白日の鴉

著者 :
  • 光文社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910587

感想・レビュー・書評

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  •  今年読んだ中で断トツに面白かった。500ページくらいのボリュームも苦も無く一気読み!『Iターン』から好きな作者。この作者の中でも一番面白いかも。
     痴漢の冤罪で捕まった男と、それを弁護する老弁護人。そして、男を現行犯で逮捕した新米警察官が悪戦苦闘しながら冤罪を晴らそうとする物語。冤罪の背景には巨大な力が働いていて、それを暴くわけだから簡単にはいかないわけで。
     それにしても、冤罪は本当に怖いと思った。あれほどの取り調べをされて、留置所、拘置所での苦痛な生活を強いられて、ほとんど勝ち目のない裁判が待っている中、果たして自分だったら諦めずに戦うことができるのだろうか。また、新米警察官の立場だったら、組織にたてつき、自分の立場も苦しくなる状況で正義を貫くことができるのだろうかと考えさせられた。
     きっと世の中には、同じような冤罪で捕まっている人はかなりの人数がいるはず。そのような状況は作ってはいけないんだと強く感じた。

  • 「白い鴉がおるのを証明するには、白い鴉を一羽捕まえればええ。しかし白い鴉がおらんのを証明するためには、世界中をくまなく捜索せなならん。これが悪魔の証明、すなわち未知論証や。」
    痴漢冤罪を訴える男、自ら逮捕しながら冤罪を信じ密かに協力する交番警官、国選弁護と年金で食いつなぐ老弁護士。3人の男が、塀の中と外から有罪率99.98%の壁に挑む。

    痴漢冤罪を晴らすことの難しさ。逮捕されてから留置場、拘置所へと移され拘留される数か月に及ぶ日々が克明に描写される。未決拘留期間は無罪でも有罪でもないのに、とても人道的とは思えない状況に置かれる恐怖。
    読んでいる間中つらくて、もしも自分がこんな状況に置かれたらとても精神を正常に保っていられないと思う。
    やってなくても認めて示談すればすぐに出られるからという悪魔のささやきにも似たそそのかし。やってないと証明することの難しさ。痴漢をすることは言語道断だけど、被害者の訴えと、目撃者がいれば簡単に陥れられる怖さ。

    この作品、本筋の事件は驚くべき広がりを見せハラハラドキドキ、そして最後はスッキリなんだけど、途中の拘留中の描写があまりにリアルで怖すぎてどんより。
    余談ですが、腐乱死体に蛆がたかって、蠅が大量に飛んでいるシーンでなんだか嬉しかったのは蛆ロスのなせる業。もう、ビョーキです。

  • ある程度読み進めたところで、事件の真相はまあこんなところかなと想像できるように書かれていたが、なかなかそこにたどり着かなくてやきもきした。
    逮捕されてから、どのような扱いを受けるのかがよくわかった。
    大筋の流れ以外の部分にも物語があり楽しめた。
    今年読んだ警察ものの中で一番面白かった。

  • 今年読んだ警察小説のベスト。
    こういう作品を読めることが嬉しい。

  • 怖い。冤罪の怖さがひしひしと。
    ある日突然、身に覚えのない罪で逮捕されるなんて。
    普段電車などに乗ってるヒトならだれでもふりかかる可能性のある「痴漢冤罪」。怖い本当に怖い。
    こういう風に「罪」って作られていくんだなぁ、と何とも言えないもやもやに包まれる。たとえ無実であっても留置場や拘置所での生活に耐えきれず罪を認めてしまうこともあるだろうな、と思いながら読んでしまいました。
    絶望的な状況は読んでいて辛かったけれど、「正義」とか「潔白」とかそういう大きくて派手なものではない小さな思いや善意のかけらに救われる思い。
    しかし、これは電車に乗る男性必読ですね。そして普段何気なく立っているいつもの自分が明日からきっとぎこちなくなるはず。

  • 今回もおもしろかった!
    シリーズと知らずに3作目から読んでしまって、
    1作目に戻り、つづいてこの作品を読んだけれど、
    武藤の新人の頃が一瞬だけ出てきて、嬉しくなった。

