- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334910747
感想・レビュー・書評
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いじめが原因で酷い暴力の末、身体が不自由になる。
そうなればいったい誰を恨むのか…
やられたらやり返すのか…
復讐撃といえばそうなのかもしれないが、まったくスッキリとは終わらない。
苦しさとやりきれなさばかりが残った。
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頭上では黒一色の夜空に、こまかい星が散っている。まるでうんと濃いコーヒーの表面に、肌理こまかい上砂糖をまぶしたかのようだ。(P.32)
ゆるいカーブを描きながらつづく線路が、夏の陽光を弾いて脂っぽく光っていた。(P.207)
ー親ならね、ほかにもう、どうしようもないの。
…親ならきっとこう思うはずだ。やりかえしたい。わが子をこんな目に遭わせたやつらに、十分の一、百分の一でいいから同じ苦しみを味わわせてやりたい。
ーでもわたしが逮捕されてしまったら、残されたこの子はどうなるのだ?
なにをしても、怒りが、悲しみが消えるわけではない。一私人にできることは限られている。ならば復讐心を噛みころして、いまはわが子のそばについているほかはない。
むろん、苦渋の選択だ。心臓から血が滲むほどに悔しい。苦悶で胸が焼け焦げる。だがそうするよりほかに、どうしようもない。
ーなぜってこの子は、まだ生きているのだから。(P.220)
少年法や復讐心、どこにでもありそうで、なさそうなそんな、お話。彼が生きる希望は何だったのだろう。
私があの状況に置かれていたら、精神的におかしくなって、生きる意味を見いだせないだろう。
悪い奴を罰する、加害者に甘い世界、どうしようもないけれど、これが現実なら、「みんなを殺すか、自分が死ぬか」、この2つの選択になってしまう気がする。今も、加害者がのうのうと生きている世界にいる私たち。どのような立場に立てば良いのか分からなくなった…。
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2023.10.11
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いじめで自殺して遺書があっても、いじめと自殺には、何の因果関係もないとか、少年法で、加害者の方は最大限護られるとか理不尽過ぎる。
櫂と文稀のしたことは正義ではないけど、加害者にも、恐怖や痛みを感じてほしいと思う。
文稀が、親を選べてたら、、 -
櫛木理宇の世界にまた引き込まれた
いまだに減らない少年犯罪。
文稀は眼を覚ますのか -
これを読んでて怖いと思ったのは、この登場人物のようにここまで酷いことをしてなくても、自分の知らないところで誰かに恨まれている可能性があるかもしれない。
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既読の2冊と比べ、主人公が段違いに魅力的だった。櫂の愚直さは一貫していて小気味がいい。小出しにされる文稀の状況に苦しくなったけれど、薄皮を剥いでいくように櫂に気を許していく文稀が年相応に見えて救われる気がした。
SNSを巧みに取り入れて、読む人が登場人物を複数の視点から思い描けるよう、ページに情報を散りばめていくやり方が上手いと思う。
読んだ後は引用された事件、参考文献についても調べて、部分的に気になった箇所を読み返した。
この作家は文章に無駄な色気がない。乾いて、端的で、だからこうした胸糞悪い内容を描写すると、真に迫る。恐ろしさが引き立つ。夜に読むんじゃなかったと後悔している。神経が興奮して眠れそうにない。