オブリヴィオン

著者 :
  • 光文社
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感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911874

感想・レビュー・書評

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  • はい!今作も自らに罰を与え、地獄の中を生きる主人公の話です( ̄▽ ̄)

    ヤクザの兄、主人公が殺した妻の兄、血の繋がらない娘、身体を売るアパートの隣人…

    幸せな人は1人も出てこない、安定の遠田ワールド
    この暗い話にずっと流れるバンドネオンが奏でる
    オブリヴィオンという切ない調べ…

    じれったい!じれったい話です!

    今作も地獄から少しだけ明るい未来に匍匐前進で進む話で息切れしました_| ̄|○

    でもやっぱり遠田潤子を読むのやめられない(´ー`)


  • なぜこんなことになったのか、の因果はどこまで辿ればいいのだろう。
    誰に、どこに、感情移入しているのか自分でもわからないまま、哀切で心が揺さぶられた。
    誰もが何かを隠している。
    それは、大事な人を守るための秘密だった。はずなのに。
    オブリヴィオン――忘却もしくは恩赦。
    忘れ去られることが赦しなら、なにひとつ忘れない。すべてを抱えたまま、生きる。
    そう決意した森二の、“今さら”という言葉を捨てた沙羅の、愛されていることを知っただろう冬香の、未来が穏やかであるように祈らずにいられない。


    電子ゲラをいただいて読みました。
    遠田潤子さん初読みです。
    物語を構成している要素が多いのに散漫にならず、むしろどうなるのかが気になりぐいぐい読まされました。
    光一にも手を差し伸べてくれる誰かがいればよかったのになぁ……。

  • この作者は登場人物に恨みでもあるのかと思うくらい痛々しい展開の物語を書きます。今回も有る意味期待を裏切らず痛い。妻を殺してしまった主人公の姿はもちろん、その妻の兄もまた痛い。途中途中に挟まれる彼らの暖かな回想シーンがその痛みをさらに高めます。かさぶたを思わず剥がしてしまうように、口内炎を舌で探るように先が気になって仕方が有りませんでした。わたくし険しい顔をして読んでいたようですが、まさに眉間にしわが寄る本です。
    鬱展開ではあるのですが、この方のどの本も妙な昂揚感と爽快感が有ります。暗い本好きではないのですが、なんだか癖になる薄暗さです。

  • 遠田さんの作品はいつも苦しい。けど、癖になる。
    今回もずっと胸が苦しい。
    最終的に救われたのか?
    私にはよく分からない。
    家族や唯を殺害したこともずっと苦しみ続けることには間違いないからな。

  • 「いつか」や「今さら」という言葉をとなえつつ現実から逃避し続けた毎日から自分をすくい上げてくれた人たち。なのにその大切な人を手にかけてしまった罪。忘れ去られることも、赦されることもない罪を抱えて生きること。その重く長く辛い時間を思う。
    いったいどこで間違えてしまったのか。誰も好きでその「罪」を選んだわけではないのに。
    バンドネオンの音が遠く低く響いてくる。読みながら私の胸の奥で悲しい曲が聞こえる。それは悲しいけれど、弱い音ではない。悲しみの中で自分を見失わずに歩き出す強さの音だ。きっと大丈夫、空は青く、人は優しい、そんな音だ。

  • ブクログのレビューを読んで興味を抱き、読んでみたもの。2017年の作品である。

    妻を殺してしまった主人公が出所してくる場面から始まる導入部は、典型的ハードボイルドのイメージ。
    ところが、途中から競艇の場面が増えてギャンブル小説のようになり、さらには超能力要素までからんでくる。意表をつく展開の連続に度肝を抜かれた。

    クライマックスの謎解き(妻の不貞の相手=娘の父親が明かされる)は、よくできたどんでん返しというよりミスリーディングな感じがして、少しモヤモヤ。

    ただ、アルゼンチンとのハーフ美少女・サラ、複雑な陰影をそなえた主人公の兄・光一など、キャラクターはそれぞれ魅力的だし、ゴロワーズなどの小道具の用い方がうまい。

    主要キャラがそれぞれ心に深い傷を持ち、だからこそ共鳴し合う哀切な物語。
    タイトルとなり、ストーリー上重要な役割を果たすピアソラの名曲「オブリヴィオン」の物悲しいメロディーが、全編に流れているようだ。

  • 愛する妻・唯を娘の前で殺してしまった吉川森二。
    罪を償い刑期を終えたとき待っていたのは
    実の兄でヤクザの吉川光一と
    妻の兄で学者の長嶺圭介だった。

    愛する妻を殺め人生に絶望する森二は
    自分を責め、
    他人を拒み、
    うらぶれたアパートで暮らすが、
    隣に住む少女・沙羅の出会いと突然の娘の訪問で……。

    不幸な生い立ちの人が多く重量感のある話だった。
    後悔まみれ不幸のどん底の森二がどうなるのか?
    不穏な空気満載でどうなるのか?
    と,
    読み進めたらそういう展開になるのねと驚いたΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)

    真実とは…後悔の先にあるものは?

  • はぁ、、今回も辛く苦しい重いお話でした。
    遠田作品は基本的に主人公がこれでもか!というくらい不幸な生い立ちや苦しみを背負いまくってるので、いつも一筋の小さな光を追い求めながら読んでる感じ。
    結局森二は二人の兄に救われたんだと思う。
    読み終わったら、圭介から光一派になってて、光一がどんなふうに生きてきたかもっと知りたかったなと思った。
    冬香の父親のとこはちょっと強引な気がしたけど、、遠田作品はあっという間に読ませられる。笑

  • 様々な境遇のものが絡み合うストーリー。ネタバレになるのであまり触れないが、期待している作家さん故、最後はそこにつなげてしまったかという展開の甘さが気になった。

  • 久しぶりの遠田さん作品。劣悪な環境からやり直した後に、最愛の妻を娘の前で殺してしまった吉川森二。何故殺したのか? 作中にでてくるバンドネオンのオブリビオンをYouTubeで聴きながら一気読みでした。オブリビオンの意味は忘却、赦し。これでもか⁉︎という程辛い苦しみを重ねてくるし、「奇跡」という能力もあり合わない読者もいるようですが自分的には大好きな作品です。最後に出てくる「大丈夫?」で涙腺が緩みます。人を選ぶかもしれませんがお勧めです。時間をあけてから「雪の鉄樹」も読みたいですね〜

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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