日本語「ぢ」と「じ」の謎: 国語の先生も知らなかった (知恵の森文庫 t つ 3-1)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334785314

感想・レビュー・書評

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  • (後日再編集)

    戦後の教育方針で歴史的仮名遣いをやめ、常用漢字(当用漢字)を使うことになった。そのため本来の漢字とは離れた意味になる日本語はあやふやな決まりで覚えるしかなく、
    中盤は戦後の漢字に対する政府・メディア・民間の動きがわかる。
    また幼少期に古典を学ぶことがなくなり古来からの言葉に接することが少なくなったため、日本語の基盤がおろそかになっている現代は

  • 小学生の頃に、「鼻血」の「血」は「ち」なので、ふりがなは「はなぢ」と習った時に、じゃあなんで、「地面」の「地」は「ち」なのに、ふりがなは「じめん」なんだろう?と不思議に思っていました。

    答えから言うと、「現代かなづかい」ルールにおいて、

    ① 二語の連合によって生じた「ジ/ヂ」「ズ/ヅ」は、「ぢ」「づ」と表記する。
    ② 同音の連呼によって生じた「ジ/ヂ」「ズ/ヅ」は、「ぢ」「づ」と表記する。

    からだそうです。「鼻血」は①から、つまり「鼻」と「血」の連合からできているので、「ぢ」となり、「地面」は連合ではなく一つの単語だというのです。

    (ちなみに、②の例としては、「縮む(ちぢむ)」や「続く(つづく)」があります)

    しかし、「地面」だって「地の面」の連合じゃないの?と思う人もいるでしょうし、もっと変な例として、「大詰め(おおづめ)」、「差し詰め(さしずめ)」なんていうのもあります。

    ★★★

    本書では、何故このような混乱が生じてきたのかについて、歴史的経緯を含め丁寧に解説しています。
    かいつまんで要点を書くと、昔、「漢字は難しいので日本語は全て、ひらがなで表記しよう」という運動があり、その過程で生まれたものだと言うのです。

    やぁ。吃驚ですね。

    ★★★

    でも、笑ってばかりもいられなくて、当用漢字(今は、常用漢字になってしまったので使われていません)が制定された時に、当用漢字の1850文字に選ばれなかった難しい漢字に対して、「代用漢字」による書き換えルールが合わせて公布されたそうです。

    つまり、これまで使われていた漢字が難しいから似たのでいいよねということです。例えば、

    昏迷 → 混迷   撒水 → 散水   萎縮 → 委縮
    暗誦 → 暗唱   衣裳 → 衣装   交叉 → 交差
    骨骼 → 骨格   根柢 → 根底   尖鋭 → 先鋭
    煽動 → 扇動   戦歿 → 戦没   褪色 → 退色
    短篇 → 短編   註釈 → 注釈   沈澱 → 沈殿
    手帖 → 手帳   編輯 → 編集   掠奪 → 略奪

    といったものです。
    これらって、言葉の意味が微妙に変わってしまっていますよね。

    旧かなづかいについても同様で、「言う」の五段活用が「言わない」「言います」「言う」「言うとき」「言えば」「言え」「言おう」というように「わ行」と「あ行」の二行にまたがって不規則に変化するのもその影響だそうです。

    つまり、旧かなづかいなら、
    「言はず」「言ひたり」「言ふ」「言ふとき」「言へども」「言へ」「言はむ」
    と、きれいな「は行」の四段活用になります。

    ★★★

    「通じるのなら簡単なほうが学習時間が少なくて済む」という論理で制定されてきたこれらの日本語表記規則ですが、それによって言語感覚が鈍くなってしまうという大きな問題もあるのではないかなぁと考えさせられました。

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