熟れた月

  • 光文社
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本棚登録 : 66
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912055

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる途中、ちょっと白けて離れてしまいそうになる心を後半にグッと引き戻してくれる本だった。

    この本では何人かの登場人物がいて、その人物ごとの目線で描かれている。
    まず、最初に登場するのは高校生の子供を一人で育てている母親。
    彼女は何らかの事情を抱えており、それが元で、勤め先の上司を殺してしまう。
    次の主人公の女子高生は、最初の主婦の息子に恋する少女。
    彼女は主婦から息子に伝えて欲しいとある伝言を託される。
    それから話は一変。
    全く違う話になる。
    癌が再発し、余命いくばくもないヤミ金を営む女性。
    そして、彼女の元で働く元銀行マンの男性。
    彼が関わる事になった高校生の少年。
    ヤミ金の女性の話を黙って聞く車椅子の男性。
    そのパートで語られるのは女性がヤミ金業を営むようになったいきさつと彼女の生い立ちと従業員男性の生い立ち。

    読んでいて途中で、何だこれ、最初に登場した女子高生ってこの話に必要だったん?
    最近、実は誰と誰がつなっていた・・・系の話が多いけど、これもその類の話?
    なんて思っていると、最初に殺人なんて興味惹かれる事を描いて、実は大したつながりでもない、奇をてらった話なのか・・・としらけ始めた頃に、「ああ、そうだったんだ・・・」という内容が描かれていた。

    人と人とのつながりをテーマにした話なので、こういう構成にしたのは納得だし、どの登場人物もそれぞれが重要なパーツだったと読み終えて分かった。
    そして、人のつながりをこれほど深く感じるのは、登場人物たちそれぞれが深い孤独を抱えているからだと思った。
    自分の抱えている事情を身近な人に言えない、友達もいない、相談する人もいない・・・そんな人々。
    だけど、世界中で一人だと思えるようなそんな人々も実は誰かと知らない所でつながっている・・・。
    どんな小さな関わりでも、それは相手にどういう影響を与えているか分からない。
    内容的にはディープな雰囲気だけど、読後感は爽やかだし納得できる本だった。

  • 「ウーピーパーピーの木の下に埋める」このおまじないが母から恋する少女に伝わり,KEN,悪徳金融業のマキ子,そして祐太へと届く.巡って繋がるのはとても感動的だったけれど,時間がかかりすぎたのが残念だ.そして,もっと残念なのは.裕太に魅力がないことです.

  • 始めは衝撃的な出来事が起こって、この先がどうなるのか気になりながら読み進めました。でもその次でちょっと風向きがSFぽくなって来た?と思ってたら次からマキ子と乾の重く暗い過去が、どこまで続くのかと思う位続いて、途中でしんどすぎて嫌になります。読後感はふわりとした感じで終わるので悪くはないけど、そのギャップが大きすぎて馴染めない。途中が暗すぎて、せめてマキ子の過去の話は削ってもよかったのでは、と思いました。

  • 「ウーピーパーピーの樹の下に埋める」
    と、何とも不思議な言葉から始まる物語。

    巡り巡って元の場所へ戻っていく。
    ラストは予想がついたものの、途中が重かっただけにホッとしました。
    ファンタジーとまではいかないものの、ちょっと不思議な要素ありの一冊。

    物凄く好み!という訳ではないのだけれど、何故か読んでしまう宇佐美作品。

  • 宇佐美さんの世界に浸る幸せ。貧困、虐待、邪悪満載。バブル時代の闇金を舞台に人間の際限のない欲望や愚かさが突き付けられる。人を欺き、貶めて生き延びる。読み進むとダブル主人公の女性社長、取立人双方の母親への恋慕が見える。人生は儘ならない。時に人は猛烈に弱く、惨く醜い。囚われてしまった人たちの邂逅が物語を温かなものにする。「夫と子供を一度に亡くしたマキ子はそれでも生き続けた。人間的な感覚の一部に蓋をすることを覚えた。没感情になること。愚鈍になることでその後の人生を生き抜いた。何も期待しなければ何も起こらない」

  • 物事は、こんな風にグルグルと回っているのかもしれない。
    ちょうどいいタイミングでそれが自分のところへやってくる。ちゃんと、伝えたい人に伝わってよかったなぁ。
    その間の人生はとても悲しいものだったけれど。

  • 12月-3。3.0点。
    会社の上司を刺してしまった、高校生の母親。
    一方、不治の病を抱えたヤミ金経営者の女性。
    途中からは、ヤミ金従業員の話が中心に。バラバラに見えるストーリーが、終盤に繋がる。

    うーん、あのふしぎな少年の役割や、生い立ちなどを説明しなければ、読者はわからないと思う。かなりの棟と唐突感。

  • 「愚者の毒」と同じ作者だったので。

    この作者への対策として、
    登場人物に感情移入してはいけないことは、
    わかっている。

    それが、冒頭の殺人が気になり過ぎて、
    その後の関係ない(と思われる)話が頭に入ってこない。
    もちろん、関係ない話ではないことは分かっているのだが、
    話に入り込めない。

    殺人犯の息子がどうなってしまうのかが気になったのか、
    恋する女子高生がいきなり死んでしまう理不尽さが突き刺さったのか、
    人ならぬ者の正体が不明なのが納得できないのか。

    ラストは、ある意味においてハッピーエンドなのだとは思うのだが、
    どうも心の落としどころがない。

  • 宇佐美まことさん初読みでしたが
    一見バラバラな登場人物のエピソードが
    終盤見事に一つになりさまは素晴らしく
    読めない展開に驚いた。
    「ウーピーパーピーの木」なる呪文が
    導く結末はファンタジーではあるけれど
    救いのない登場人物たちには
    この着地は悪くない。

    ぜひ、他の作品も読みたい。

  • 初読みの作家さんでした。
    冒頭が衝撃的だったが、後に続く話が
    それとは全く関係なく、「?」と思ったが、
    それでも、引き込まれて行った。

    後半に「!」という気付きがあってからは、
    どんどん繋がる、繋がる。


    後悔の続く話ばかりだったのに、面白かった。

    いつからでもどこからでも人はやり直せるのだ、
    自分でそうしたいという意志と
    実行力があれば、と思いたいな。

    「リョウ」という存在は一体なんだったのだ!!!
    結局はファンタジーなのか!と思わなくはない。

    もうちょっと早く、「リョウ」が伝言を伝えていたら
    どうなっただろうかなぁ。
    それだと、こんなに面白くならなかったか。

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著者プロフィール

愛媛県生まれ。2006年『るんびにの子供』で第1回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞。17年、ミステリー小説『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞する。日常に潜む怪異を描き、恨みや妬み、欲や貧困など、人の心の闇や怖さを浮き彫りにしたミステリーが高く評価されている。

「2017年 『角の生えた帽子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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