オブリヴィオン

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 412
感想 : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911874

感想・レビュー・書評

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  • なぜこんなことになったのか、の因果はどこまで辿ればいいのだろう。
    誰に、どこに、感情移入しているのか自分でもわからないまま、哀切で心が揺さぶられた。
    誰もが何かを隠している。
    それは、大事な人を守るための秘密だった。はずなのに。
    オブリヴィオン――忘却もしくは恩赦。
    忘れ去られることが赦しなら、なにひとつ忘れない。すべてを抱えたまま、生きる。
    そう決意した森二の、“今さら”という言葉を捨てた沙羅の、愛されていることを知っただろう冬香の、未来が穏やかであるように祈らずにいられない。


    電子ゲラをいただいて読みました。
    遠田潤子さん初読みです。
    物語を構成している要素が多いのに散漫にならず、むしろどうなるのかが気になりぐいぐい読まされました。
    光一にも手を差し伸べてくれる誰かがいればよかったのになぁ……。

  • この作者は登場人物に恨みでもあるのかと思うくらい痛々しい展開の物語を書きます。今回も有る意味期待を裏切らず痛い。妻を殺してしまった主人公の姿はもちろん、その妻の兄もまた痛い。途中途中に挟まれる彼らの暖かな回想シーンがその痛みをさらに高めます。かさぶたを思わず剥がしてしまうように、口内炎を舌で探るように先が気になって仕方が有りませんでした。わたくし険しい顔をして読んでいたようですが、まさに眉間にしわが寄る本です。
    鬱展開ではあるのですが、この方のどの本も妙な昂揚感と爽快感が有ります。暗い本好きではないのですが、なんだか癖になる薄暗さです。

  • 「いつか」や「今さら」という言葉をとなえつつ現実から逃避し続けた毎日から自分をすくい上げてくれた人たち。なのにその大切な人を手にかけてしまった罪。忘れ去られることも、赦されることもない罪を抱えて生きること。その重く長く辛い時間を思う。
    いったいどこで間違えてしまったのか。誰も好きでその「罪」を選んだわけではないのに。
    バンドネオンの音が遠く低く響いてくる。読みながら私の胸の奥で悲しい曲が聞こえる。それは悲しいけれど、弱い音ではない。悲しみの中で自分を見失わずに歩き出す強さの音だ。きっと大丈夫、空は青く、人は優しい、そんな音だ。

  • 遠田さんの作品はいつも苦しい。けど、癖になる。
    今回もずっと胸が苦しい。
    最終的に救われたのか?
    私にはよく分からない。
    家族や唯を殺害したこともずっと苦しみ続けることには間違いないからな。

  • ブクログのレビューを読んで興味を抱き、読んでみたもの。2017年の作品である。

    妻を殺してしまった主人公が出所してくる場面から始まる導入部は、典型的ハードボイルドのイメージ。
    ところが、途中から競艇の場面が増えてギャンブル小説のようになり、さらには超能力要素までからんでくる。意表をつく展開の連続に度肝を抜かれた。

    クライマックスの謎解き(妻の不貞の相手=娘の父親が明かされる)は、よくできたどんでん返しというよりミスリーディングな感じがして、少しモヤモヤ。

    ただ、アルゼンチンとのハーフ美少女・サラ、複雑な陰影をそなえた主人公の兄・光一など、キャラクターはそれぞれ魅力的だし、ゴロワーズなどの小道具の用い方がうまい。

    主要キャラがそれぞれ心に深い傷を持ち、だからこそ共鳴し合う哀切な物語。
    タイトルとなり、ストーリー上重要な役割を果たすピアソラの名曲「オブリヴィオン」の物悲しいメロディーが、全編に流れているようだ。

  • 久しぶりの遠田さん作品。劣悪な環境からやり直した後に、最愛の妻を娘の前で殺してしまった吉川森二。何故殺したのか? 作中にでてくるバンドネオンのオブリビオンをYouTubeで聴きながら一気読みでした。オブリビオンの意味は忘却、赦し。これでもか⁉︎という程辛い苦しみを重ねてくるし、「奇跡」という能力もあり合わない読者もいるようですが自分的には大好きな作品です。最後に出てくる「大丈夫?」で涙腺が緩みます。人を選ぶかもしれませんがお勧めです。時間をあけてから「雪の鉄樹」も読みたいですね〜

  •  最後には救われるから良かったけど、この後の物語も読み続けたいと願ってしまうような。
     

  • 妻を殺し、刑期を終えて出所した主人公の前に現れた二人の兄。因縁浅からぬ二人と、いまだ消えない妻への思いを胸中に抱える主人公は、どんな運命を紡いでいくのか。

    相当に悲劇的な過去を背負っている主人公の多い作者の作品ですが、この物語もまたかなりな重い枷をはめて生きていく姿が描かれます。そうしてなぜ彼が殺人罪を背負ったのか、過去に何があったのか、「奇跡」とはなんなのか…だんだんと詳らかになっていくにつれ、……すっきりすることはまるでありません。逆により現在の絶望が浮き立っていきます。あらゆる取り返しのつかなさを感じていくばかりです。

    誰か彼を解放してほしい、救われてほしい。そう願います。けれど因果が過去にあるからには、彼は救われることはなく、枷を背負ったままなのです。取り払うことはできない。

    けれどそれでも、傍に付き添う人さえいれば、這いつくばりながらでも生きていけるのではないか。そのほのかな希望が見えた最後は、かすかに安堵の息をつくことができました。

    人間の因果が幾重にも重なって描かれた物語。読み終えて振り返ってみれば、二人の対照的な兄がいたからこそ、彼は過去を生き延び、そしてきっと未来を生きていくことができるのだろうと思える、象徴的な存在だとわかりました。

  • 妻への傷害致死で服役していた森二が出所した。迎えに来ていたのはノミ屋の兄と、殺してしまった妻の義兄だった。

    不幸な生い立ちの人ばかりが登場し、なかなか重い話。
    あの環境になければとか、森二のような特殊な能力さえなければと、バックボーンを恨めしく思いました。

    妻の死を受け止め、罪を無いことにせず償い続けると決めた森二。
    冬香との関係も修復しそうな気配で、人生は何度もやり直せるという終わり方に、明るい未来を感じました。

  • 人はいつでも、どこにいても変われる。変わりたいと思う自分と、「変われる」と言い続けてくれる誰かがそばにいてくれれば。

    イヤなやつ、くずなやつがたくさん出てくるけど最後には少しだけ明るい未来が見えてよかった。
    最後のほうで、主人公の本当の辛さ・悲しい過去が明らかになるのですが、そのへんからずっと泣きながら読んでた。

    みんな秘密があって、誰かへの想いがあって、あきらめたことがあって。
    そういうものと戦ったり折り合いをつけたりしながら生きてかなきゃいけないなら、一人より誰かと一緒の方がいい。それが難しいのだけど。

    ハッピーエンドとは言いきれない。むしろ、これがはじまり。
    彼らが、この話が終わったあともっとずっと先で幸せになってくれたらいいな。

    重いけどめちゃくちゃ良い話だったので、他の本も読んでみたい。

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著者プロフィール

遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。2009年『月桃夜』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年、『アンチェルの蝶』で大藪春彦賞候補、16年『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、17年に『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞受賞。同17年『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位。2018年、『冬雷』で日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門候補、’20年『銀花の蔵』が直木賞の候補作に。人間の抱える理不尽に迫る、濃密な世界を描く。

「2022年 『人でなしの櫻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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