- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334910778
感想・レビュー・書評
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高校時代の仲良し5人女子グループのうちの一人が、少年数人による暴行事件により二十歳という若さで亡くなる。物語は、5人グループのうちの一人であり、ライターである主人公が地元に戻り、他の3人と再会、事件に至った経緯を探るなかで浮き上がる、空白の十数年間の経過と心情を作品として書き下ろしていく、というもの。
彼女達の中に真犯人がいるということではなく、"あれだけ親しかったからこそ、彼女が亡くなる前に自分に何かできたのではないか"と、各々が心の中に罪悪感と後悔を抱えながら生きていて、その心の機微に焦点が当たっている。
高校時代の仲良しグループ(今でいうイツメン)内での序列やポジション、地方の田舎に残る者と都会に出る者との温度差、生活格差から来る嫉妬、ネットでの誹謗中傷、不倫…。
40歳手前になっても、悪い意味で10代と変わらない幼稚さに、読んでいて若干イライラ…。
終盤で新キャラの比佐子が出てくるが、パンチ弱めで、最後の三千花のテープも至って平凡な内容で、ぼやっとした感じで終わってしまった。
吉川トリコさんの作品は以前読んだ『流れる星をつかまえに』や、今同時読みしている『余命一年、男をかう』の方が、ポップな感じがあって、個人的にはそちらの方が好み。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あらすじを読んで謎解きものかと思ったが違った。やっぱり吉川トリコが描くのは、女たちの心の深淵だ。
高校時代の仲良し5人組。
「銀チョコラバーズ」とチーム名をつけて、くっつき合って笑い合って「5人揃えば最高で最強」だと信じていた。きっと誰もが経験したことがある、輝きに満ちた怖いもの知らずの日々。
卒業から2年後、仲間の一人がバラバラ死体で発見され、彼女の死にそれぞれが罪の意識を抱えながら16年の月日を経て、4人は再会する。
「本当に知りたいことのほとんどを私たちは卒業してから学ぶことになる。多くの場合、その学習には痛みを伴う。時には大きな喪失が要らないおまけのようについてくる。」p156
「どこからが自分でどこからが相手なのかもわからなくなるぐらい同じ温度でひとかたまりになっていたあの春は、もう二度と戻らないのだ」p197
それぞれの道に進む中で、もはや彼女たちは(私たちは)あの時の少女のままではいられない。
けれど、自分が「あの春」からどれくらい遠くまで行けたか、あるいは未だ辿り着けないでいるのか、比較し意識し続けるのは、常に「あの春」を共に過ごした友人たちの存在だ。
「私ね、思うんだけど、友だちって密に連絡をとりあって、ずっとそばにいればいいってもんでもないんじゃないかな。若い時はさびしさに負けてわからなかったけど、いまならわかる。どっかで無事に生きててくれるだけでいいなって。」p290
相手を傷つけ、自分も傷つくような、未熟で剥き出しの人間関係の中で出会ったからこそ、かけがえのない存在。
過去を振り返る作業は、痛みと後悔と身勝手な自己欺瞞とに満ちて、全編通して息苦しい。 -
昔は仲の良かった同級生も月日が経つとともに大きく変化していくよなぁ。
違って当たり前と思っておかないと、数十年経ってから会ったりできないかもしれない。 -
2023/01/22
なんとなく借りてみた本。
人はいろいろあるし変わっちゃうこともあるよなぁ、と思った -
大人になってもなお「最強のあたしたち」でいることの不可能さ。ずっとずっとお友達でいる、ただそれだけのことの難しさ。光の庭を発った彼女たちは、無敵のようでいて実は脆く、何にも守ってもらえずにそれぞれ傷ついていった。
女の子にとってのお友達は希望でもあり絶望でもある。その危うさにのみこまれて、起こってしまった一つの事件。登場する5人のリアリティから、本当に身の回りであり得たことのように思わされる。三千花と麻里奈が額をくっつかせてOliveを読んでいた描写に泣ける。これもまたオリーブ少女の成れの果てということか…。 -
地方に暮らす仲良し5人組は高校卒業と同時にそれぞれの道へ進むが、数年後、地元に残った三千花が遺体となって発見される。16年後、ライターとなった志津は三千花のことを調べ始める。
初読み作家さん。
生活環境が変われば、付き合う友達も変わってくるし、興味の対象も変わってくる。
いつまでも学生時代のような付き合いはできなくなる。
地方に暮らす焦燥や女の子同士の嫉妬といったものはピンとこないが、ミステリ的要素があって面白かった。
(図書館) -
友人の死への罪悪感はあっても、彼女達のほとんどは己と戦おうとしなかったんだなぁ…。
甘えてる。
と言っても、胸を張って断罪出来る私でもないのだけど。
私達のほとんどが多分そうなのだけど。 -
16/11/21
装丁は可愛らしくて、でもちょっと不気味というか不穏なかんじを発してて、そしたら中身もそんなかんじでした。
湊かなえの『贖罪』ぽいかなあ。
・今日のことをこの先何度でも思い出すだろう。
そんな未来をこの時あたしは予感していた。(P10)