- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334910518
感想・レビュー・書評
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幕末から明治の激動の時代に、
果敢に真っ向から立ち向かった
太地鯨組最後の棟梁、太地覚吾の物語。
神様は乗り越えられる試練を与えられていると
個人的に思っているのですが、
覚吾に、そして太地鯨組に降りかかる試練が
あまりにも過酷すぎて…。
『巨鯨の海』のように、鯨と激闘を繰り返す訳ではないのに
棟梁としての覚吾の責任の重さに、
緊迫する状況に、苦しい決断に、
やはり歯を食いしばりながら読んでしまいました。
まさに海と同じ毎日。
凪いで穏やかなひとときに、急に暗雲が立ち込め
強風が吹き、大波に翻弄され、
立ち向かいあらゆる手段で凌げば、
また穏やかな日になることもある。
何があってもひるまない覚吾。
そういう人だからこそ行く先々で
誘導されているように出くわす重要な出会い。
棟梁側の『大背美流れ』
読むの…きつかったです。
眉間に力が入りすぎ、頭痛になったぐらいに。
何を成したかや残したかじゃないんですね。
何度踏ん張って、正面からぶつかっていけたかが、
その人の価値を大きく変える気がします。
この物語、映画で観たいなとふと思った一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
紀州・太地の捕鯨集団「太地鯨組」の棟梁の人生を描いた小説です。
あまりにもドラマチックな出来事が多くて
頭がついていかなかったんですが
どうやら 史実を基にして作られた小説でした。
明治維新のあたりって
坂本龍馬さんやら
色々な著名な人も出てきますが
日本が大きく動いた時代なのですね~~
このお話も大河ドラマとかになりそう~~って
思っちゃいました。 -
2018.01.15
伊藤潤は確か2冊目だろうと思う。鯨は山本一力の土佐しか読んでなかったので新鮮な感覚だった。やはり海は侮れない、恐ろしい世界だ。棟梁の「覚吾」ほど大きな苦労を何度もし続けた棟梁はいただろうか。上に立つということはこういうことだと言うような一冊だった。 -
『 巨鯨の海』の続編。読み応えは、前作を越えている!
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『巨鯨の海』収録の最終話「弥惣平の鐘」と対で読んでもらいたい。
大背美流れを生き残った弥惣平と、彼ら遭難者の生存を祈り棟梁としての気概で立ち続けた覚悟の想い。この二つが絡み合って弥惣平の生還の感動が、いや増します。
物語は、紀州太地鯨漁の最後の棟梁の太地覚悟の人生を、大背美流れの現在と覚悟自身の過去を振り返る形で進みます。
安政地震、黒船来航と激動の幕末を乗り越えようと、困難に立ち向かい続けた覚悟。名は体を表す通り、覚悟ありきの人生。実際のところ、地震の被害、鯨の不漁、蝦夷地操業の失敗、大背美流れと、艱難辛苦の連続で何度も心折れそうになるけど、立ち向かう心意気に打たれます。
最大の失敗は、蝦夷地操業の借入金か。
結果だけ見れば、敗北者なのかもしれない。ただ、最後まで投げ出さずに、負けるにしても意地の見せ方ってものがあるだろう、と思いましたね。負けた後の後始末とか。結果論で語ってしまうのは、激動の幕末を乗り越えて、新しい太地の行く末、日本の行く末を見ていたであろう覚悟には失礼ですが。
負けるつもりはないのだから。
龍馬との出会いがあったればこそかな。うまいこと絡めてきたなと思いました。小説であればこそ。 -
舞台は和歌山県太地町、時は江戸から明治、鯨漁に命を賭けた男「太地覚吾」の物語。 覚吾の生涯を辿ることは、同時に日本の鯨漁の変遷の目撃者でもある。 古来よりの漁法に則って、船団百艘五百人が海に繰出し対峙する三十㍍を越す鯨との命を賭けた漁の描写は圧巻の臨場感を持って壮大な 絵巻物となる。船団を束ね村人を養い蝦夷に夢を馳せ、捕鯨の未来を描く覚吾の生き様、不屈不倒の精神に海の男の生き方を見た。鯨を食する日本は世界からの風当たりも強くなるばかり、が主張すべきは主張し歩み寄ることも大切。世界は海を介して一つだから。
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太地の古式鯨漁終焉のキッカケとなった大規模な海難事故、“大背美流れ”の顛末を追いながら、太地最後の鯨漁棟梁、太地覚悟の波乱の生涯を合間に挟みつつ物語が展開していく。
途中、明治維新の大物がひょこっと登場して、主人公と絡むのはご愛嬌だが、主軸となる大背美流れで、浜で帰りを待つ棟梁としての太地覚悟目線での展開のため、短編集「巨鯨の海」で描かれたような、事故の臨場感は低い。
なので、「巨鯨の海」を読んでから、こちらを読むのがオススメ。
相変わらず伊東潤氏の描く主人公は潔くて気持ちいい。 -
『巨鯨の海』で最終章に描かれた太地鯨組漁最大の海難事故「大背美流れ」を中心に太地鯨組最後の棟梁太地覚悟の生涯を描く巨編。
「大背美流れ」の起きた明治十一年と覚悟が初めて鯨漁に出た弘化元年からの物語が平行して描かれ、最後に時制が一致した時に登場する抹香鯨の姿が雄々しく哀しい。
著者の言い分が全てでは無いにしても、米国による開国の要求が鯨油を採るためだけの乱獲の基地として使うのが主眼であったとするならば、自分たちに必要なくなったからいきなり保護を訴えるのはいかにも欧米主義という感が否めない。 -
太地鯨組棟梁の主人公、太地覚吾の半生が書かれているが、棟梁とは言えその半生は困難に満ちていた。背美流れと言われる大規模な海難事故を軸に、過去のエピソードを交え覚吾の人となりを浮き彫りにしていく。
現在の捕鯨に関しての状況を見るまでもないが、時代の流れとともに衰退していく状況に翻弄される物語だ。
面白く、ほろ苦い人情・時代小説だった。