー、かすかな自由の香りなど人間にもっとも必要なありとあらゆるものがそこにはあったような気がする。」(P69)


    「おみやげの景品に、この「砂漠の魔王」の復刻の合本がくばられた。それを見ると、じつにこの絵物語、かのマーブル・コミックの「ハルク」や、「ファンタスティック・フォー」に勝るとも劣らぬ見事なコミック・ストリップなのだ!」

    「たいていの仲間は、ある程度キャリアや技術が固まると、作品が老けこんでいく。ぼくはそうはなりたくなく、若くありたいために仕事をつづけたのだ。いや、仕事という女房に若くあってほしいのでつづけたのだ。」(P135)

    「マンガはたしかに子どもに受けた。いろんな理由はあるでしょう。だが、その重要な要素の一つに、何はともあれ子ども自身の夢をえがこうと努力した結果が出ているのです。(略)いまだに、宮沢賢治なグリムやアンデルセンの作品が通用している今日の児童文学界に、ここらでそれ以上の夢をえがく人が生まれてもいいはずなのに……。」(P281)
    児童文学者に宛てた文。

  • 案外軍国少年だった。
    宝塚近くに住んでたからのリボンの騎士
    トキワ荘からは案外早く引っ越した。
    経営はしてはいけなかった・・・。

  • 母親の素晴らしさ、子供時代、戦争時のちょっと時代に流され気味な日記、漫画との向き合い方、アトムについて、短編、様々な随筆等。
    どんな随筆にもぽかりぽかりと金言が浮かんでいて、当人はそんなつもりは全くなかろうが、やはり天才と思わせる。
    アイデアが出ないときは数日でないし、その苦しみは常人には分からないとか書いているあたり、とても常人的感覚を持ち合わせた方だったのだろうが、漫画がすごいからもう何も言えない。賢治の短編を題材にした短編マンガやまなしも素晴らしかったし、傑作小説集も読んでいて彼の漫画が目に浮かぶようでした。特に太陽の石、やばい‥‥。
    アニメーションに意欲を燃やし、虫プロ社長なのに社員の給料を上げるべく役員と対峙し、クラシックを聴き、尊敬すべき人の良き点を書き‥‥
    まっすぐで、素直で、好奇心があって、でも等身大。
    手塚先生大好き。

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著者プロフィール

1928年、大阪生まれ。漫画家。戦後漫画界の巨匠にして日本TVアニメの始祖。1989年没。代表作に『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『火の鳥』『ブラック・ジャック』他多数。全400巻の個人全集を持つ。

「2018年 『いばら姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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