正体 (光文社文庫 そ 4-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (618ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334792947

感想・レビュー・書評

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  • 主人公 鏑木の逃亡生活と、期せずして彼と関わる人たちの人生が重なり、さながら人間交差点そしてロードムービーでもある。
    彼らも各々ひとかたならぬ事情を抱えているが、鏑木との一瞬の交わりで何かを感じ、そして…。

    冒頭の第1章で核心に近い場面を読ませる構成の巧みさにより一気に読み進めてしまう。

    冤罪という重いテーマだがエンタテインメントとして読ませ、それでいて決して軽くはないものに昇華した筆力に脱帽。

  • 一家3人を惨殺し、死刑判決を受けた少年死刑囚の逃走劇。

    工事現場、在宅ライター、スキー場の住み込み、新興宗教、グループホーム。
    様々な職場、場所で出会う人々は、彼が本当に殺人者なのか?を自問していきます。

    彼の正体は殺人者なのか?
    それとも...
    逃亡を続けるその目的は?

    最終章で明らかになるその真相。
    という展開です。

    ありがちなストーリ展開ですが、最後は切ないクロージング。

    これ、映像化されているということで、ググってみると
    亀梨和也主演でWowWowでドラマ化されたとのこと。

    見てみたい
    お勧めです!

  •  染井為人さん、初読みでした。600p超の分量でしたが、濃密な物語にグイグイ引き込まれ、続きが気になってページをめくる手が止まりませんでした。有意義な読書時間を過ごすことができました。

     一家三人殺害事件の犯人として拘置所に収容中の少年死刑囚が脱獄! この衝撃的な事案から約1年と4ヶ月間、逃亡中の少年の日常を他者の目から見て綴った物語、という構成となっています。

     鏑木慶一‥彼と出会う人みんなが好感を抱き、読み手も疑問を抱きます。彼は本当に罪を犯したのか、冤罪ではないのかと‥。
     少年の正体は聖人か、怪物か。一体この少年は何者なのか‥。一番知りたい鏑木慶一の心情が描かれないので、想像がふくらみます。その時々の小さなコミュニティ(職場)に入り込み、誰にも優しく接する反面、とらえどころなのない、近寄りがたく、ミステリアスな雰囲気を醸し出します。この辺の各登場人物・状況設定・関係性の描写が素晴らしく、不穏さともどかしさが助長され、読み手を更に惹きつけていきます。

     ネタバレするわけにはいきませんが、終末は何とも切なく、やるせない気持ちになります。
     本書には、少年犯罪、冤罪、死刑制度など、多くの議論対象が存在すると思います。ただ、当事者でない私たちにとって、残念ながら他人事になってしまうのは、避けられない事実でしょうか‥。
     それでも、ミステリーとして、エンタメ小説として、とても大きな価値ある一冊に違いありません。

    • あゆみりんさん
      本と珈琲さん、こんばんは。
      レビューを読み、少年の正体が気になって仕方がありません。
      染井さん、面白いらしいですし、図書館本が落ち着いたら読...
      本と珈琲さん、こんばんは。
      レビューを読み、少年の正体が気になって仕方がありません。
      染井さん、面白いらしいですし、図書館本が落ち着いたら読みたいです。
      2023/06/09
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      あゆみりんさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます。
      他の方のレビューを読むと、賛否がいろいろとあるようですが、私は肯定的に受け止め...
      あゆみりんさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます。
      他の方のレビューを読むと、賛否がいろいろとあるようですが、私は肯定的に受け止めました。
      ぜひ読んでいただき、少年の「正体」をご確認を!
      2023/06/09
  • 冤罪で少年死刑囚となった青年の逃亡劇。とても面白かった。

    この作品のテーマは「冤罪」や「真実」なのだろう。だがタイトルでもあるが、人の正体を感じとりながら知っていく上で自分の正体も含めてリンクさせていく。そのリンクした正体は未来へと。この感じが傑作だった。

    ストーリーとしては逃亡劇なのだが、その先々でヒューマンドラマがあり、鏑木と関わった人々がしっかりと自分自身と向き合う機会を得ている。そうして自分の正体を得ている。

    結末は悲しいものだがせめて真実と無実が作中で知れた事で彼が逃亡までして真実を得ようとした人生が報われた気がした。

  • 最近、大好きな作家になりつつある染井為人さん!


    若い夫婦と子供の三人を惨殺した罪で死刑を待つ少年死刑囚が脱獄!?

    脱獄先で色んな職業に身を置き人生に悩んでいる沢山の人達を意図せず助けていく。
    主人公の鏑木慶一は何故脱獄したのか?
    一体何をしようとしているのか?
    鏑木慶一は本当に罪を犯したのか?


    読めば読むほど鏑木慶一が人を殺したとは思えなくなってしまう・・・


    因みに、本作はコロナ禍無くオリンピックが無事に?開催されております。

    本書は、脱獄逃亡劇でありながら、賃金の高くない世界で一生懸命に働いている人達にスポットを当てた仕事小説にもなっています!

