オブリヴィオン (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334790011

感想・レビュー・書評

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  • 吉川森二37歳は妻の唯を誤って殺してしまい、六年間服役して出所しました。
    堀の外では実兄の吉川光一42歳と義兄の長嶺圭介47歳が待っていました。
    森二の父親は生前理髪店を経営していましたが、ギャンブルにのめり込み、長男の光一はヤクザになっています。

    森二は妻の唯と娘の冬香を深く愛していましたが、冬香と自分がDNA鑑定の結果血縁がないということが判明し、妻を問い詰め、誤って殺してしまいます。

    義兄の圭介とは17歳の時出会い、唯と圭介は両親を4年前に亡くし二人で暮らしていました。
    圭介は森二が光一とともにヤクザの道へ入っていこうとするのを、止めて、大検を取って、大学入学するのを勧めてくれ、自宅に招き、毎日森二の勉強をみてくれ大学を卒業させてくれた人物です。
    唯との結婚後も二人の付き合いは続き、森二ら家族三人と一緒にしばしば、食事をする仲で、圭介は冬香を溺愛していました。
    冬香が実子でないことを知ってからは、森二は血のつながらない兄妹であると聞いたことから、圭介と唯の仲を疑い始めます。

    一方、光一は出所した森二を、ヤクザの世界へ引っ張りこもうと手下の加藤・持田とともに、森二に嫌がらせを始めます。

    森二のアパートの隣の部屋に住むハーフの少女、沙羅が森二に助けてもらったことから、訪ねてきた10歳になる冬香の面倒をみてくれたり何かと世話を焼いてくれます。

    森二には光一ら家族しか知らないギャンブルに強い勘が働き大当てするという特殊能力があり、そのために大きな事件にと発展していきます。



    またヤクザの話か…と思いましたが、これは文句なく面白かったです。
    森二と圭介の最初の結びつきの話は大変気持ちよく読めて、まさか冬香が圭介の子どもだったら嫌だなと思いました。
    そしたら、この作家さん独特の横溝正史ばりの事実が待ち受けていました。
    とんでもない結末ですが、これも悪くないと思い納得でした。
    ただひとつ、唯が生き返ることがないのが、残念ですが、沙羅という少女の登場が救ってくれている気がします。

  • 妻・唯を殺害した罪で服役後、
    三十七歳の吉川森二は、他人との交流を拒み孤独に生きることを決めた。
    何より大切だった唯とその兄の圭介との絆は失われ、
    一人娘の冬香からも激しく糾弾される森二を、新たな試練が次々と見舞う。
    オブリヴィオン=忘却と赦し。赦されざる罪を犯した男に、救済は訪れるのか。
    闇の中でもがき生きる人間の痛みと希望を描く、


    本当に人間の後悔を描くのが上手い。
    過去を引きずり孤独に苛まれながらも、
    すれ違う心を通わせたいという人間の弱いところを炙り出すのが上手い。
    こちらの感情が嫌でも揺さぶられます。
    登場人物のひとつひとつの発言や行動、描写がグサグサと刺さります。

  • 森二が刑務所を出た日、塀の外で二人の「兄」が待っていた――。
    自分を責め、他者を拒み、頑なに孤独でいようとする森二。
    うらぶれたアパートの隣室には、バンドネオンの息苦しく哀しげな旋律を奏でる美少女・沙羅がすんでいた。
    森二の部屋を突然訪れた少女・冬香の言葉が突き刺さる──「私、あの夜のこと、憶えているんです。
    あなたは私の目の前でお母さんを殺しました」。
    森二の「奇跡」と「罪」が事件を、憎しみを、欲望を呼び寄せ、人々と森二を結び、縛りつける。
    更に暴走する憎悪と欲望が、冬香と沙羅を巻き込む! 森二は苦しみを越えて「奇跡」を起こせるのか!?


    はい!始まった瞬間から遠田先生ワールド炸裂です(*^-^*)

    刑務所を出た日、いなり二人の兄が外で待っている。
    本当の兄と、義理の兄。
    何なんだーーーーこのシチュエーションはっ!!!

    遠田先生ならではの書き方。もう最初は本当に何が何だかさっぱりわからない。
    どういう状況なんだー。コイツは何者なんだーーー!?

    それがページを追っていく毎に、次第に全貌が明らかになってくる。

    しかし、遠田先生の描く主人公は、色々な人が居るが、
    やっぱり「いい人」(*^-^*)

    遠田先生の描く「いい人」感。とても好きだなぁ~。

    この本も序盤からガッツリ掴まれ、平日あまり読書をしない私も続きが気になってついつい夜中に目が開いたタイミングで読み進めてしまったりした。

  • 遠田潤子『オブリヴィオン』光文社文庫。

    お気に入りの作家の一人、遠田潤子の長編小説を久し振りに読み、心行くまで堪能した。忘却、赦しという意味のタンゴの名曲『オブリヴィオン』をタイトルにした本作は、二つの意味を表現した重く、どこまでも深い、感動の物語であった。