    留置場や拘置所の様子が事細かに書かれているのも、友永の気持ちに強く入り込むことができて、擬似体験しているようだった。ゆえに途中すこし暗澹たる気持ちになったが、それも含めてよい読書体験だった。

    現実は物語のようにはいかないとは思うけれど、警察官の方々のなかに、新田や片桐のような気持ちで働いてくれている方がいるなら、自分も信じた道を行こう、と心新たにすることができた。

    4作目で条川署シリーズを読み終わってしまうのがさみしいので、まだしばらく新田の活躍は読まずにおこうと思う。ごめんね新田さん。

  • 福澤徹三『白日の鴉』(光文社、2015年)は痴漢冤罪事件と貧困ビジネスを扱う警察小説である。タイトルはイソップの寓話『おしゃれなからす』に因む。製薬会社MRの友永孝は痴漢冤罪で逮捕される。友永は見知らぬ男女から電車内での痴漢の疑いをかけられて駅から逃走し、駅前交番の新人巡査である新田真人に取り押さえられた。
    友永は否認し続ける。否認し続けることは中々できることではない。決めつけの捜査で自白を強要し、冤罪を作る日本の刑事司法の仕組みが描かれる。実はタイトルを『自白の鴉』と勘違いしていたが、自白してしまう話ではない。
    その後、真人は被害者の女子大生と目撃者の男性が親密そうな関係であるところを見てしまう。本来ならば警察内部で捜査をやり直すところである。しかし、硬直した警察組織は見直すことができない。真人は五味陣介弁護士に協力を求める。ここはフィクションならではである。現実の警察官に真人のような正義感を期待できるだろうか。

  • ドラマ化していたのを見て借りてきた。途中から見てたので気になったのでした。ドラマよりずっと痴漢冤罪の恐ろしさが伝わった。確か遠藤憲一さんだったよな。この人、ガシャドクロのころから注目していたので、最近の活躍ぶりには複雑な思いもあるけど、祝福したい。そんな人が演じたということもあって、主人公が冤罪でほんとにいつまでたっても拘置所から出してもらえなくて、やきもきした。こんなとんでもない不幸に陥れられた人が実在するのかと思うと、やりきれない。刑が確定するまではもう少し配慮のある扱いを検討してもらえないのだろうか。法の改正を望むよ、ほんと。

  • 1月-6。3.5点。
    痴漢冤罪の物語。製薬会社のMRが、電車内で女性にぶつかられ、降りた際に痴漢呼ばわり。取引先との約束有るため逃亡するが、警官に取り押さえられる。
    事態は思わぬ方向へ。

    丁寧な描写。あっさりと冤罪解消めでたしの物語と思ったら、大きな事件に。面白い。

  • 痴漢冤罪の物語。

    製薬会社MRの友永は、電車の中でぶつかってきた女子大生に痴漢呼ばわりされ、目撃者もいたことから、逃亡するも逮捕されてしまう。

    その友永を捕まえた新人警官の新田は、痴漢被害者と目撃者が犯行前からの面識がある疑いを持ち、巡回連絡で知り合った難癖ある弁護士・五味とともに、友永の冤罪を晴らそうと奮闘する。

    冤罪で理不尽な扱いを受け自殺を試みる友永の苦悩や、正義感と組織の歯車として生きなければいけないギャップに警察官としての苦悩を感じる新田、落ちぶれても正義を突き通したい五味の3人の行く末は?


    痴漢の冤罪を晴らすには本当に大変なんだというリアルな物語。

    後半ハラハラしながら一気読み。

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著者プロフィール

福澤 徹三(ふくざわ・てつぞう):1962年、 福岡県生まれ。ホラー、怪談実話、クライムノベル、警察小説など幅広いジャンルの作品を手がける。2008年、『すじぼり』で第10回大藪春彦賞受賞。著書に『黒い百物語』『忌談』『怖の日常』『怪談熱』『S霊園』『廃屋の幽霊』『しにんあそび』『灰色の犬』『群青の魚』『羊の国の「イリヤ」』『そのひと皿にめぐりあうとき』ほか多数。『東京難民』は映画化、『白日の鴉』はテレビドラマ化、『Iターン』『俠(★正字)飯』はテレビドラマ化・コミック化された。

「2023年 『怪を訊く日々 怪談随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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