  • 『悪い夏』が良かったので、こちらも。

    とにかく切なかった。。。
    でも、現実に起こってしまっていることでもあるのか。

    死刑制度について考えた。
    被害者遺族の気持ちを考えたら死刑は当然、という思いもありつつ、今回の話のような場合もあるから、一概に賛成とは言えない。
    そして事件について証言することがちょっと怖くなった。
    自分の言葉でひとりの人間の運命が変わっちゃう(場合によってはひとりだけじゃ済まないか)って恐ろしい。それで救われる場合もあるはずなんだけど。そもそも人を裁くことって怖いなと思った。

    一家三人を殺害した罪で死刑判決を受けた鏑木慶一は脱獄してさまざまな場所で潜伏生活を送り逃亡を続ける。
    逃亡している途中で出会う人たちが「あの人ってもしかして・・・」と鏑木に気づく描写も、緊張感があってよかった。
    ずっと鏑木のまわりにいた人たちの視点から物語がすすんでいって、結局鏑木本人は自分の気持ちをほとんど語らず終わってしまうから、すごく悲しくてやりきれない。鏑木は逃亡中にどんなことを考えていたんだろうな。
    でも鏑木は優しい人たちと縁があって良かった。そう思わないとこの結末は悲しすぎる。


    「絶対じゃないってことをわかってもらいたいの。人が人を裁くのだから、間違いが起きるの。間違いは正さなきゃいけない。それを証明するためにわたしたちは戦ってるの。わたしは多くの人に彼の正体を知ってもらいたい。本当の姿をわかってもらいたい。」

  • 誰か!助けて下さい!!
    こちらはオーディブルで拝聴したのですが、思わず世界の中心で愛を叫んでしまいました…(あの映画も辛かった)

    今まで読んだ中でも1番クライマックスで胃がキリキリしてしまい、脳内で上記の台詞を叫んでしまった次第。

    逃亡していた鏑木君が身を寄せていた土木建築現場、在宅Webライターの雇い主の自宅、スキー場の宿泊施設、パン工場、介護施設。
    それぞれに必ず存在した善意の人とのやり取りや鏑木君の我が身を省みない勇気ある行動に、度々涙を堪えていたのですが。
    宿泊施設で出会った痴漢の冤罪被害を受けた渡辺弁護士とのやりとりについに涙腺が崩壊。
    立ち寄った電気屋で恥ずかしい思いをしましたが、そんな事どうでも良い位に切なかった…
    (オーディブルならではの羞恥体験)

    善意の人も居れば、悪意の人も居るわけで。鏑木君が翻弄される度に誰か!(以下同文)となり、それはもう最後の結末がどうなるのかハラハラしっぱなしでした。

    真実が遂に明かされた時にはこの世に神はいないのか、といつもの如く天を仰ぎ、怒涛のように迫ってきた読者へのフルボッコに一旦再生を止めて今度は項垂れ、かと思うとその後にまた胸熱展開と、非常に揺さぶられた作品でした。

    エンディングを迎えた時にはもう人生1周してしまったかのような気分に。

    作者の後書きも読み上げて下さっており、これが興味深いものでした。
    「これはエンタメ娯楽小説に過ぎないが、言われのない罪を着せられ生活の自由を奪われた人も、冤罪で死刑宣告を受けた人も現実に存在するという事だけは頭の片隅に留めておいて欲しい」
    13階段でも問題提起されていた件ですが、私も巻き込まれない可能性が無い訳ではありませんので、色々と考えさせられました。

    そして、染井さんの最後の言葉にまた項垂れてしまいました。
    (ネタバレになりますので書けませんが、気になる方は是非とも後書きまでご覧になって下さい。)


    ここ最近、どうも涙脆くていけませんねぇ。

  • さりげない描写の一つ一つに仕掛けがあって、その仕掛けに気付くたびに満足度が増していきました。主人公の言動には事件の真相が見え隠れしていて、それを想像しながら読むのが面白かったです。分量は多いですが、各章ごとにはっきりしたテーマがあり、中だるみはありませんでした。読後感もスッキリとしていて全体的に読みやすい印象でした。

  • 冤罪…イヤな言葉ですね
    このイヤな言葉をテーマにした作品は初めて読みましたが、実に悲しく思うと同時に腹立たしい気持ちになってしまうのはアタシだけではない気がします。
    腹立たしいシーンの最たる描写は警察がターゲット確保してるにも関わらず発泡したシーンかと感じました
    あの行動の背景を想像すると許せない気持ちでいっぱいなのと同時に悲しい気持ちでいっぱい、あのシーンが本作品の正義と面子の交差する最大の見せ場ではと感じました、映画化されたと聞いたので、映画でのそのシーンに注目したいと思います。

  • 一家3人が殺された凶悪事件の死刑囚の逃走劇。
    犯人は未成年。
    心根が優しく誠実な少年に逃亡先で関わった人達は「本当に彼が人を殺したのか」疑問に思う。

    何故、彼は脱走したのか、どこに向かっているのか、過去、実際にあった事件を思い浮かべながら一気に読んだ。
    追われている犯人側の緊張感、犯人ではと感じはじめる周囲の人の緊張感もテンポよく描かれている。
    どんどん先を知りたくてハラハラしながらページをめくる手が止まらない。
    最終章で正体がわかるのだが、後味の悪さと虚しさが残る。
    なんとかならなかったのか、、
    それは、作者が、あとがきで謝っていることで救われた気持ちになる。

    テーマは「冤罪」。あってはならない国家犯罪だ。
    強い思い込み、自白の強要、間違った共感
    ひょっとしたら冤罪かもしれないと感じた関係者がいたとしても言えない空気感、
    冤罪が発生する仕組みの怖さを改めて知った。

    作者はエンタメ小説と記しているが、重いテーマ「冤罪」を考える機会になる本。
    多くの人に読んでもらいたいです。

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著者プロフィール

染井為人(そめい・ためひと)
1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー。本作は単行本刊行時に読書メーター注目本ランキング1位を獲得する。『正体』がWOWOWでドラマ化。他の著書に『正義の申し子』『震える天秤』『海神』『鎮魂』などがある。


「2023年 『滅茶苦茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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