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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784334911133
感想・レビュー・書評
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仙河海シリーズ第6作目。3.11に向けて描かれた群像劇は、ここで一旦止まって、このあと明治時代(「浜の甚兵衛」)へ時間軸を移すことになるので、どうなのだろうか、ちょっとまとめ的な意味も持たせたのだろうか。
私の予測はそうではない。これがまとめならば、少しさみしい。今回は、思い切り作者の周りの世界を描いたようだ。今回は、シリーズで唯一最初から最後まで3.11後の時間軸になっている。しかし、視点は東京から見た仙河海になっている。シリーズ最後の本で、また現代に戻る予感がある。主な登場人物は3人。東京出身東京在住の編集者、但し川島聡太の元カノ山下亜依子(38)、神奈川出身東京在住作家の桜城葵(37)、仙河海出身仙台在住の元作家の武山洋嗣(28)。年齢は3.11現在。主人公は亜依子だが、語り部的な位置。モデルがいるのかどうかはわからない。しかし、真の主人公といえるあと2人にはモデルがいる。
桜城葵と武山洋嗣は、どちらも作者の分身である。葵はN賞(直木賞であることは明らか)作家でコンスタントに物語を紡いできたが、3.11のあと、新作が作れなくなり、仙河海にボランティアに通っていて、新たな境地を見つける。武山は、押し切られる形で作家カムバックをしたが、出来上がったのは仙河海市をモデルにした仙賀崎シリーズだった。熊谷達也本人は、葵よりも気仙沼に関係しているし、武山のように生まれた土地ということもない。だから2人の葛藤は、ふたつとも作者の葛藤だったということになるだろう。
亜依子の編集者としての仕事描写は、身近な人物なだけに作者も困ったのではないか?作品の中では、亜依子をモデルにした葵の小説つくりは頓挫してしまったが、本当はこの作品、実在モデルがいるのではないか?
仙河海シリーズも6冊目である。だとすれば、ここで書かれている、震災文学は売れないという悩みはホンモノなのかもしれない。それは気負ってこのシリーズを始めた作者自身の戸惑いも見せているのかもしれない。でもね、こういう「ワインズバーグ・オハイオ」形式の群像劇は売れなくても残ってゆくと、私は思う。
新たに分かった人間関係をメモ。
・武山の家は唐島にあった。代々牡蠣漁師。
・川島の父親は遠洋マグロ船漁労長だった。
・菊田守一(遠洋マグロ船漁労長)の息子は「文藝界」編集長、菊田守。守の祖父はカツオの一本釣り。
2018年5月読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
編集者の山下亜依子は東日本大震災の後、被災地出身の作家・武山に原稿を依頼できないかと上司から打診される。武山は以前に新人賞を受賞したものの、その後本を出版することがなく地元の仙河海市に戻っていた。山下はこのタイミングでの依頼をためらうものの、武山を探し出し本を書いてもらうことに。
編集者を通して、出版界を描いているというのには興味を持った。作中の武山が書いている「仙河海八景」(仮)は、既に出版されている「希望の海 仙河海叙景」と思われるので、先に読むことをお勧め。 -
未曽有の大地震はもちろん、東京も揺るがした。交通網が麻痺し、歩道を埋めて歩み続ける人また人。嘘であってくれればよいのに。夢であってくれればよいのに――。苦悩する女流作家と女性編集者は、被災地・仙河海市へと向かった。
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本作は、これまでの仙河海シリーズ作品以上に重い。
仙河海(気仙沼)の中の人達から見た被災地の描写よりも、被災しなかった人から見た描写が、あまりにも冷静且つ温度感の違いが、かえって重く感じる。
著者が被災地に寄り添って、ずっと書き続ける事を期待します。 -
調律師以来止まってしまった熊谷達也自身の時計がやっと動き出した。震災から今までの仙河海市シリーズは正に震災小説でとても良かったのだが、これで一段落するのだろう。最後は自分をモデルにした物語で熊谷達也自身の思いが伝わってくる。とても良かった。
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小説を作り出す側の世界の話。
編集者と小説家と、新人賞以降消えてしまった小説家。
震災をきっかけに物語が動き始める。
震災のことを小説に書くという使命感や葛藤。色々な思いがある。
話は淡々と進むが、武山が書く小説の行方や、桜城の「怖さ」と担当編集者の山下が気になり読み進める。実際には「恐さ」はなく、ちょっと肩すかし。3人の中の誰かにもうすこし焦点を絞った方が話が引き締まったのではないか?
書き手と、これからの書き手、それを支える人、3人の話がバランス良くまとめられている。 -
作中の、震災の前日で終わる話は別の作家で読んだことがあるような気がしたんだけど...
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編集者もぜったい無理!
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震災の渦中にあった作家と彼の周りの人物が織り成す成功物語だけど、主人公である女性編集者の真摯な姿勢が埋もれていた彼を見いだし文学賞受賞に至る。あまり暗さや重さや悲惨さの無いストーリーなのですんなり読めた。タイトルと内容があまりリンクしてなかったので意外でしたけど。
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私小説?
震災をテーマとした小説を書くことの是非や葛藤が、全編に漂っておりました。 -
熊谷達也さんの新刊「揺らぐ街」、2016.8発行です。読み応えがありました。2011.3以降、「震災・津波の前後」を題材にし、仙河海市(仙台市)を舞台にした作品を書き続けていらっしゃいます。今回も仙河海市が舞台です。山下亜依子という素晴らしい編集者の物語、中堅作家の悩みに寄り添い、若手作家の育成に心を砕き・・・。日々楽しませていただいている「小説」が生まれるまでの関係者の様々な労苦と葛藤、出来上がったときの喜びと感動・・・。諸々が包含され、見事なラストにつながっていきます!
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※※※※面白い本なので時間を作って読みましょう(^o^)。。。。
この本ほど題名と物語の中身が異なる小説作品にお目にかかるのは久しぶりです。
熊谷達也の作品でこの題名なのだから東北大震災関連の作品だと思うヂャないですか。
たしかにストリーの始まりは震災からでした。
でも途中からまるで異なる方向へ物語は行ってしまってもう戻って来ない。
あ、でも決してオモシロイです!? ので誤解無きよう。
ラストの面白さわ普段たくさんの本を読む「趣味読書」の方にわもうウルトラ級です。
保証します。
m(_~_)m(すまぬw)すまぬ。m(_w_)m
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