世界が赫(あか)に染まる日に

著者 :
  • 光文社
3.45
  • (5)
  • (25)
  • (32)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 172
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910747

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ぜんぶ済んだら、どうせ死ぬんだ。
    ーその前に一匹でも多くの害虫を退治しようぜ…。

    中学3年生の緒方櫂は、兄弟の様に育ったひとつ年下の従弟・土橋祥太が、
    虐めで恐喝と暴行により、昏睡状態になっていた。
    祥太の一つ下の妹・涼奈も女の子にとって一番嫌で辛い事をされていた。
    少年法で守られた加害者は、8週間で戻って来た。
    犯人達が許せなかった。
    やつら全員同じ目に遭わせてから、人生も将来も全部ぶち壊してやりたいと思っていた。
    そんなある日、夜の公園で首つりの脳内予行演習をしていた、
    話をした事のないクラスメイトの高橋文稀と会う。
    櫂は文稀に、自殺する15歳の誕生日の11月までの5ヶ月奴らに復讐をするのを
    手伝って欲しいと頼み、文稀はそれを承諾する。
    ぶっつけ本番で上手くいくわけがないと、インターネットで闇討ちされても仕方がない
    少年法で守られて、のうのうと生きてるいる加害者達を探し出し、
    彼女や彼らに制裁を繰り返していく…。

    途中で祥太が昏睡状態を脱して意識を取り戻したとき、
    櫂は、何をすることが一番祥太のためになるのか、迷い始める。
    目の前にいる祥太に手を貸す事と、自分の怒りをやつらにぶつける事と
    一体どちらを優先させるべきなのか…。
    櫂が、復讐を思いとどまった時本当に良かったって思った。
    文中に文稀の日記が時々登場するのですが、日記の内容と実際に行われた事の違い。
    最後に、あぁそうだったんだねって胸がギュッとしました。
    文稀の余りにも辛い家庭環境は、とても可哀相で切なかった。
    櫂と文稀違った風に友情を結べたら良かったのになぁ。

    復讐は、憎しみの連鎖しか生まないって頭では理解してます。
    しかし、人間の尊厳を奪うほどの暴力で人を傷付けたり命すら奪い、
    しかも、何の反省を抱く事もなく変わらず酷いいじめを続けていたり、
    自堕落な生活を続けているものに対してはどうなのだろう…。
    大切な大切なものが傷付けられたら…復讐したいって思うのかもしれない…。
    復讐では誰も救われないのもわかりますが、果たして何が正義なのか…。
    社会正義の名のもとに行われる暴力は、果たして許されるのか…?

  • 従弟を傷つけられた少年と、自分自身の存在に価値を見いだせない少年。対極的にも思える二人が協力して、いじめを行った少年たちに報復を加えていくクライムサスペンス。
    いじめ、少年犯罪、復讐という重いテーマでもあるし、少年たちの青さというか中二病的な部分も痛々しさが印象的。だけど物語が進むにつれ、二人の間に友情のようなものが見られるようになったりもして、「これはもしや爽やかな青春物語というオチなの?」と思える部分もあったけど。……やはりそう甘いものじゃないのですね。
    やり場のない怒りや、加害者に甘すぎる世間に対する憤りはどうしようもないことだけれど。復讐することで得られるものがあるわけじゃないのも確か。だったら被害者はただ耐え忍ぶしかないのか。酷い話ではあるけれど、それが事実なのかもしれません。ただ、それでもどこかしらに希望はあると信じられればいいのですが。

  • 痛めつける描写が残酷で、目をそむけたくなります。そうした展開が延々と続くのに、着地点にそんなに意外性がありませんでした。ただ、見慣れた結末でないのは確かです。

  • 少年法に守られて罰せられない犯罪者たちを狩っていく二人の少年の復讐譚。テーマとしては手垢にまみれた感が無きにしも非ずですが、二人の少年の関係性が徐々に変化していく様の描写は見事で心に刺さります。着地の仕方もお見事。

  • 中学生櫂と文稀ぼ復讐もの。15歳で死ぬことを決めた少年。ぼくはもうスグ死ぬ。他人のことまでいちいち深く考えてられないよ。ちきゅうが滅びたって関係ナイじゃない?ころされてもかまわないってやつだけが。殺せるんだ。その覚悟があるかどうかです。最後は悲しい。許せない気持ちもわかる。

  • 多方面の感情を読み取って思考してしまう物語なのですが、どの方面から考えても全てが胸糞悪い話です。

    少年法。
    カイは仲の良い従兄妹がいじめにより酷い状態になったこと、犯人は少年法に守られ8週間のオツトメでシャバに戻ってきたことに納得がいかなかった。そんな中でカイは自殺シュミレーションをしていたフミキと出会う。話したことがなかったクラスメイトだ。カイはフミキに自殺する15歳の誕生日まで、手伝って欲しいといい、フミキに はそれを承諾する。
    すべてはカイの従兄妹に手を出したあの兄弟を制裁するため。そのまえに少年法に守られたクズどもに練習として制裁をし始める。

