シネマコンプレックス

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911942

感想・レビュー・書評

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  • シネマコンプレックス...略してシネコン。
    ひとつの施設の中に複数のスクリーンを有した映画館である。

    そこで働くスタッフ達のクリスマスイブの一日を描いた連作短編集。

    初めての畑野さんの小説でしたが面白かった。
    何でもない、でも特別な一日を上手く切り取り、最後まで興味をひっぱってくれる手腕に舌を巻いた。

    各短編の主人公は立場も様々。
    それぞれに人間関係や将来に悩みを持ち、働いている。

    過去のある‘事件’のせいで時間が止まったままのオープニングからのベテランの島田さん。可愛い顔でいじられながらも愛されている大学生の加藤くんの秘密。家に居場所がないと感じている主婦の宮口さん...。

    主人公だった人が他の短編では脇役にまわったり、ひとりの人物が他の人の視点から見ると印象や評価がまた違ったり。
    見えるものが違うってすごく大切なことだと思う。

    それぞれの主人公達はクリスマスイブというこの日にある‘決意’を胸に秘める。
    その‘決意’で明るく未来が照らされればいいな、と思った。

  • とある郊外のショッピングセンター内のシネコン。そこで働くフリーター、学生、主婦…語り手を替えながら描かれるクリスマスイブの一日。
    畑野さんの連作短編が好きだ。淡々としているようで、時にググッと心をえぐるような描写も秀逸だけど、連作短編集のテーマ選びも新鮮で、シネコンが舞台というのはなかなかユニークと思った。フロア、コンセ、ボックス、プロジェクションなど、実はシネコンの業務をよく知らなかったと今更ながら思う。同じ映画館と言っても、ミニシアターや名画座とはまた別の施設なのだと、別だからこその苦悩もあれば面白さもある。お仕事小説として、とても興味深く読みました。畑野さん自身がシネコンでのバイト経験があるとのことで、エピソード一つ一つのリアルさに納得です。
    20~30代の登場人物らが抱えるそれぞれの想いにも共感ができる。くすぶる恋愛感情、未来への不安、こんなはずじゃなかったという後悔。業務の忙しさに翻弄されながら、そんな鬱屈した気持がこぼれてくる描写が絶妙で、ああこういう感じわかるなと思う場面多数。フリーターや学生の男女が多い中、30代半ばの小学生ママの章は、仕事復帰したばかりの当時の自分を思い出して胸がキューっとした。
    クリスマスイブの派手さはないけれど、静かに沁みてくる展開が心地よい。登場人物達が様々な角度から描かれているので、最初は「コイツ嫌~な感じ」とイラッとても、読み進めるほどに「そうでもないかも…?」と思えてくる。今度シネコンに行くときは、ボックスからコンセ、フロアまでじっくり観察しそう。従業員の皆さんの見えない努力で、私達は心地よく映画を観ることが出来ているのだな。

  • クリスマスイブ、舞台はシネコン、スタッフたちの一日。章ごとに主人公が変わる短編集。大きな波はないけれど、恋や未来の悩みが綴られる。同じ物事でも登場人物により当然だけれど感情の違いがあり、それが面白く感じました。こういうタイプの人、うちの職場でもいるな〜なんてそういったことでも読み進められました。シネコンの仕事ってこんな風になってるのねっていうのもあり。派手さはないけれど、悪くなかったです。それぞれのその後、続編みたいなのあるといいな。

  • 特に大きな事件もなく、クリスマスの映画館で働く人間模様を描いた作品。

    特に大きな事件はなく、日常なんだけど、そこがリアルで良い。
    同じ1日を複数人の視点から描いていて、そこも良い。
    同じ1日でも、人によって違う1日なんだよなぁ…あたりまえだけど。

    同じ人物も、他人から見たら「いい人」だったり「悪い人」だったり。
    最近 他人の気持ちを考えられない、他人視点に立てない人が多く感じるから、こういう作品を読んで勉強してほしいなぁ。

