今日の芸術 新装版 時代を創造するものは誰か (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334793111

感想・レビュー・書評

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  • 70年も前に書かれた本とはとても思えない普遍性を感じました。
    芸術と芸(芸道)のちがいはとても腑に落ちました。
    岡本氏はあくまで芸術寄りなので、芸道より芸術を重く置く傾向にありますが、その二つの違いという考え方自体は誰でもうなづけるものだと思います。
    そして誰もが表現すべきだという言葉には本当に勇気をもらえます。自分が何かを生み出した時の高揚感というのは、享受する事では味わえないものですから。

  • 岡本太郎氏の本は何かしら気付きがあるなぁ。よくよく考えれば「それはそうでしょうね」みたいな事でも日本では保守に走るから「前からこうやってきたから」「周りもこうやってるから」に流されて、まあ良く言えば「空気が読める文化」なんだろうけど真実を見ようとしてないだけだったりと

  • 芸術鑑賞も、
    それぞれの心の中で
    イメージを創りあげて見ていること、
    価値を創造していること、
    自分自身をつくっていること、
    などの点から
    創造なのだということが
    腑に落ちたし
    心に残った。

    根拠を示しながら、
    明快に描かれた本。

  • この本を読んで、「芸術は爆発だ」の意味が分かった。ただ、芸術だと思っていたものがバラバラに壊されて、自分が何を美しいと思うのか分からなくなってしまった。岡本太郎が抽象美術運動に近いこともあって、この本を読むと抽象絵画やシュルレアリスムこそ本当の芸術だと考えてしまうけど、ちょっと待って、と思った。

    「『名所絵はがき』のように、写真としてはつまらなくてもそれを通じて想像する景色に思いをはせて、あこがれるようなものです。また、いかに真にせまって描いてあるかという、技法について感心したとしても、これは芸術の問題ではありません。」
    -これまで、自分がいいなと思う絵はいくつかパターンがあった。その一つが、その絵の奥に広い世界を感じるもの、絵が別の世界への窓のように感じるものだ。だから、風景画やポスターなどテーマやモチーフがはっきりした作品が好きだった。また浮世絵を見る時は彫師や摺師の技巧にうっとりするのが好きだった。しかし、この文章を踏まえるとそれは絵そのものの芸術を評価してはいないのかもと思った。それから、自分の好きだった絵が急につまらなく思えてしまった。だけど、やっぱり違う世界に思いをはせたり、超絶技巧にうっとりすることも芸術の一つの魅力なのでは思う。だからこの文章には100%賛同はできなかった。

    芸術は己のなかにあって、知識や教養の垢にまみれてしまったそれを取り除いて噴き出させるのが創造である、という文脈を知って、「芸術は爆発だ」の意味を深く理解できた。
    また、描いてある意味を理解しようとするのではなく、己の芸術と呼応させるのが鑑賞なのかも、と思った。芸術は分かろうとするのではなく、ただまっさらに感じたらいいんだ、と思うと、抽象絵画や現代アートを見て何が描かれているか分からない時に感じた困惑や強張った態度が優しくほぐれていった。

    自分は映画や本や美術を見ること・読むことが趣味だったけど、それに没頭した後は何故か空虚で物足りない感覚があった。第1章を読んで、それは創造をしていないことから生まれる虚無なのだと気づいた。芸術は生きるための喜びであり、創造がその本質。すなわち創造が最大の娯楽であるという筆者の考えは、サブスクやYouTube で受動的な娯楽が格段に増えた現代の横っ面を引っ叩くようなインパクトがあった。
    では自分では何が創造できるか、と考えた。
    鑑賞も自分の心の中に自分なりの作品を映し出すことだから、創造的行為であるという指摘から、今の趣味を創造的に発展させることもできるのでは、と思った。意思を持って、挑戦する姿勢で鑑賞する。これも1つの創造だとすると、鑑賞の姿勢がまた変わってくるなと思って面白かった。
    また、本や映画の感想を書くときにスッキリした感覚になるが、これこそ創造の楽しさなのかも、と思う。感想を言葉にするという創造を、これからも続けたいと思った。
    普通に、絵も描いてみたいと思った。

