猫の傀儡(くぐつ)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911652

感想・レビュー・書評

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  • あやかしの謎解き人情話ミステリーですね。
    短編連作七話で最後に大団円になる江戸の物語です。
    本来はあまり「あやかし」系は読まないのですが、『猫』の文字に引かれたのと、この本が図書館の除籍本として譲渡棚に並んでいたのを拾ったのでした。
    せっかくだから、少し目を通してみようと、ページを開いたのが運のつき。見事に西條マジックに陥りました。
    「あやかし」と言っても、別に猫が妖術を使うわけでもなく。怪しげな妖怪が出るでもなく。
    猫が主人公で、その猫が「傀儡師」として人間の「傀儡」を導いて、猫の関わる事件を解決させるという物語です。
    作中で、猫の言葉は人間に伝わらず、猫の知恵でそうと気付かせて、猫ばかりか人間の問題まで解決させるという筋書きは、さすがに人情話の名人の成せる技ですね。
    かなり制約がありますが、「あやかし」が強く出ない手法は好感が持てます。
    猫の仕草や習性を小まめに気持ちよく書かれているのが嬉しいですね。特に子猫の「ゆき」が巧みに効いていて、猫好きにはたまらない作品です。
    江戸話は西條さんのお得意ですが、言葉や江戸の事情も細やかでさすがに感心しました。
    この本が図書館の除籍本となるとは、ちょっと意外ですが、文庫が出てそちらに貸し出しが回ったかなと推察します。
    いずれにしろ、奇な出会いで面白い読書ができました。
    西條さんの現代のミステリーは、時々読ませてもらいますから、これからも作品を探りたいですね。

  • 新しく猫町の傀儡師となった、ミスジ。
    傀儡の阿次郎を使い、猫世界の平穏を保とうとする、連作短編集。

    おもしろかった。

    とにかく暇で、察しがよく、何にでも興を示し、猫が好き。
    そんな人間を傀儡とし、猫の役に立つようにしむけるのが、傀儡師の猫の仕事。

    猫好きで、まっすぐな阿次郎の人間性が魅力的。
    なんだかんだ言いつつも、阿次郎を信頼していくミスジとの関係性もよかった。

    猫たちも愛らしく、犬や烏なども含めた、動物たちのやり取りもたのしい。

    ミステリあり、人情味あり。
    コミカルなやり取りに笑ったり、時にぐっときたりする作品。

  • 傀儡(くぐつ)なんて、一読おどろおどろしい題名だが、いやいやなかなか面白かった。夏目漱石の猫と同じように、主人公の猫はしたたかである。人を傀儡として操る猫の傀儡師なのだ。江戸米町こと猫町で起こる様々な猫の厄介ごとを、傀儡に解決させようというわけだ。猫だけでなく人も大いに絡んでくる。いや、そのうちに人のほうに重心が移るのかな。やっぱり人情物だから。猫たちもやけに情が深いしね。傀儡になるぐうたら者の阿次郎がなかなかに魅力的。最後は、よかったあと思える終わり方だ。

  • 困っている猫がいると放ってはおけない!
    猫をピンチから救う傀儡師、オス猫のミスジは人(阿次郎)を操り日夜猫達を助けている。
    チャキチャキの江戸っ子のミスジの言葉遣いは読んでいてスカッとする。
    人は考えすぎるのが玉にキズ、物事をもっとスッキリ始末すりゃいいのに…とごもっともなミスジのセリフには思わず納得。
    呆れるくらい呑気な相棒の阿次郎に鋭くツッコミを入れるミスジ。
    そんなミスジ主導のもと、名コンビが猫とその猫に関わる人に起こった災いを次々と鮮やかに解決していく。

    微かな臭いや音、気配で人が隠す嘘をズバリ見抜くミスジ…うちに来る通い猫の二匹も実はこんな事を思っていたりして…想像すると面白い。
    江戸の猫町で繰り広げられる人(猫)情に厚い軽快な物語。
    もちろん続編希望!

