帝国の女

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910372

感想・レビュー・書評

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  • 舞台はテレビ局、宣伝部・プロデューサー・脚本家・マネージャー・テレビ誌担当の5人の戦う女性達にスポットを当てた連作短編集。芸能界が舞台ということにもそそられたが、光文社刊宮木作品の野良シリーズということで、ファンにはおなじみの設定も色々嬉しい。勿論単体でも十分に楽しめる。
    華やかな芸能界の裏方が想像を絶するほどのハードさということはわかっていたつもりでも、そのハードさの描写がひとつひとつリアルで、ここまで激務なのかと言葉を失う。オンオフの区別なんて言ってる場合じゃない。「こんなこと言うと特定の方面から総攻撃を受けそうなので絶対には口には出さないが、最初に男女平等を唱えた人は、男女雇用機会均等法がある程度浸透したあとの『家庭』がどうなるか想像していたのだろうか。
    高度成長期の企業という戦場の中で働く男たちを支える妻、の構図が崩れ去り、女が社会に出て男と同じ企業に勤め男と同じ仕事量を任されたとき、家の中が崩壊することを彼女たちはみじんも予測できなかったのだろうか。」の部分が、心をえぐった。
    夢中で読めるものの、第二章までは展開がありがちかな~、連作短編ゆえ、どろどろ感が寸止めになっちゃって物足りないなとも思ったのだが、徐々にどろどろ感は密度を濃くしていく。訳あり感を醸し出していた、背中に入れ墨を背負うマネージャーの片倉。彼女の過去が壮絶で、宮木さんの他の作品を彷彿とさせる。クライマックスの第五章、激務で心身のバランスが常に危かった宣伝の松国がどうなってしまうのかもハラハラさせられる。
    入れ墨のマネージャー片倉、ちょい年長で地味目の脚本家大島以外の3人は男顔負けの仕事っぷりで美人で…の宮木さんお仕事小説おなじみのキャラのため、キャラがかぶり気味でごっちゃになりやすかったのがちょっと残念。でも、局の宣伝とテレビ誌記者の仕事は今回初めて詳しく知ることができてよかった。野良シリーズおなじみ、最終章の「愛して野良ルーム3」の雰囲気が好きです。軽くなりすぎはしないか?と懸念したが、全くそんなことはなかった。
    そして、宮木さんの絶妙なもじりも何気に好きです。これまた宮木作品おなじみ「ディセンバーズ」は勿論のこと、「ムーンウォーク」(これも某事務所?)「皇帝のひるめし」(某番組?)とか(笑)
    これまでの、カラッとした宮木さんお仕事小説とは一線を画すけど、哀しさを抱えながらも前に進む女たちの勇ましさが印象的な一冊。テレビドラマを、テレビ誌を見る目がちょっと変わりそうです。

  • テレビ業界を舞台に、戦う5人の女たちの物語。
    というと、少し語弊があるでしょうか。
    宣伝、ドラマのプロデューサー、脚本家、女優のマネージャー、TV誌の記者。
    仕事に恋愛に人生に翻弄されながらも、強く逞しく生きる様がとても格好よかったです。

    あまりテレビを見ない私からすると、テレビ業界というのは縁遠いものですが、とてつもない激務だということは知っています。
    休みがほとんどない激務ながら、希望する人が後を絶たないのはそこへ夢や希望を持っているからなのでしょうね。想いがあればどんなことでも乗り越えられる、というわけではないでしょうが、泣きながらも前に進む彼女たちが本当に輝いていて。

    まず魅力なのは、それぞれの恋愛。
    元カレだったり、俳優だったり、同性だったり。
    正確には「恋愛」という言葉ではくくれない、愛情。
    十人十色といいますが、同じ恋愛は1つとしてなくて、恋愛相手もまた個性豊かに描かれているから本当に人の恋バナを聞いているかのようで。
    みんなどこか不器用でもどかしく感じたりもするのですが、冒頭の元カレみたいにどこまでも器用な感じもまたいけ好かない。でも、ああいう対応に揺すぶられる松国の気持ちもわかるなあ。ずるい。