  • クリスマス・イブのシネマコンプレックス(シネコン)で働く人(主にバイトさん)を主人公にした連作短編集。

    映画館というと「シネコン」を指すようなイメージになったのはいつ頃からでしょうか?
    多くのスタッフがそれぞれの持ち場で、それぞれの仕事をこなす単館の映画館では見られない風景を、以前シネコンで働いていたという著者が小説の中に興味深く切り取っています。

    忙しくバタバタとしているシネコンのクリスマス・イブの中、物語としては大きな事件が起こることもなく、登場人物の心象風景を中心に描かれ、ほっこりしたり、心が揺らめかせられたりします。

    シネコンのオープニングスタッフの島田さんの物語から始まり、過去の事件を匂わせながら、その事件を通して関係が変わってしまった岡本さんの物語で閉じる構成はすてきですが、連作短編集の全てを通すストーリーとして描くのであれば、他の登場人物がメインのストーリーでももう少し島田さんをしっかりと描いてあげてもよかったかも。

  • 今や映画館と言えばシネマコンプレックスが当たり前の世の中。その巨大な映画館の裏側は一体どうなっているのか・・・
    興味津々で読み始めました。
    そしてその期待は裏切られることなく
    シネコンので働く人たちの様子が
    非常に詳細に描かれていました。
    あまりにもそちらから受ける印象と情報量が多かったためか
    ストーリーがいまひとつ印象に残らないという問題も発生しましたが(笑)
    お仕事本としてとても楽しめましたよ。

  • 『夏のバスプール』以降、好みとは外れていたので、久しぶりに読んだ作品。シネコンを舞台にした群像劇。個々のエピソードで等身大の悩みと成長が描かれており、物語が繋がっていく群像劇の楽しさを感じました。 一文の中で同じ言葉の連発などが見受けられ、書き流しているような印象を受けてしました。最近、多くの本を出されていて応援したいのですが、(あくまで好みの問題ですが)少しだけ残念でした。 とはいえ、青春物語が魅力的な作家さんです。

  • 映画館てこんな風に働くのか!という印象が一番大きかった。最後の結末を読んで、良かったなとほっとした。

  • クリスマス×映画館というなんともすてきな連作短編集。ちょっと調べたら畑野さん自身、シネコンアルバイト経験があるんですね。どうりでリアルだ。
    大学生やらフリーターが田舎の時給800円のシネコンでバイトしていて、恋があったり事件もあったりで。めっちゃ青春。
    島田さんと岡本君の過去にイブに起きた事件はなんなんだろうというのを軸にそれぞれが現在のイブをシネコンのなかで過ごす。この時期に読めてよかったな、そしてハッピーエンドでよかったな、とじんわり。

  • 映画館には、いろんな仕事があり、たくさんの人が働いている。
    舞台は
    日曜日でクリスマスイブの夜という、特別な時問帯、
    試写会のイベントがある、特別な日。

    フロアやストア、映写室担当など、様々な担当の、
    フリーターや学生、主婦など、様々な立場のバイトが
    それぞれが自分の担当や境遇に重ねながら、それぞれにとって特別な1日に挑む

    これを読んで初めて知ったことだが、
    映画館は、映画だけで黒字にするのは非常に難しく、
    併設のショップや軽食・飲み物の売り上げをあげないとそもそもの経営ができないらしい。
    だから、バイトも、重労働で役得も少ない割に給料はかなり低い。
    映画が好きでないととても続けられないが、
    好きなだけでも続けられない。
    そんな仕事をしているバイトは、消極的であれ、前向きであれ、
    「映画はすきだけど〇〇」という感情が深く刻まれていた。

    あと、個人的に全く知らないところの物語なので、それだけでも新鮮な話だった。
    さらに、同じ状況を別々の視点から語る場面が、
    それぞれの境遇や人間関係から、全く別の描かれ方をしていて、面白かった。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。13年に『海の見える街』が、14年に『南部芸能事務所』がそれぞれ吉川英治文学新人賞候補となる。ほかの著書に『夏のバスプール』『感情8号線』『罪のあとさき』『タイムマシンでは、行けない明日』『家と庭』『消えない月』『シネマコンプレックス』『大人になったら、』などがある。

「2018年 『水槽の中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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