    いじめられたことのある人、いじめられた大切な人がいる人、いじめたことのある人、いじめを目撃したことのある人、そしてニュースやらで少年法に憤慨したことある人、家族にも友達にも恵まれず孤独な人。
    それらすべてにおいて胸糞悪いです。救いようがない。目には目を、歯には歯を。やられたらやり返される、殺人は覚悟の問題。

    わたしはこの物語がきちんとフミキにそれらを制裁させたところが良かったと思いました。
    カイが途中で降りてしまい、フミキも思い止まってしまうのかなとも思いましたが杞憂でした。きちんとぶっ放してくれた。だけど彼自身生かしたこと、そして8年間延命処置を取っているとう描写に涙腺緩んだ。フミキにとって初めての友達だったんだよね、カイは。少年法への報復、復讐の話ではあるけど、思春期の青春的な物語でもあって、夢中になって読み耽りました。
    ただ、本当に胸糞悪くてぐったりしたけども。

  • 『復讐』をテーマにした作品。現代の日本やネット社会の闇を上手く表現した作品である。復讐とは何だろう。何のために人を痛めつけるのか。復讐をする事で結局は同じ穴の狢ではないかなどといろいろな考えが頭の中を巡ってゆく。中学生でありながら、復讐という目的のためにあそこまで行動するというのは非常に恐ろしくもあり、驚きでもある。復讐をする事で幸せになれるのかと問われたら、必ずしもそうではないと思わされる作品だった。

  • 目を逸らしたいのに、目を逸らしてはいけないと思って、読み続けました。
    面白いと言ったらいけない気がしますが、引き込まれて一気読みでした。
    壮絶ないじめの復讐をするために、いじめで従兄弟を傷つけられた櫂と、15歳で死のうと決めていた文稀が、予行練習として彼らに無関係ないじめ加害者を襲っていくのですが、この加害者のいじめ描写がすごく胸糞悪くて震えました。でもこれは現実にあるんだろうなと、連日ニュースなどでいじめ事件を見ていたことを思い出しました。
    いじめをする人って、想像力が無いよなと思っているのですが、この小説でも、彼らは自分が同じ事をされるとは思ったことがない、みたいな表現が出てきて、そうだと思いました。ごめんなさい、と言ったのを聞き入れなかったのに、自分はごめんなさいで許して貰おうなんて、虫がいいです。
    途中で登場人物が言う、「神様って、いねえんだな」という言葉が印象的でした。
    そして文稀が辿り着いた結末で、タイトルの意味が分かって…文稀が目覚めたほうがいいのか、このままのほうがいいのか。答えはみつかりません。
    櫂と文稀が、犯行を重ねていく間に過ごした時間でだんだんと心が通っていって、読んでいて更に辛くなりました。こんな出来事ではなく、ふたりが出会えたらよかったのにと思わずにはいられません。

  • 復讐は正義か、悪か。
    テーマとしては今さら感がなくもないけれど、重いテーマの割にさらさらと読めた。それは少年2人の友情の物語としての側面があるからかも知れない。

    同級生らに暴行され昏睡状態となった従兄弟の復讐のため、少年法に守られた加害者たちを次々と襲撃する中学生カイとフミキ。
    カイは小学生の頃から野球を続けてきたスポーツマン。一方のフミキは複雑な家庭環境で、15歳の誕生日に自殺すると決めている孤独な少年。まったくタイプの違う2人が契約を結び、復讐計画を進めるなかで、徐々に距離を縮め、やがて友情が芽生える。
    花火や夏祭りの夜店でカイと一緒に〝初めて〟を経験するフミキの姿は、全編通して漂う重苦しい雰囲気を少しだけ和らげる。

    復讐の物語だから仕方ないけれど、暴力のシーンが結構多く、しかも具体的。苦手な方はご注意を。
    そして、以前『チェインドッグ』を読んだ時も思ったけど、この作者さんの含みを持たせる終わり方は好き。

  • 中学三年の櫂は野球少年だったが、その生活は従兄妹を襲った凶事により一変した。
    兄弟同然に育った彼等の未来を奪った加害者、奴らの人生も将来もぶち壊すと決意する。
    一方クラスメートの文稀は15歳で自殺すると決めていた。それまで櫂に協力すると言うが…。

    一生消えない傷を負った被害者と、少年法で守られた加害者。子供だから分別がないなんて
    どうして分かるのだろう?目には目を、暴力には暴力を。罪に問われない“犯罪者”達を
    自ら裁くべく襲撃していく二人。社会正義の名のもとに行われる暴力は許されるのか?
    最早いじめとは言えない、よくもまあこんなに非道な事ができるものだと胸が痛くなる。
    やられたらやり返せ。やるならやり返される覚悟を持て。罪なき被害者と罪ある加害者は
    スタートラインから違うのだ。復讐する側の偏った価値観でしょうが、頷ける面もある。
    辛い出来事と悲しい予感に胸がしめつけられる。誰かにおすすめ、とは言い難いですが
    ずっしりじんわり、余韻に浸っています。読んで良かったと思いました。

全43件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2018年 『アンハッピー・ウエディング 結婚の神様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

櫛木理宇の作品

世界が赫(あか)に染まる日にを本棚に登録しているひと

ツイートする