    それから仕事。
    30代前後の登場人物が多くて、もう若手ともいえない彼女たちがもがきながら頑張る姿に元気づけられました。
    宮木さんのお仕事小説って、元気がでます。
    それにしても、みんな有能。
    デキる女子たちばかり。それでも上手くいかないことがあるのが仕事の、そして人間関係の難しいところですね。脇坂Pと元同期女子の絡みも地味に胸に刺さってます。泣ける。

    なんというか、彼女たちには幸せになってほしいなあと思わずにいられない。
    今は彼氏なんていらない、と潔く言える山浦もカッコイイし、自分で幕を下ろした彼女も、想いがあるのにすれ違いばかりしてしまう彼女も、みんなみんな幸せになればいいと思う。

    夜明けの装丁も素敵ですね。まるで知らなかったテレビ業界の内情が知れたのもとても楽しかったです。考えたことがなかったけど、ドラマの制作費が1話あたり約4千万円とかテレビ誌の紙面ができるまでとか。

  • だいぶ前に読んだ
    お仕事小説 面白かった記憶

  • めちゃめちゃ久々に本を読んだ。
    校閲ガールのイメージの宮木あや子さん。
    冒頭は、頑張って働く女子のお仕事ストーリー♡と思って読んでいるものの、中盤からは何やら不穏な空気で、なかなか激しい話になってゆきました。

    ストーリーは面白くて一気読み。
    ドラマ化もしやすそうです。映像が頭に浮かんできやすい本でした。

    #帝国の女 #宮木あや子 #読書記録

  • 大手テレビ局「帝国テレビジョン」での仕事にオンオフの区別はない。恋も夢も曖昧なまま、それぞれの“戦場”に向かう日々-。憧れと現実のあいだで揺れる5人の女性の切実な生き様を描く。『小説宝石』掲載に書下ろしを追加。

    それぞれに個性があって面白い。

  • 帝国テレビジョンで働くもしくは関係する5人の女性の連作短編。
    お仕事小説です。
    宣伝、ドラマのプロデューサー、脚本家、女優のマネージャー、TV誌の記者。
    それぞれ職種も違うし抱えているものも違うけど、とにかくみんな一生懸命に仕事してる。
    女だからとなめられたり、体力的にきつかったり。テレビの華やかな面とは裏腹に裏方はかなりの不眠不休。

    裏事情もわかったし、悲喜こもごもも。

    ただみんな恋愛においてはうまくいってなくて、それでも好きなことのためにひた走れるのはすごいなーと。

    好きなことを仕事にすると、それは趣味ではなくなったり幻滅したりいろいろあるだろうと思う。

    でも最後にみんなで集まって女子会して、それぞれが少しずついい方向に変わったり成長したりしていて、爽快な気分になった!

  • 帝国テレビに関わる女たち。

    だれか一人をメインにした連作、からの最終話でのまとめ、という構図はとてもすきで、作者はそれがうまいと思います。
    たのしかった…。

  • テレビ局で働く女性たちの6つのお話。この作品は分類的に宮木あや子のサバサバ系作品といった感じ。どの女性もかっこいい系である。女として、いろいろ考えさせられる内容だった。人生に悩んでる女性は是非、読むべき一冊。

  • 宮木あや子の連作短篇集
    帝国テレビジョン(日本テレビ?)を舞台にしたお仕事小説
    相変わらず読ませる
    兵隊系女子 宣伝・松国貞江
    指先の砦 プロデューサ・ 脇坂麻耶
    昼飯の角度 脚本家・大島多恵子
    蝋燭の火を灯せ マネージャー・片倉一葉
    シュテファーニクの停車場 テレビ誌記者・山浦清美
    Conbined Girls Fleet 愛して野良ルーム3

    マネージャーの片倉一葉のエピソードがすごい

    あと、ラストの焼肉店での山浦が大島に感じる
    「彼女が若かったころ、いわゆる適齢期だったころにはおそらくまだ辛うじて、男が女を選び養うという構図が成り立っていたのだろう。その図式が崩れ去った今、女は生きていくために働かなければならないし、結果、男に選ばれる必要もなくなった。女としての優劣を男に評価される筋合いもない。」にハッとさせられた。

    宮木あや子の小説はフェミニズム小説だ。

  • テレビのことは分からない。50ページで挫折。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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