架空論文投稿計画 あらゆる意味ででっちあげられた数章

著者 :
  • 光文社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911898

感想・レビュー・書評

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  • いくつかのアンソロジーで著者の作品を読んでいて、興味が湧いて読んでみたのが本著です。

    本著、研究者心理を専門とする助教(所属は"蛸足大学"で、本著の内容からすると著者の出身でもある東北大学のようですね)が、論文の査読制度のチェック機能が崩壊しているのでは?という仮説のもと、「かけんひ」を使いつつ架空論文を投稿していくというもの。
    この架空論文を書くにあたって、作家たる著者自身が作中に登場するというのも本著の構造の面白いところ。論文自体のアホらしさも含め、著者のユーモアセンスは凄いなぁと唸らされます。

    残念なのは、アカデミックな職業の方々ならおそらくわかってクスッとするであろうネタの数々が、どうにもわからないこと。学術論文の世界に特化しすぎていて、フツーのサラリーマンである自分としては少し疎外感?を感じるくらいでした。
    しかし、大学で研究職をされてるような方であればメッチャ面白いと感じるだろうし、大学院に進もうとしている大学生なんかにも雰囲気を掴むために凄く良い1冊になるのではないかと思います。

  • 完全にフィクションだと思って読む論文。
    不思議な感覚だったなぁ〜

  • 松崎有理「架空論文投稿計画」読了。査読制度の限界をネタにユーモラスに構成された各架空論文を読んで、思わず噴き出してしまいそうになる事が多々あったが、架空なのに妙に納得してしまいそうになるのはなんだか不思議な気分だった。こんな感じで論文を書けたら楽しいだろうな。もちろん架空でなく!

  • 2020.12.5市立図書館
    電子総合文藝誌アレ!(2011年〜2012年、ちなみに某STAP細胞騒動より前)初出の架空論文11本を散りばめ学術論文執筆&投稿界隈をえがいた近過去SF「サイエンス・ユーモア・サスペンス」。とあるポスドクがおこした事件をきっかけに、メタ研究心理学研究室助教のユーリー小松崎✕駆け出し作家松崎有理が始めた架空論文投稿実験の首尾は…? 

    高3長女、手にとってすぐに一気読み。
    大学生までは楽しそうだけど、院生から先はつらそう、研究職になるのこわそう…と進学前から不安にさせてしまったが、まあ予備知識と覚悟はあったほうがいいし(パラレルワールドっぽいフィクションとはいえ、現実の理不尽の数々が種にあるのはうたがいない)、こういうネタのお話をおもしろく読める彼女にはやはりそこそこ適性もあるのだろうと思う。すみずみまで楽しんででっちあげたのであろう架空論文はもちろん、「代書屋ミクリ」や「就職相談員蛇足軒〜」に登場したあの人やこのネタがちらちら登場して「エピソード0」的に楽しめるのもよかった。
    「架空論文投稿実験」そのものが意外と長い歴史をもち、ジョークとしてだけでなくこの作品の登場人物のように現状への警告や告発のための試みも行われているという現実が興味深い。

    虚構新聞を楽しめる人なら間違いなくおすすめ。読むのに時間はかかるけど(著者のいう「するめ」は言い得て妙)それをじっくり味わえるなら学術業界にむいている。これからの世の中、むしろこういったフィクションを通してニュースやレポートを批判的に読み解く力を養うことはかなり大事なので、大学生(とくに進学希望者)は一度は読んでおいてもいいんじゃないかとさえ思う。

  • 学術の未来に危機感を抱いた大学助教授の『ユーリー小松崎』は、学術研究の理想を守る為、知り合いの駆け出し作家『松崎有理』に協力を仰ぎある実験を行うことにした。嘘の論文をでっちあげて査読を通るかどうか調べるというものであったが、修正指導もないまま論文は掲載されてしまう。その後『論文警察』と名乗る怪しい団体に目を付けられ・・・。

    論文不正問題と言えば、一大センセーショナルを巻き起こした事件がありましたが。
    コメディー風に仕上げて、現状に一石を投じるとか風刺なのかとか思ったのですが、そういう側面もあるかと思えど、面白ければいいのかもしれない。
    しかも、後書きによれば、ストーリーの中に差し込むために作られたのではなく架空論文が先なんですね。くすりと笑えて、そうそうと思え、添えられている図もなんか可愛らしい論文でした。

  • 論文がばかばかしいんだけど面白い。

  • すごく面白かった。
    読み始めはなかなか設定が頭に入らず、戸惑いつつ読んでいたけど、なるほど、ユーリー小松崎という架空の人物と松崎有理(筆者)が協力して架空論文を執筆・投稿していこう、というやり取りが小説として書かれており、合間にその投稿した架空論文が掲載されている、という本。
    小説の本文中で出てくる専門用語なんかには注釈をつけてくれているけど、それも書き方がおふざけ感がありよく読むと面白い。
    架空論文はよくこんな研究内容が浮かぶなと感心してしまう。ユーモア溢れるものばかりで、あまり実物の論文というものに接点のない人でも楽しめる。

  • 論文を読みながら引用文献の番号をチェックして……本当の論文を読むみたいに読みました。

  • H31/3/16

  • このセンス最高。
    即、マイベストセレクション入り!

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著者プロフィール

1972年茨城県生まれ。東北大学理学部卒。2010年に「あがり」で第1回創元SF短編賞を受賞。著作に同作を収録したSF連作集『あがり』のほか、『架空論文投稿計画』『5まで数える』『イヴの末裔たちの明日』などがある。

「2022年 『シュレーディンガーの少女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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