熟れた月

  • 光文社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912055

感想・レビュー・書評

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  • 宇佐美さんの本に出てくる人たちは、生きることが辛いくらい
    劣悪な生育環境だったり、堕ちるところまで堕ちた生活をしている人が多い。
    本書の最初には、普通の高校生が描かれていたので少し明るい話しかと思ったが
    やはりそうくるか、という展開だった。

    「秩序は巡る」
    関係がないようにみえる事柄も、じつはつながっている。
    世界は輪っかのようにつながっている。
    というテーマは、年齢を重ねた人には腑に落ちる感覚で、
    だからこそ、自分の歯車は自分で回していくという気持ちが大切なんだと感じた。
    ラストの桜の花びらが、すこし明るくなりそうな未来を予感させたと思いたい。

  • 純粋に物語として非常に面白かった。どのように繋がっていくのかと、その紐解き方が絶妙。最後の母子の再会までの展開が今一つだが、そこは目を瞑れるレベル。登場人物が全員良かれ悪しかれ人間臭いところも魅力的。

  • 読んでいる途中、ちょっと白けて離れてしまいそうになる心を後半にグッと引き戻してくれる本だった。

    この本では何人かの登場人物がいて、その人物ごとの目線で描かれている。
    まず、最初に登場するのは高校生の子供を一人で育てている母親。
    彼女は何らかの事情を抱えており、それが元で、勤め先の上司を殺してしまう。
    次の主人公の女子高生は、最初の主婦の息子に恋する少女。
    彼女は主婦から息子に伝えて欲しいとある伝言を託される。
    それから話は一変。
    全く違う話になる。
    癌が再発し、余命いくばくもないヤミ金を営む女性。
    そして、彼女の元で働く元銀行マンの男性。
    彼が関わる事になった高校生の少年。
    ヤミ金の女性の話を黙って聞く車椅子の男性。
    そのパートで語られるのは女性がヤミ金業を営むようになったいきさつと彼女の生い立ちと従業員男性の生い立ち。

    読んでいて途中で、何だこれ、最初に登場した女子高生ってこの話に必要だったん?
    最近、実は誰と誰がつなっていた・・・系の話が多いけど、これもその類の話?
    なんて思っていると、最初に殺人なんて興味惹かれる事を描いて、実は大したつながりでもない、奇をてらった話なのか・・・としらけ始めた頃に、「ああ、そうだったんだ・・・」という内容が描かれていた。

    人と人とのつながりをテーマにした話なので、こういう構成にしたのは納得だし、どの登場人物もそれぞれが重要なパーツだったと読み終えて分かった。
    そして、人のつながりをこれほど深く感じるのは、登場人物たちそれぞれが深い孤独を抱えているからだと思った。
    自分の抱えている事情を身近な人に言えない、友達もいない、相談する人もいない・・・そんな人々。
    だけど、世界中で一人だと思えるようなそんな人々も実は誰かと知らない所でつながっている・・・。
    どんな小さな関わりでも、それは相手にどういう影響を与えているか分からない。
    内容的にはディープな雰囲気だけど、読後感は爽やかだし納得できる本だった。

  • 「ウーピーパーピーの木の下に埋める」このおまじないが母から恋する少女に伝わり,KEN,悪徳金融業のマキ子,そして祐太へと届く.巡って繋がるのはとても感動的だったけれど,時間がかかりすぎたのが残念だ.そして,もっと残念なのは.裕太に魅力がないことです.

  • 始めは衝撃的な出来事が起こって、この先がどうなるのか気になりながら読み進めました。でもその次でちょっと風向きがSFぽくなって来た?と思ってたら次からマキ子と乾の重く暗い過去が、どこまで続くのかと思う位続いて、途中でしんどすぎて嫌になります。読後感はふわりとした感じで終わるので悪くはないけど、そのギャップが大きすぎて馴染めない。途中が暗すぎて、せめてマキ子の過去の話は削ってもよかったのでは、と思いました。

  • 癌で余命半年と宣告されたヤミ金業のマキ子。
    落ちぶれた取り立て屋の乾。
    陸上部のエース阿久津先輩に憧れる高校生の結。
    生まれてから車椅子の生活しか知らない身体不自由な博。
    つながる運命と運命。
    (アマゾンより引用)

  • 人生歯車が狂って道を踏み外すと落ちるのは簡単なんだなと、こういうお話を読むとつくづく考えさせられる。最初に登場した女子高生可哀相だったな。最後は小説のテイスト変わっちゃった。

  • 闇の貸付業で働く元銀行員で高校時代はアスリートだった男。彼を雇っている女性も、凄まじい生き方を余儀なくされた人。
    巡り合わせか、あるおまじないのような言葉で、母が犯した罪の真実に行き着く。
    それにしても、時間も人もつながっている。

  • はじめは爽やかな、高校生のおはなしから
    ファンタジーの様な世界観。
    そこからの金にまつわるどん底の闇金の
    汚れた世界に放り込まれる。
    金に翻弄される人達と最初の桜の様な淡い恋の繋が
    りは最後まで謎は明かされない。
    全ては秩序の様に繋がっていて、巡り巡ぐって
    真実が明かされ光明が見える。

  • すぐ書かないとすぐ忘れる
    えーと、お金って怖いね。
    そして、なるほどねぇ。
    最後は良かったです。

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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