仏像ぐるりの人びと

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910969

感想・レビュー・書評

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  • 仏像図鑑片手に読みたかった。

  • 小さい頃から仏像が好きだった、雪嶋直久(ゆきしま なおひさ)は、父と進路のことで対立し、交通事故で瀕死の重傷を負った後、二浪して京都にある大学の経済学部に入る。
    本当は、美大の彫刻科に入りたかったのだ。
    ある日、学生課の掲示板に貼ってある
    『仏像修復のお手伝いのアルバイト募集』という用紙に目を留める。
    仏像と対話していた少年時代を経て、遠回りの末に本当にやりたいことを見つけ出すまで。

    修復所の、雪嶋の「先生」である門真福耳(かどま ふくみみ)(36)は、根気強い作業を必要とする職人にしては、気難しいというのではなく(目つきは悪いが)、少し飄々としたなかなか面白い人物。
    雪嶋の方は、緊張と作業への集中で気づかないが、門真は雪嶋を深く観察している。
    先生だから、といえばそれまでだが、雪嶋の才能や、心の奥底にあるものを、積もるほこりを払い、偽の塗装をはがして、あるべき姿に修復して行ったのは門真だったのだろう。
    一方、雪嶋は雪嶋で、門真の作業をじっと観察していたのであった。
    二人の感情の、必要以上に表に出過ぎない歩み寄り方、というのもいい。

    こつこつと、古いものを修復して後世に残す、というのは京都だけではないかもしれないが、何千年の文化を支えてきた人々の地味な作業というものに美しさを感じる。

    繊細なタッチと色使いのカバー絵も素敵。

  • 主人公の成長譚として面白いは面白いんだけど、
    いまいち門真の感情の動きが分からず。

    何で主人公の成長にあんな興奮したんだ?

  • 図書館で仏像特集をやっている棚にあって、なんとなく借りたのですが、思いもかけない掘り出し物(この表現で良いのか?)だった。なんか淡々と物語が進んでいくのだけれど、仏像の話が載ってる登場人物それぞれの人生の話よこれは。なんだか泣けてしまった!

  • 浪人時代に交通事故に遭い、大手術ののちリハビリ生活を余儀なくされた雪嶋直久。家族関係に鬱屈していた雪嶋は、東京を離れ京都の大学へ入学。仏像修復師・門真のもとでアルバイトを始めるが…

    な、なんか表紙と内容があってないですね…表紙と仏像修復師がテーマっぽかったので重くて固いイメージだったんですが、その割に内容が飄々としているので戸惑って調べたら「敬語で旅する四人の男」の作者さんだったんですね…なるほど、文庫版の表紙の方が内容にあってますね…

    子供の頃から彫刻が好きだった雪嶋。美大進学を親に反対され入った京都の大学で始めたバイトで仏像修復という仕事に触れる事になる…あまり知ることのない仏像修復というお仕事を知れるのも面白いですし、読後感も爽やかだったんですが、表紙とのギャップのせいで他の登場人物などが妙に軽く感じられるのが残念。

  • 子供の頃から彫刻が好きだった雪嶋。美大を親に反対され、親が決めた進路を進み、京都の大学に入学。そこで、導かれるように仏像修復のアルバイトに出会う。仏像修復師の門真と同じ部屋で黙々と作業をした半年間は雪嶋の未来を変えた。「仏像は見る人の気持ちを受け止め、鏡みたいにその人の気持ちを映し返してくれる」何かを求めて仏像と向き合うというのは、まさにそういう事なんだと思った。作業場での雪嶋と門真の空気感がとても素晴らしかった。

  •  仏像好きな大学生・雪島は、仏像修復の手伝いのアルバイトを始める。そこで正体が分からず(元の姿が分からない)、修復ができずにいる仏像を見せてもらう。仏像の正体を突きとめたいと大学で仏像に詳しい先生の話を聞こうとした雪島は、「のんびり仏像めぐり研究会」を紹介される。

  • 四人の旅する~がおもしろかったんだよな、
    と思い手にとる。

    主人公のたたずまいとゆーか、感じが「四人の~」の主人公とちょっと似てるかなあっと思った。
    高圧的な父親に、従順な母親、といういわば典型的な親が
    母親の自立(?)を機に少々変化、
    単身赴任の父親と、しかし、関係は壊れるでなく、
    それなりの、家族の形を成しているところがいいなあっと。
    ちゃんと子を想ってる親じゃん。

    とはいうものの、ちょっと違うベクトルでの子どもを追い詰めたのは事実だと思うのだが、そのへんで憎しみだとか
    恨みだとかをそんなに持たずに自立していこうとする様はすごいなあっと思う。

    女の子だというオチだとはおもっていたが、そこが同一人物だとは思いもよらなかったなあ。
    うーん、どんな偶然だ、まあ小説だからいいけどさ。
    恋愛に発展する関係になるのかと思いきや、どうやらそれはなさそうで、ふーんそうなんだーっと思う。

    仏像の種類だとか、頭入ったような入らなかったような・・・(汗)
    弟子にしたいという気持ちも湧くんだけど、手を伸ばさないってとこは、
    なんかちょっと好きかな。

  • 大きな交通事故に遭った過去を持つ大学生の主人公は、小さなころからなぜか仏像に惹かれていた。偶然大学で目にした仏像修復師の手伝いのアルバイトに興味を持ち、彼は修復の世界へ足を踏み入れる…

    そういう仕事があることは知っていても、なかなか実際に知ることは無い仏像修復師の世界を、いたって普通にわかりやすく描いていて、その仕事そのものの奥深さを感じることもできました。後世にできるだけ昔の姿を保ったまま残していくという、とてつもない難題と日々闘っているのだなと思うと、何気に拝んでいた仏様へもいっそう畏敬の思いが強くなる気がします。

    話自体は大学生たちの家族関係や過去と向き合うというのが主題でもあり、修復のバイトを通じて気づかなかった心の裡や未来への希望を見つけていく、という青春物でもあります。

    若干人物設定がいきなりなように感じたり、章ごとにばっさり視点を変えて連作短編のかたちにしたほうが主眼がくっきりしたような気もしなくはないですが、とっつきにくそうな世界を若者たちの姿を通して描いて読みやすくなっているようには思いました。

  • 表紙の絵と本の内容が合ってない気がする。
    表紙の絵から、なんとなくもっとずっしりした感じだと思っていたので、読み進めて戸惑った。
    星は四つつけたけど、正直3.5かな。
    楽しく読めたし、仏像にも興味持てたし、良かったけど、もな美の存在がイマイチわからないし、なんかちょっと軽いなと。

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