    妻・唯を殺害した罪で服役していた37歳の吉川森二が出所したところから物語は始まる。森二を待っていたのは、森二の実兄・光一と唯の兄・長嶺圭介だった。

    赦されざる罪を犯した森二が忘却しようとしていた過去が少しずつ明かになり、いつの間にか登場人物全員の過去と現在とが複雑に連鎖していく。驚愕の事実と感動の結末は言葉では語り尽くせない。

    本体価格780円
    ★★★★★

  • 初読み作家さんだけど なかなか良い運びの作品だった。先ずはoblivionの意味を調べてから読んだ☺️ 皆さんの評価が高いので期待して読んだけど、テーマ的にはちょっと馴染まないから星3ヶにさせて頂きます。しかし女性作家らしい嫌味の無い話の展開なので興味深く読了いたしました♪

  • 著者初読み。
    ブクログの評価が高かったので、手に取った一冊。
    妻・唯を殺害した罪で服役していた森二。出所した森二を待っていたのは二人の兄。実兄でのみ屋をしている光一と、唯の兄である義兄の圭介。
    二人の干渉を避けながら生きることを決意する森二だったが、ある「奇跡」を起こせる森二を実兄の光一や周辺の人物は放っておかないし、圭介は唯を殺した事実を知る為に、森二に詰め寄る。
    妻・唯を殺した事実を一人で抱え込みながら、一人で生きると決めた森二だったが、そんな森二を襲う様々なトラブル。
    現在と過去を行ったり来たりする描き方はありきたりだが、再三登場する森二の「奇跡」の件があまり理解出来なかった。その「奇跡」がどれだけ森二を苦しめたのかは、ラストまで明かされない。
    事件が起きるまでの、森二、唯、圭介の関係性はとても好ましいもので、事件の全容が分かった時は少々複雑な気分になる。
    作品の厚みのようなものも感じるし、タイトルの「オブリヴィオン」もとても内容と合っていると思うが、全体に漂う森二が勝手に思い込んでいる罪悪感が、あまり理解出来なかった。私の理解不足かも。

  • 遠田さんの小説は、設定が重く救いようがないものが多い気がします。
    この主人公も、最愛の妻を自分で殺してしまい、兄はヤクザ、育ってきた家庭も荒れすさんだ家庭でした。
    重苦しい展開の中、次はどうなるのかと気になり、読み進んでしまいました。
    自分だけは自分自身でいることをあきらめちゃいけない、と思える本。


  • 初・遠田潤子さん。
    ざっくり、生まれ育った悪環境から抜け出すのは容易ではないという重いお話。

    森二一家は父親のギャンブル狂いで家庭崩壊。
    兄の光一とノミ屋を生業としていた森二は、ある事件で将来の義兄となる圭一と出会う。
    圭一は良家の育ちの大学院生で温厚な人物。
    森二に人生をやり直す機会を与えてくれた。
    共に応援してくれた妹の唯と結婚し娘にも恵まれた。
    なのに、なぜ唯を殺したのか。
    それはそれは複雑に絡まり合った不運のドミノ倒し。絡まってるから綺麗には倒れないのがポイント。

    予想つくところと私には不発なところがあったので
    強引に複雑にしているようにも感じましたが。

    足を引っ張る。と言うのは上を目指してる者同士のイメージだったのですが、ここでは一人だけ悪環境から出ようなんて許しまへんで(大阪舞台なので関西弁で)という下へ引き込む話で使われていて、頑張っても無駄という無力感が絶望しか生まず、悪環境から抜け出すのは相当難しいものだとズンと胸が重くなりました。
    最後の方に明らかになる森二の過去。親から受ける体罰とその理由があまりにも身勝手で酷く、それを知ってから見る表紙の絵は悲しいです。

    隣に住む少女は指名手配の父親の帰りを待って、アルゼンチンに住む母親に会いにいく希望を持って真面目に一生懸命生きています。その真っ直ぐさ、胸が痛いです( ᵕ ᵕ̩̩ ) ズル賢いヤツらがいい目を見るのはやりきれない。
    重い話ではありましたが光は見えたと思います。

    ⚫︎オブリヴィオン
    忘却・人事不省
    恩赦・大赦


  • 相変わらずの遠田節炸裂。文庫化を心待ちにしていたもの。やっぱりテーマは贖罪で、どれも似たり寄ったりと言ってしまえばそれまでかもしらんけど、その都度味わわされる強烈なカタルシスは、他に代え難いものがある。今回は、ちょっとした超能力をまぶされているのが新機軸。極端に非日常的な力だと、物語の根底を揺るがす瑕疵になりかねないけど、本作においては良いアクセントになっていて、使い方もお見事。クライマックスも含め、存分に楽しませてもらいました。

  • とても重々しい気持ちで読み切った。傷ついた人との接し方。人なんてどんな傷を背負っているかわからない。やり直しの効かない人生なんてない。

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著者プロフィール

遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補、16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年に『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞受賞。同17年『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。2018年、『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補、’20年『銀花の蔵』が直木賞の候補作に。人間の抱える理不尽に迫る、濃密な世界を描く。

「2022年 『人でなしの櫻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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