    芸術はうまくあってはいけない、という指摘は、芸術をより広く身近なものにさせる一方、じゃあ上手い下手ってどうやって決めたらいいの?と思った。美大受験がまさに直面している問題なのではと思った。「芸術はけっして型ではありません。」という岡本太郎は、今の受験制度や美術教育をどう考えるのだろうと、聞いてみたくなった。

  • 鑑賞とは価値を創造することそのものであり、受け手が作品と向かい合い率直に感じる事、また自ら筆をとる意味を説くあたりに、趣旨のエッセンスが凝縮されている。なので、芸術は向こう(西洋)のものだと崇めたり、古来からの美術品を無条件に奉ったり、権威や大家に価値観を置くことは、必然著者の主張とぶつかる。こういう人が戦後すぐに現れた(芸術活動は戦前から)こと自体に、むしろ当時の日本の底力を見る気がしてならない。反対勢力も多かったらしく、文中鋭い舌鋒も散見されるが、内容的には、芸術の歴史を踏まえ、例え話を用いつつ論理的に構成されたもので、彼の絵画より分かりやすいほど。18世紀まで王侯貴族を相手に絵を描いていた職人が、客層がブルジョワの時代に移り、何を描くべきか模索した結果「芸術」が生まれたという話は、作品の創り方も売り方も一層多様化した現在において、新しい芸術のあり方を予感させるような示唆も感じた。

  • 読んでると絵が描きたくなるし美術館に行きたくなる。

  • 絵をかけは、自分の殻を破るってことのなのかな
    とにかく、自分に自信を持って自分を知ることが、大切なんだろうな

  • 『#今日の芸術』

    ほぼ日書評 Day663

    著者は言わずと知れた岡本太郎。初版は1954年、もう70年も前の本である。それが、2022年になって、新装版ということで文庫化された。

    それにしても、発売当時もかなりの人気を呼んだと言われているが、ほんとにその頃の読者は、中身をわかって読んでいたのだろうか?

    半世紀どころか、3/4世紀近く経った今、ようやく、時代が追いついてきたように思える内容だ。

    芸術はここちよくあってはならない
    芸術はいやったらしい(いや…以降に傍点)
    芸術は「きれい」であってはならない
    誰でも描けるし、描かねばならない

    少数者の独占物であり、本職でなければ、できなかった芸術がひっくり返されて、誰でも描ける絵に変わった(…)階級とか、特殊技能などという狭い枠を乗り越えて、一般に広がった。

    子供の絵などは誉めてはいけない。新たな芸術も、新しいなどと認められた時点で、すでに古びてしまっている。時代に追いつかれることのないよう、常に戦い続けなければならないのだ。

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  • #flier

  • あなたはあなたのままで良いと強く背中を押してくれる本だった。10代や20代のうちに読んでおいて心の隅にでも岡本太郎さんの言葉がストックできていれば、その後の人生の至る所で素敵な考えや想いにぶち当たることができるような気がする。
    この本では周りを気にせず、心のままに絵を描く大切さを説いている。読んでいて保育所のお絵描きの時間に「見たまま真似して描かなくても良い」「感じたまま描きたい色で描けば良い」と先生が教えてくれた事を思い出した。その教えが自分の自信となり、気持ちを素直にぶつける心地よさを教えてくれたのだと今にして思う。先生には感謝したい。

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著者プロフィール

岡本太郎 (おかもと・たろう)
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。『岡本太郎の宇宙(全5巻)』(ちくま学芸文庫)、『美の世界旅行』(新潮文庫)、『日本再発見』(角川ソフィア文庫)、『沖縄文化論』(中公文庫)ほか著書多数。


平野暁臣 (ひらの・あきおみ)
空間メディアプロデューサー。岡本太郎創設の現代芸術研究所を主宰し、空間メディアの領域で多彩なプロデュース活動を行う。2005年岡本太郎記念館館長に就任。『明日の神話』再生プロジェクト、生誕百年事業『TARO100祭』のゼネラルプロデューサーを務める。『岡本藝術』『岡本太郎の沖縄』『大阪万博』(小学館)、『岡本太郎の仕事論』(日経プレミア)ほか著書多数。

「2016年 『孤独がきみを強くする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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