  • 直木賞を取った作家さんだからという訳でもなく、なんとなく選んで読んだけど、やっぱり面白かった。猫はあまり好きではないがこんな猫なら飼ってもいいかなという気にさせられた。

  • 思わぬ収穫。めっぽう面白い。猫視点で描かれるホームズばりの探偵物語。猫が人間を傀儡として操り、様々な事件を解決していく。主人公のミスジをはじめとして、傀儡に選ばれた阿次郎、メス猫のユキ、烏の三日月、先代傀儡師の順松など、みなキャラが立っており読みやすい。しかも物語が責任感と正義感に溢れており心地好い。人(猫)が人(猫)を想う気持ちが素敵な読後感にさせてくれる。まだまだこの人(猫)たちの物語をずっと読んでいたかった。続きはないのかなぁ?
    いや、これ、絶対読むべきでしょ。

  • ネコ好きなら是非読んで欲しい一冊。傀儡になった猫のミスジが人間を傀儡師として、事件を解決する話。とは言え猫と人間の言葉は通じるわけはなく、ミスジは様々な工夫で期待通りに人間を動かす。ユーモアに人情溢れた江戸の市井の描写に癒された。

  • えっ……控えめに言って最高……!

    ミスジと阿次郎のキャラクターがとにかく好き。
    三日月とおたまも良きー!!
    順松の話がすごくいい。
    どこをとってもすごく好き!!

    八歳の少年だけがちょっと気がかり。

  • 阿次郎を傀儡として扱う、猫の傀儡師ミスジの物語。

    風情あるフィクション。江戸の情緒が良い。
    せかせかした日常からトリップできるのでは。
    阿次郎も暇そうだし

  • 二歳のオス猫・ミスジ、人間なら24歳くらい。
    前任者の順松(よりまつ)兄貴が行方知れずになったため、頭領からこの町のあたらしい「傀儡師(くぐつし)」に任命された。

    傀儡師とはつまり、傀儡(くぐつ)たる人間をうま~く操って、猫のために働かせる技を持った猫だ。
    傀儡師(猫)と傀儡(人)は、1対1でバディを組む。
    人間のほうは、うまく使われていることに気づかないのが前提。

    とても面白い設定。
    猫のために働かせているというが、同じ町に暮らす以上、猫の問題と人の問題は複雑に絡み合っている。
    とはいえ、人の掟(法)と猫の掟は異なるから、同じ事件を別の思惑で解決を願ったり、別のやり方で成敗したりもする。

    ミスジがいくつかの事件をこなしながら傀儡師としての仕事に慣れ、傀儡の阿次郎との信頼関係を築いてきたあたりで大きな事件のうねり。
    阿次郎の飼い猫・ユキ、ミスジの宿敵・烏の三日月、ミスジに大きな影響を与えた兄貴分の順松のキャラクターもいい。
    時雨さんが気になるなあ…何か知ってるの?
    続編、当然ありますよね?


    『猫の傀儡(くぐつ)』
    ミスジ、初仕事。
    三町目の“キジ”の訴え「花盗人の疑いを晴らしてくれ!このままでは三味線にされてしまう!」
    ついでに縁結び2件。

    『白黒仔猫』
    “母さん(飼い主)”と白猫、子沢山母猫と黒猫、こじれた母親と娘。
    ミスジ、烏から仔猫を救う。

    『十市と赤』
    知恵の遅れた十市と、老猫・赤の絆。
    阿次郎の正義感と憤り。

    『三日月の仇』
    動物に残酷な仕打ちをする人間の子供。
    ミスジ、天敵である烏を助ける。

    『ふたり順松』
    猫の順松と、辰巳芸者の順松、両方の行方不明にかかわりはあるのか。
    物語、大きく動く。

    『三年宵待ち』
    商家の次男と三男の兄弟愛。

    『猫町大捕物』
    戻ったものと、戻らないもの。
    時雨の言葉に、ミスジは少し救われ、兄貴・順松の思いを受け継ぐ。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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